189-衆-農林水産委員会-6号 平成27年04月22日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
TPPの問題について質問をさせていただきます。
先ほどからありましたけれども、十九日、二十日に行われた日米の閣僚協議で、アメリカ政府は日本に対して米の別枠輸入二十一万五千トンを要求し、日本政府は五万トンの別枠輸入を認めているというような報道がされています。その点で、どのような日米閣僚協議だったのかを内閣官房の方からお答えいただければと思うんです。
○澁谷政府参考人 先ほど西村副大臣からもお話をされたかと思いますが、十九日の夜から二十一日の未明まで、甘利大臣とアメリカのフロマン通商代表との間で、今お話がありました、米だけではありませんが、米を含む農産品、それから自動車の問題について、これまでの事務レベルでの協議を踏まえて、これは閣僚間で延べ二十時間、しかも、その多くの時間が甘利大臣とフロマン代表との一対一の協議に割かれて、厳しい協議を行ったところでございます。
大臣同士で協議をしている間も、並行して事務レベル協議を断続的に行う、そういう形で行われたところでございます。
二国間の距離は相当狭まったわけでありますけれども、米の問題を含む農産品、さらに自動車については依然として課題が残っておりまして、合意までには努力を要するということでございます。
早速、昨日から事務レベルでの作業を引き続き継続しているところでございまして、閣僚での協議の内容も踏まえまして、事務レベルでの作業を継続しながら、交渉に全力を尽くす、こういうことでございます。
○斉藤(和)委員 安倍首相自身も九合目まで来たというふうに話されていたり、今もありましたとおり、二国間の距離は相当狭まったというふうに言われています。まだ引き続き協議が必要な部分もあるということなんですが、何が狭まったのかというところで、これがもし報道で言われているとおり米の問題だとしたら、私は大問題だというふうに思うんです。
日本の米はこの間ずっと余っていて、それが要因になって米価が暴落しているということは繰り返しこの委員会でも言われてきました。それに加えて、五万トンをさらに別枠で輸入する。今現在ミニマムアクセス米は既に七十七万トン入ってきているわけで、これと合わせれば、八十二万トン、さらに日本に米が輸入されるということになります。
TPPは、当たり前のことですが、日本とアメリカだけではなくて、十二カ国がかかわる問題です。アメリカ以外にも、既にオーストラリアやベトナムなどからも、アメリカとの別枠輸入を合意すれば、それと同規模の輸入枠を求められる可能性は十分あるわけで、それも含めて全参加国から輸入枠を十万トンという限定にとどめてやるかというような報道もされているわけです。
これ以上の輸入というのは、ただでさえ米価暴落の中で生産地は大変な状態になっているわけで、それをさらにひどい状況に追い込む、これは避けられないというふうに思います。
仮に、米価暴落を回避するために、先ほどもありましたが、五万トンを備蓄に回せば、財政負担はさらに百億という割合でふえていきます。今のミニマムアクセス米でも財政負担が二千七百二十三億円という、この負担がさらに膨れ上がることになる。米の生産現場が立ち行かなくなるだけではなくて、国民の負担自体もさらにふえることになると思うんです。
このことについて、林大臣はどう認識をされていらっしゃるでしょうか。
○林国務大臣 TPP交渉に当たりましては、米が国民の主食でありまして、また、最も重要な基幹的な農作物である、こういう認識のもとで慎重に交渉を進めておりまして、また、全体をパッケージで交渉しておるために、何ら確定をしているものはないということでございます。
先ほど内閣官房からも御答弁がありましたように、米の問題も含めて、依然として難しい課題が残っておりまして、今後も厳しい交渉が続くと承知しております。
引き続き、農林水産委員会決議が守られたというふうに評価をいただけるよう、政府一体となって全力を尽くす考えでやっていきたいと思っております。
○斉藤(和)委員 非常に慎重にというお話がありましたけれども、今でさえ米の消費量は、繰り返し大臣もおっしゃっていますが、年間八万トンずつ減っている。こうした状況の中で、ただでさえ余っている米をあえて海外から五万トン輸入する。アメリカからの要求は二十一万五千トンとも言われているわけですから、さらなる輸入拡大が米価の暴落を招くということは、もう手にとるようにわかる。
