JAS規格の信頼失いかねない JAS法改正(6月15日 農水委 議事録)
投稿日:2017年06月15日

193-衆-農林水産委員会-21号 平成29年06月15日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 冒頭、きのうから本日にかけて、自由民主党、公明党、与党は、参議院法務委員会での質疑を拒否し、いきなり本会議で中間報告を押しつけました。憲法違反の共謀罪を強行採決したことに、言葉に尽くせない満身の怒りを込めて強く抗議します。
 こんなひどいやり方は、かつてありません。審議を尽くすという議会制民主主義を踏みにじる自殺行為です。国民から選ばれた国民の代表者である国会議員が民主主義を踏みにじるようなことがあっていいのか、こうした流れと徹底的に闘うことを申し上げ、質問をいたします。
 JAS法改正案について質問をします。
 今回の改正で、機能性表示食品と同様の考え方をJAS規格に持ち込むのではないかと懸念しています。今回の改正で新たに導入される規格は、産品の生産方法、事業者の管理方式、測定・分析方法の三つです。これは、商品の差別化を図り、差別化した商品の広告などによる販売の促進を目的とするものです。
 こうした中でも、測定・分析方法は、商品の特定成分を測定したものを規格化するもので、機能性表示食品でも同様な考え方なわけです。今回のJAS法の改正と機能性表示食品との整理をどのように行うのでしょうか。
 また、測定・分析方法に関する規格では具体的にどのようなものを考えているのか明らかにしてください。

○山本(有)国務大臣 まず、機能性表示食品とJASの測定方法の規格との関係でございます。
 機能性表示食品制度というものは、消費者庁へ届け出を行うことによりまして、おなかの調子を整えるなど、食品に含まれる特定成分が有する健康の維持増進に役立つ機能について当該食品に表示するということを認める食品表示法上の制度でございます。
 他方、今回のJAS法改正で措置いたしました測定方法のJAS規格、これによりますと、共通の物差しにより産品や技術が比較可能とするものでございまして、消費者がみずから判断し、合理的な選択を行うための情報の提供、充実につながるものでございます。
 このため、機能性表示食品に含まれる特定成分について、JAS規格に定める測定方法を活用しますと、特定の事業者による独自の測定結果ではなく、共通かつ客観的な測定結果を示すことができるもの、こうなるわけでございます。
 ただし、JAS規格は、機能性表示食品の効能とかあるいは品質の高さまで保証するものではありません。誇大な広告や表示等が行われる場合は、今般整備いたしました不適正な表示に対する規制の措置によりまして是正を求めることとなるわけでございます。
 次に、今回の測定方法のJAS規格は具体的にどのようなものを想定しているのかという御質問でございます。
 今回の法改正では、我が国の多様な産品や技術の強みを海外市場において効果的に訴求するため、新たに農林物資に関する試験、分析、測定など、試験等の方法についてのJAS規格の類型を創設しているところでございます。これによりまして、共通の物差しで産品や技術の優劣が比較可能となるものと考えております。
 今後、我が国の強みのアピールにつながるJAS規格を戦略的に制定、活用できますように、関係者の意見やニーズを踏まえ、具体的に検討していくこととしております。
 以上でございます。

○斉藤(和)委員 その規格の中身は具体的に今後検討するということです。
 そもそも、先ほど大臣からありましたとおり、機能性表示食品というのは、おなかの調子を整えますとか、脂肪の吸収を穏やかにします。議員会館にセブンイレブンがございますけれども、そこにもこの表示が書かれた商品が置かれています。特定の保健の目的が期待できるという食品の機能性を表示することができる食品です。
 これは平成二十七年四月から始まりました。事業者、つまり企業が責任を持って機能性を証明する文献を添付して届け出たら機能性を表示できる、機能性表示食品という形で認めたわけです。国が個別の許可を出しているわけではありません。安全性や機能性の審査を行っているわけでもありません。その結果、今、この機能性表示食品は多くの問題点が指摘されています。
 今回のJAS法に、測定・分析方法に関する規格を導入するわけですが、そもそも、それを機能性表示食品に用いることができるというようなお話も先ほどありましたけれども、農林水産物は気候の変動などで成分が変わり得るわけです。その規格の安定性が保証されるとは限りません。それをどのように成分の安定性を保証するとお考えなのでしょうか。

