TPP交渉からの撤退を 2015年5月19日 農林水産委員会
投稿日:2015年05月19日

189-衆-農林水産委員会-10号 平成27年05月19日

○斉藤(和)委員 質問させていただきます。
 前回の表示問題で一問ちょっとできなかったので、そこからさせていただきます。
 消費者委員会の表示部会についてですが、ここで加工食品の原料原産地表示が議論されることになっているようです。しかし、一向に開催される動きがないということで関係者から不満の声が出ていると聞いているんですが、なぜこの表示部会は開催されないのか、そして、いつごろをめどに開催し、検討を進めるつもりなのか、消費者委員会からお答えいただければと思うんですが。

○黒木政府参考人 お答え申し上げます。
 加工食品の原料原産地表示でございますけれども、消費者委員会におきましても重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、少し前になりますが、平成二十五年十一月の消費者委員会の本会議において、ただ、この当時、喫緊の検討課題でございました新たな食品表示法施行に向けた食品表示基準に関する検討の後に、準備が整い次第、検討すべき幾つかの課題の一つとして報告をされていたところでございます。
 加工食品の原料原産地表示の検討につきましては、現在、消費者庁において御準備を進められているということで伺っておりますので、消費者委員会としては、その状況を注視しているところでございます。

○斉藤(和)委員 消費者庁の動向を見ているということですが、消費者庁はいかがでしょうか。

○岡田政府参考人 お答えいたします。
 消費者庁におきましては、食品表示法案の検討に先立ちまして、食品表示一元化検討会を設置し、食品表示に係るさまざまな論点について検討を行ったところでございます。
 その検討において結論を得ることができなかった事項につきましては、食品表示の一元化とは別に検討することが適当とされ、本年三月に閣議決定されました消費者基本計画におきまして、インターネット販売における食品表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示、遺伝子組み換え表示のあり方につきまして、順次実態を踏まえた検討を行うということとされたところでございます。
 食品表示法が本年四月から施行されたことを踏まえまして、まずは、新たな食品表示制度の普及啓発に努めることが最も重要であると考えておりまして、現時点におきましては、各課題についての具体的な検討スケジュールは決まっていないところでございます。

○斉藤(和)委員 食品表示法が、先ほどもありましたけれども、四月から既に始まっているわけで、そうした点で、今検討を行うとされている遺伝子組み換えにしても、この加工食品の原料原産地表示にしても、消費者の皆さんにとっては非常に大きな関心事でもあります。
 こうしたことを放置するのではなくて、やはり早急に対応して、検討していく必要があるということを強調して、ぜひやっていただきたいことをお願いします。
 次の質問に移ります。
 TPP問題について質問をいたします。
 既にこの委員会でもたびたび議論がされていますが、アメリカの議会でTPA法案が成立しなければ、TPPの最終合意案が仮に合意されたとしても、条約交渉権を持っているのはアメリカ議会ですので、アメリカの国益に沿って修正ができる。
 そのため、TPPの参加国というのは、みずからの国の最終カードをこのTPAの法案の成立の動向によって切るか切らないかを待っている。すなわち、交渉に応じるかどうかというのは、このTPA法案をめぐる動向と非常に緊密に関係している。
 当然、日本も同じ認識でよろしいでしょうか。

○西村(康)副大臣 お答えを申し上げます。
 交渉参加している各国は、TPPの妥結にはTPA法案の成立が不可欠というふうに認識をいたしておりますし、私どももそうした認識を共有しておりますので、私も、今回訪米した際にも、TPP交渉の妥結にはTPP法案の成立が不可欠だということを関係する議員などに申し上げたところでございます。

○斉藤(和)委員 TPA法案の成立が不可欠だということでいいと思います。
 問題は、そのTPAの審議状況がどうなっているのかということだと思います。
 アメリカ議会上院でTPA法案の審議が開始をされ、今週中に可決を目指すというふうにも報道がされていますけれども、審議が難航しているということも伝えられています。
 TPA法案は、上院だけでなく下院でも可決されなければ成立しないわけで、下院の審議状況はどうなっていますでしょうか。

○齋木政府参考人 お答え申し上げます。
 米国時間五月十四日、TPA法案の米国上院本会議における早期審議入りに必要な動議が可決され、米国時間十四日及び十八日に上院本会議において審議が行われたと承知しております。明十九日も、引き続き上院本会議での審議が予定されていると承知をしています。
 政府として、他国の議会における法案審議の見通しを予断する立場にはございませんけれども、上院は五月二十三日から三十一日まで、下院は五月二十二日から三十一日まで休会予定であると承知をしております。現時点で下院本会議の審議スケジュールは未定であると承知しております。