こういう状況を、大臣は、もう一度になりますが、米の輸入の枠がどうかということだけではなくて、さらなる輸入をふやすことが米の需給にどう影響するというふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○林国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、まさに、今委員が御指摘のように、米は国民の主食でございます。また、米の政策の議論も、この委員会でもたびたび行わせていただいておりますような状況でございます。そのことも含めて、重要な基幹的農作物だ、こういうふうな認識をしておりますので、慎重に交渉を進めていきたい、こういうふうに考えております。
○斉藤(和)委員 輸入することによって米の需給にどう影響するかというのは残念ながらお答えしていただけませんでしたけれども、米以外にも、既に、牛肉の関税を現在の三八・五%から十年間で一〇%に引き下げる、また豚肉の関税では、差額関税制度をなくして、今キロ四百八十二円相当の関税を五十円まで下げるという話まで出ています。これらの関税引き下げで、日本の畜産はさらなる打撃を受けることは目に見えています。それに加えて、最低でも五万トンと言われる米の別枠輸入がある。
これはもう明確に国会決議に反している内容だと思いますが、これでも大臣は国会決議が守られたと評価される内容だというふうに思われていらっしゃるでしょうか。
○林国務大臣 報道は私も承知しておりますが、交渉の具体的な中身については、私からは申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
認識は先ほど米についても申し上げたとおりでございますが、まさに、衆参両院の決議が守られたという評価をいただけるような政府一体となった交渉、これをしていきたいと思っております。
○斉藤(和)委員 例えば十九日には、日本の養豚協会の生産者の方が、都内で、TPPで関税を引き下げるならもう壊滅だと街頭宣伝をされています。
日本養豚協会は、昨年十月にもアメリカのビルザック農務長官とフロマン米国通商代表に書簡を送っています。その中で、差額関税制度の国境措置を撤廃すると、我が国の養豚産業は壊滅に追い込まれると指摘をしています。三月十九日の記者会見でも、関税が大幅に引き下げられれば、国内の生産者が壊滅的な打撃を受けるというふうに懸念も表明されています。
こうした国内の養豚業者の皆さんの声を、大臣はどのように受けとめられますか。
○林国務大臣 私は、党に戻っておりました間も、党の農林水産戦略調査会長ということでございまして、その立場で、たしか今先生からお話のあった養豚協会の皆様の御要請というのもいただいたというふうに記憶をしておるわけでございます。
そういう声もしっかりと踏まえて、米の問題も含めて依然としてと申し上げておりますが、難しい課題が残っておりますので、しっかりと交渉に当たってまいりたいと思っております。
○斉藤(和)委員 養豚農家の方からちょっとお話をお聞きしたんですけれども、今普通の豚肉を生産、要は安価で、通常やる豚肉ではもう本当に立ち行かない、それが、さらに四百円以上の関税が引き下げられれば、もう壊滅することは目に見えている、だから、養豚農家の中では高級品を扱う、そういう農家が頑張っているんだという話をお聞きしました。
本当に、TPPによって関税を撤廃すれば、国内に残る養豚、豚肉はもう高級品だけで、格差と貧困が広がるもとで多くの国民が日本の豚肉を手にできないような状況を生み出す、そういう可能性もあるということをぜひ指摘しておきたいというふうに思っております。
先ほどもありましたけれども、TPAの法案の問題なんですが、そもそも、先ほど大臣おっしゃいましたとおり、条約交渉権、通商権限は、日本は内閣が持っておりますが、アメリカは議会にあります。そのために、アメリカ議会が、政府に対して一定の手続などを義務づけつつ、一定期限までに政府が交渉、署名した通商協定について、議会が協定内容の個々の修正をせず、九十日以内に審議によって締結を一括して承認するか不承認とするかのみを決することを定めたのがいわゆるTPA法案だと思うんです。これが議会に出された。それが成立するのかどうかという見通しも立っていないもとで、日米閣僚協議を進めること自身、私は問題だと思うんですけれども、これは外務省にお聞きします。
このTPA法案は、昨年、二〇一四年にも出されていますが、廃案になっています。この経過と理由、そしてまた、今回出された二〇一五年のTPA法案と二〇一四年の法案の違い、特に情報公開の部分と除外の規定について変わった点について御説明ください。
○宇山政府参考人 御説明いたします。
まず、委員御指摘の二〇一四年に米国議会に提出されたTPA法案、貿易促進権限法案でございますけれども、これは二〇一四年一月に議会に提出をされまして、その後、アメリカ議会上院の財政委員会におきまして公聴会が実施をされております。ただし、その後、二〇一五年、本年の一月三日にアメリカの議会期が終了いたしておりますが、それをもって同法案が廃案となったというふうに承知をしております。