○山本(有)国務大臣 測定の結果の安定性の担保でございますが、試験方法のJAS規格は、産品、技術の強みを効果的に訴求するために、その裏づけとなるデータをとる方法を規格化するものでございます。また、国際基準を満たした試験業者がJAS規格に基づいて試験を行ったときに、JASマークを付した試験証明書を交付することができる制度をあわせ創設しているところでございます。
 試験業者が交付する試験証明書は、まず測定結果でございますし、次に試験サンプルの対象、数、試験実施日等が記載されておりまして、例えば、サンプリングの方法や、試験実施日から経過した期間といった要素により、試験証明書の説得力にはおのずと差が生じるものでございます。
 この場合でありましても、試験証明書の特性に関する理解を共有する者の間では特段の問題はなく、取引の円滑化等に貢献できるものと考えております。また、測定結果を取引相手に示すことによりまして、生産者の技術力を証明する材料にもなり得るわけでございます。
 このため、試験方法のJAS規格の特性におきまして理解を深めていただくことが重要と考えております。今後、説明会の開催を初めさまざまな機会、手段によりまして、事業者、消費者双方へ普及啓発に取り組んでまいりたいと思っております。
 なお、事業者が一回の測定結果をもってあたかもその産品の全てが同一の成分であると誤解させるような行為のやりとり、そういったことはJAS制度の信頼を損ねるわけでございまして、この場合には事業者に対して是正を求めることとしております。

○斉藤(和)委員 まさに、JASの信頼を損ないかねないような事態が起こりかねないというふうに私は思うわけです。
 大臣は、試験証明書の特性を共有する者の間では問題が起こらないというふうに言いました。そして、そのために情報提供もするし、そういう周知もしていくんだというお話でしたけれども、この試験証明書の意味するところを共有できない人は誤解が起こる、そういうことが起きかねない。それはひいては、JASの信頼を失うことにつながるということを指摘したいと思います。
 仮に、一度規格を取ったとしても、その後の偽りの商品が流通する危険性というのがある。ないとは言い切れないわけです。
 例えば、一度、臭みの少ない養殖魚として規格を取った後、普通の養殖魚を販売するということも考えられるわけですけれども、こうしたことをどのように防ごうとお考えなのでしょうか。

○山本(有)国務大臣 信頼性をどう担保するかという問題でございます。
 新たなJAS制度のもとで、我が国の強みのアピールにつながる多様な規格を定めて戦略的に活用していくためには、御指摘のように信頼性というのが何より必要でございます。
 このため、今回、違反事案に対する罰則を引き上げております。そして、抑止効果を高めることがそれによってできると考えております。
 さらに、認証事業者に対する監督につきまして、無通告調査の実施など登録認証機関による監督の強化を図ることを考えております。
 また、登録認証機関に対する国または農林水産消費安全技術センターによる監督につきましては、その業務の実績に応じて調査頻度を弾力化しつつ、無通告調査の実施や命令、公表の措置等を厳正に運用していきたいと思っております。
 登録認証機関等の実質的な審査や立入検査等を行うFAMIC職員の能力が大事でございまして、その向上を図りながら、十分な体制を整備していきたいと考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 信頼性の確保というところで、今大臣から登録試験業者という話がありました。この今回のJAS法で登録試験業者というのが創設されます。これは、農林物資に関する試験の方法についての規格が追加されることに伴い、試験業者の登録制度を創設し、登録を受けた試験業者は、JAS規格による試験を行い、JASマークを付した証明書を交付することができるとしています。
 登録制ということは、民間も登録試験業者になるわけです。民間が民間の認証をすることになるわけですけれども、これで規格の認証の信頼性はどう担保するのかという点で、今、違反を強化したなど、立入検査もするというお話がありましたけれども、それが本当に実際にできる、そうした担保を国は責任を持ってやるという構えがあるんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、これまで、罰則について申し上げれば、JASマークの不正使用で、一年、百万円の罰則でございますし、両罰規定も百万円でございました。これが、百万円は変わりないわけでございますけれども、法人両罰で一億円というようになっておりまして、罰則の額が格段に上昇したわけでございます。抑止効果はあり得ると思っておりますし、また、登録認証機関による監督強化、無通告調査でございますので、安易な、そうしたいいかげんなことをやっていて消費者の信頼を損なうような詐欺的行為につきましては、しっかりと立入検査等でこれを排除していくということが大事であろうと思っております。
 そして、この立入調査を行うFAMIC職員の能力を向上するというのは、先ほど申し上げましたとおりでございまして、そうした意味におきまして、しっかりと体制整備を図っていきたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 罰則を高めることで抑止効果はあり得る。あり得るではだめで、やはり、しっかりと違反があるようなものを出さない、それが、JASの信頼を損なうようなことにならない、その効果を担保しなければならないというふうに思います。
 職員の能力向上というお話だったんですけれども、やはり、能力向上だけではなくて、抜本的にふやすという方向も私は本当に、こういう違反行為をなくしていく、立入検査をふやしていく、そういう点でも必要になってくるのではないかということを指摘したいと思います。
 今回の改正は、JAS規格が、これまで農林物資の品質について証明する表示から、農林水産省の資料にもあるとおり、例えば、伝統的な製法の抹茶をアピールできる、イチゴの新鮮を、鮮度をアピールできる、魚の臭み成分の統一的な測定・分析方法を規格し、養殖技術をアピールできるというように、つまり、JAS規格が商品を売り込むための広告に、単なる表示から、品質を保証していた表示から広告に変化するというふうに言えるわけです。
 例えば、それはテレビのCMに用いることが可能になると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 今回の改正で、事業者による農林物資の取り扱い方法のJAS規格を創設するわけでございますので、そのJASマークは事業者の能力を説明している広告等に付することを可能としております。
 また、この広告等は、チラシ、ポスターといった典型的な広告のみならず、御指摘の事業者のテレビCM、ホームページ、あるいは名刺、パンフレット、契約書といった取引に用いる書類、あるいは事業者の事務所、工場、外壁、看板、そういったところへも飾っていただいたり、広告に付していただけたりするわけでございます。
 そうしたことの行為の中で、取り扱い等の方法に関する規定への適合の表示において、ISO、国際標準化機構のルールにおいても、第三者適合マークを文書、広報資料などに引用していることとほぼ同様でございます。
 こうした扱いをしながら、JASマークのデザインについて消費者が一見して内容を認識することができるように見直すこと、広告等への不正な表示に対する規制を導入するとともに、罰則の整備、強化によりまして健全な広告以外については抑止力を高めること、そして消費者の混乱を招かないように新たな制度を運用していくというようなことが必要だと考えておるところでございます。

○斉藤(和)委員 新たな混乱を招かないようにというのは本当にそのとおりだと思います。テレビのCMというのは影響力が絶大です。それだけに、もし虚偽の広告が打たれるようなことがあれば、品質と違う広告が打たれるようなことがあれば、被害が本当に拡大するわけです。
 結局、今回の改正というのはJAS規格そのものの性質を大きく変えるものです。成分の保証もされない商品がJAS規格として大々的にテレビCMで宣伝されるようなことがあっては絶対にならないわけです。もちろん初めからそのようなことがあっては大変なわけですけれども、時間がたつにつれて、本来は安定性や品質の担保がされていない商品が流通し、宣伝されるということは回避できるのかどうか、非常に私は心配です。
 心配だけではなくて、本来表示というのは、ケネディの消費者の権利、安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利に由来するもので、消費者の根本的な権利にかかわるわけです。それが、広告という企業の宣伝媒体という、JAS規格が消費者の権利に基づく表示、要は、この商品は品質が担保されているのかどうか、一体どんなものが使われているのかどうか、その選ぶ権利に役割を果たしていた表示、この役割を企業の宣伝媒体という広告にすることで権利を奪うようなことがあっては絶対にならないというふうに思うわけですけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 今回のJAS法改正は、品質以外にも、生産方法あるいは管理方法、試験方法のJAS規格を定めることでございます。
 これによりまして、消費者にとっても、こだわりの製法の規格化によりまして、こだわりの内容が明らか、鮮明になってまいります。また、取り扱い方法の規格化によりまして、商品について、例えば鮮度が維持されている根拠が明らかになってくるわけでございます。食品に含まれる成分等の測定方法を規格化、統一することによって、事業者が単に一回測定したものではなくて、測定方法がしっかりしているということの安心感を醸し出すことができるわけでございます。そして、よりよい物、サービスを選択するための情報がさらに充実していくメリットがございます。
 また、JAS規格の類型が拡大しまして、消費者の混乱を招かないように、そのために、説明会の開催を初め、さまざまな機会、手段により、消費者、事業者双方への新たなJAS制度の普及に取り組むように努めたいと思っておりますし、JASマークのデザインにつきまして消費者も一見して内容を認識できるように見直しを行おうとしております。さらに、マークの不正使用に対する罰則の整備強化によりまして抑止力を高めることとしております。
 等々、消費者の混乱を招かないように、新たなJAS制度の運用に努めたいというように考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 食品の表示の偽装というのは常に問題になるわけです。JASのこだわりだとか取り扱いだとか成分の分析だとか、それが本当にその表示のとおりやられているのかどうか、それが安心感につながるのか、それが不信になるのか、それはやはり検査体制、ここをしっかりさせる、ここにかかっていると思います。やはりそのためにも、人の体制も含めて、混乱の起きない最大限の努力を国には求めたいというふうに思います。
 最後に、既存添加物、食品にかかわって既存添加物の問題について聞きます。
 前回、三月八日の当委員会で、第九版食品添加物公定書に収載される予定のない既存添加物、昔、天然添加物と言われたものですが、これについて質問をしました。
 収載されない既存添加物の品目数が百五十二品目と答弁があり、委員会終了後に私どもはその一覧表を資料要求したんですが、品目数はたまたま合っていたんですけれども、収載されない品目名はかなり不正確なものでした。その点、その経緯について明らかにしてください。