その次に、御質問のございました議会に対する情報公開でございますけれども、二〇一五年法案、このたびの法案におきまして、二〇一四年法案同様、通商協定の交渉の経緯において、米国通商代表は、交渉目標等に関し、要求があれば、全ての議員との面談に応じなければならず、秘密なものも含め、交渉関連文書へのアクセスを提供しなければならない旨の規定があるというふうに承知をしております。
そして、今回の二〇一五年法案におきましては、適当な場合には、議員に加えて、適切なセキュリティークリアランスを得たスタッフについても交渉関連文書へのアクセスが可能になったというふうに承知をしております。
国民に対する情報公開に関しましては、大統領が、通商協定署名六十日前までに、協定テキストを米国通商代表部のウエブサイトで公開する旨の規定が二〇一五年法案で新設されたというふうに承知をしております。
最後に、TPAの手続否認決議に関連する御質問でございますけれども、二〇一五年提出のTPA法案におきましては、二〇一四年提出のTPA法案同様、両院いずれかの議員の提案により、上院または下院の一方が、一定の理由、例えば大統領が議会への通知または協議を怠った、または拒否した、あるいは協定が本法律の目的、政策、優先事項及び目標を達成することに進展を見なかった、こういった理由をもちまして、通商協定の実施法案の審議に迅速な審理手続を適用しない旨の決議、手続否認決議をし、その後六十日以内に他の院がこれに同意した場合には、迅速な審理手続が審議に適用されないということになる旨の規定があるというふうに承知をしております。
これに加えまして、今回の二〇一五年提出のTPA法案におきましては、上院財政委員会または下院歳入委員会のいずれかが、先ほど述べましたような場合に該当するなどとして、迅速な審理手続を審議に適用しない旨の決議、手続否認決議をし、同決議がなされた院の本会議においてそれが採択された場合に、その院における審議に迅速な審理手続が適用されないこととなるという旨の規定があるというふうに承知をしております。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
つまり、二〇一五年のTPA法案には、合意署名の六十日前に条文全文をインターネットで掲載することを義務づけました。適当な人にはその前にもアクセスできるというのは先ほどあったとおりです。
さらに、私はこれは非常に重要だと思うのは、二〇一四年は上院と下院の両方が採択が必要、一定の理由があって適用できないというふうになったらこのTPAから除外されるという話だったんですが、二〇一五年は、どちらか一方がこの拒否の決議を行えばTPAが適用されなくなるという大きな変更が行われています。
要するに、議会からの圧力によって、本来ファストトラックと言われるように、議会は個々の修正ができず、イエスかノーかしか言えないというふうになっているものが、既に今提出されているTPA法案、これが仮に成立したとしても、その内容に対して、一定の理由や先ほどもあった目標の達成がない場合、議会が納得しなければ、上院もしくは下院のどちらかが拒否の決議をすればTPAは適用されなくなり、アメリカ議会がTPPの中身について修正できるということになります。
これでは、幾ら日本がアメリカ政府と仮に米の別枠輸入五万トンでぎりぎりTPPに合意したんだというふうに言ったとしても、アメリカ側は既に二十一万五千トンを要求しているわけで、議会が納得しなければ、議会によって修正される条件が既につくられるというふうにもとれます。
TPPに参加している、日本を含め十一の国々もアメリカの議会のTPA法案の動向を注視しているわけで、やはり、こうした状況が既に組まれているTPAの法案に基づいたTPPというのは、アメリカの思惑によって幾らでも変わる条件が残されている。そうしたものからは私は撤退すべきだということを強く訴えたいというふうに思います。
次に、TPPの情報公開の問題も私は重要だと思うんですが、二〇一四年TPAでも情報公開条項があり、先ほどもありました二〇一五年法案でもあるということです。それだけではなくて、USTRのホームページでも議員に対するテキスト公開が明記をされている、これも先ほどありました。
日本政府が議員に対してテキストを明らかにしないことは、私は極めて問題だと思うんです。甘利大臣は、米国政府の公開内容について、四月八日の参議院予算委員会での我が党の紙智子議員の質問に対して、アメリカの議員への情報提供に係る実際の運用について、引き続き精査していくというふうに答えていらっしゃいます。精査された調査の結果というのはいかがでしょうか。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