○北島政府参考人 お答えいたします。
 最初に提出させていただきました資料については、関係資料を整理し、提出用に編集する過程でミスが生じまして、結果として、本来掲載すべき添加物名が掲載されていなかったなどの不正確な資料となったものでございます。
 改めて深くおわびを申し上げますとともに、今後このようなことのないよう努めてまいります。

○斉藤(和)委員 収載されないという既存添加物はもう整理した方がはっきり言っていいと思うんですね。この第九版の食品添加物公定書に収載されない百五十二品目の既存添加物については、既存添加物として残さずに消除する、そういう立場できちんと整理をする必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○馬場大臣政務官 お答えします。
 厚生労働省で作成中の第九版食品添加物公定書におきまして規格基準が定められる予定のない既存添加物百五十二品目については、順次、専門家の意見も聞きながら、規格基準の設定に向けた検討作業を行ってまいりますが、今お話がありましたように、使用実態がないと認められる既存添加物については、食品衛生法に基づき既存添加物名簿から消除することができるとされておりまして、流通実態がなく規格基準の設定に必要な資料の得られない添加物については、既存添加物名簿から消除する方向で検討してまいりたいと存じます。

○斉藤(和)委員 使用実態のないものは消除するという方向で検討というお話がありました。
 既に消費者団体からもたびたび指摘がされているわけですけれども、この既存添加物というのは、二十年前の食品衛生法改正時の附則の第三条で定められています。経過措置というふうになっているわけですね。この経過措置が二十年間も続いている。使用実態のないものは消除するといって、あるものは規格基準にして公定書に収載するということがやられていながら、二十年間やっても百五十二品目そのままになっている。
 これは、もう二十年たったんだから、経過措置はきっぱり終わりにして整理する、この立場でやる必要があると思うんです。添加物というのは私たちの口に入るものです。食の安全にかかわる問題です。それが経過措置のまま、ある意味、放置されているとまでは言いませんけれども、そういう実態がある。これを、やはり二十年たった今、きっぱりと整理する、その立場でいかがでしょうか。

○馬場大臣政務官 お答えします。
 今お話しの件でありますが、既存添加物は、平成七年の改正食品衛生法附則第二条に規定されているものであります。これは、改正当時既に添加物として使用されていたものの取り扱いを定めたものでありますが、特に時限を区切った暫定的な制度とされているものではありません。
 ただ、厚生労働省としては、第九版の食品添加物公定書において規格基準が定められる予定のない百五十二品目についても、先ほどもお話ししましたが、引き続き、規格基準の設定に向けた検討を進めるとともに、流通実態がなく規格基準の設定に必要な資料の得られないものについては既存添加物名簿から消除する方向で検討してまいりたいと存じます。

○斉藤(和)委員 ぜひ、経過措置が二十年というのは長過ぎるということを改めて強調したいと思います。
 JAS法の改正にしても、この既存添加物についても、やはり国民の皆さんの命にかかわる問題です。そしてまた、権利にかかわる問題です。やはり、国民の権利や自由を奪うような、そして脅かすような、そういう政治であってはならないということを強く強調して、質問を終わります。
 ありがとうございました。