我が国といたしましては、アメリカを含む各国と、情報提供やあるいは対外的なコミュニケーションの手法について、よく情報交換をしているところでございます。
今回も、アメリカを含む全ての参加国に対して、議員へのテキストの開示を含む情報開示の状況について、いろいろと照会を行っているところでございますが、米国政府からは、先ほどお話もあったかと思いますが、USTRのホームページに記載されている公式な内容以上のことを対外的に引用しないでほしいという要請を受けているところでございます。他の国も同様でございます。したがって、米国や各国から公式に聞いている以上の内容についてお話しすることは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で申し上げますと、秘密保持契約の趣旨である交渉の具体的内容が外部に漏れないようにという点は、米国を含む各国においてかたく守られているものと理解をしているところでございます。
一方で、米国を含む各国における透明性を高めるためのさまざまな取り組みについても、改めて把握をしたところでございます。こうしたことを踏まえながら、我が国においても、透明性を高めるため、さらに工夫すべく努力していきたいと思っております。
○斉藤(和)委員 透明性を高めるためというお話がありましたけれども、やはりしっかりと、TPPという中身は、農産物だけではなくて、多岐にわたります。それだけ国民生活に大きな影響を与えるものだからこそ、アメリカ議会からも情報開示を繰り返し求める声が上がり、TPA法案にも盛り込まれている、これは当然のことだと思うんです。
日本政府は情報をひた隠しにし、国会決議にも明確に反するような内容が次々報道されているもとで、私はこんなにも国会決議というのは軽いものなのかというふうに非常に疑問に思います。国会決議を軽んじるようなTPP交渉からは私はもう撤退すべきだというふうに繰り返し求めて、最後の質問をしたいと思います。
前回、農業所得倍増の問題で、水産物の一兆円の輸出を農業所得と計算するのは水増しだという私の指摘に対して、大臣の方から、最終的な関連所得には、原材料である水産物にかかわる漁業の生産所得、これは含まれていないという答弁がありました。
水産物原料は除いても、輸出にかかわる漁協などの所得は漁村に含まれているものであり、それを農村所得というふうに含めることは、やはり私は水増しだと思うんです。さらに、農家の人が水産物の加工施設で働く、これは率直に言ってレアなケースだと思います。一般化は決してできるものではないと思います。農村所得に水産物輸出に伴う所得を加えるということは、私は問題だと思うんです。
農産物の輸出を除外して計算し直すべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○林国務大臣 最後のところは、水産物のところを除外してというお尋ねだ、こういうふうに思いますが……(斉藤(和)委員「はい、そうです」と呼ぶ)
繰り返しになるかもしれませんけれども、今まさに御指摘いただいたように、農村地域の関連所得ということで試算をしておりまして、推計された市場規模から水産物等の中間投入額を除くことによって関連所得を算出しているので、原材料である水産物に係る漁業の生産所得額は含まれていないということであります。
まさに、今御指摘のあったところは、今度は、六次産業化事業体の関連所得を算出する際に、水産物の輸出による所得を含めているのは、農業者が近隣にある漁協等の輸出向けの水産物の加工施設で働くというような場合も、今レアとおっしゃいましたけれども、ないわけではないわけでございまして、こういうところも、就業の場の創出ということで、農業者、農村の所得につなげていきたいということで、地域全体で雇用や所得を伸ばしていきまして農山漁村を活性化していく、こういうことでございますので、その限りにおいて、水産物も含めて試算を行うことは、我々は妥当なものだ、こういうふうに考えておるところでございます。
○斉藤(和)委員 農山漁村の所得倍増ということで、関連所得をふやすということも大事だとは思います。しかし、日本の国土を守り、食料を守るという観点から考えたら、やはり、農家の皆さんの所得をいかに上げて、農業生産をしっかり継続的にやっていける、後継者も育っていく、そういう状況をつくっていくことだというふうに思っています。
その点からいって、TPPは本当に私は撤退すべきだというふうに最後に求めて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。