○斉藤(和)委員 今ありましたとおり、五月二十三日から一週間ほど休会されるということです。メモリアルデー、戦没将兵追悼記念日があるからだということだと思いますけれども、そうなりますと、下院の審議入りは六月に入ってからになるわけです。
 現在、グアムで二十五日までの日程で首席交渉官会合が開かれていますけれども、鶴岡首席交渉官は、TPAの法案が成立しなければ交渉をまとめる必須条件が整わない、その中での交渉進展は難しいというふうに、新聞報道もされていますが、述べています。
 この交渉官会合の後に閣僚会合を開くという見通しになっていますけれども、この閣僚会合の開催の見通しというのはどうでしょうか。

○西村(康)副大臣 先ほど私は言い間違えたようでありますが、TPA法案でございます。
 今御質問がありました件でございますけれども、御指摘のとおり、アメリカ・グアムにてTPP首席交渉官会合が開催されているところでございまして、早期に閣僚会合を開催できるよう、そういう状況をつくるべく、残された課題について各国が鋭意交渉に努力をしているところだというふうに認識いたしております。
 次回の閣僚会合の開催につきましては、その首席交渉官会合の進捗状況、それから、先ほど来御指摘のありますアメリカのTPA法案の審議状況によるところが大きいわけでございまして、現時点で、日程とか場所とか、何ら決まったものはございません。

○斉藤(和)委員 早期に閣僚会合を開くようにということなんですけれども、具体的には決まっていない。
 要するに、日米の両政府が描いていたシナリオどおりにはなかなか進んでいないということだと思います。今週中にTPA法案を成立させて、首席交渉官会合で争点を減らして、五月下旬にも十二カ国の閣僚会合を開いて日米協議、全体会合を合意させるというシナリオが頓挫しているというふうに朝日新聞にも書かれているわけですけれども、このこと自体が日米両政府にとって深刻になっているというふうに思うんです。
 米国議会は、来年の二月から大統領選挙の予備選が始まるわけで、ことしの秋以降は議会が機能しなくなるというタイムリミットがあります。しかも、下院では、七月の末から夏季の長期休会に入ると聞いています。
 そうなると、スケジュール的に大変厳しい状況になると思いますが、外務省の方からこのスケジュール感をお答えいただければということと、もう一つ、こうした状況を政府としてどのように認識をされているのか、お答えいただければと思います。

○齋木政府参考人 お答えいたします。
 TPA法案につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、アメリカ上院本会議において、米国時間の十四日、十八日、審議が行われたところでございます。
 政府として、他国の議会における法案審議の見通しを予断する立場にありませんが、現時点で下院本会議の審議スケジュールは未定だとお答えを申し上げたとおりでございます。
 そして、休会のことの御指摘がございましたけれども、上院は五月二十三日から三十一日まで、下院は五月二十二日から三十一日まで休会、その後、六月二十七日から、上院は七月五日まで、下院は七月六日まで再び休会となります。下院は、御指摘のとおり、七月三十一日から九月七日まで、上院は八月八日から九月七日まで夏季休会を予定しているところでございます。
 いずれにしましても、交渉参加各国はTPPの妥結にはTPA法案の成立が不可欠と認識をしており、我が国としてもTPAの早期成立を期待しているところでございます。
 引き続き、TPA法案の動向を注視しながら、早期妥結に向け全力を尽くしてまいる考えでございます。

○西村(康)副大臣 今外務省から答弁があったとおりでございますが、繰り返しになりますけれども、TPP交渉の妥結にはTPA法案の成立が不可欠という認識を各国とも共有いたしております。
 その動向をしっかり注視していくわけでありますけれども、一方で、首席交渉官会合も今開かれております。できる限り事務的に詰められるところは詰めていくということでありますし、日米の残された課題についてもできるだけ早くまた協議を行って、残された課題についてできるだけその距離を埋めていく、そして、引き続き早期妥結に向けて全力を挙げて粘り強く交渉していきたいというふうに思います。

○斉藤(和)委員 TPP早期妥結は、私としてはやるべきではないというふうに思うんですけれども、その上で、早期妥結にしても何にしても、TPA法案というものが、やはりそうはいっても、一番の肝になるわけです。
 そのときに、アメリカ議会でなぜここまでTPA法案の取り扱いが難航しているのかということだと思うんです。それは、アメリカ国内でもTPP反対の世論が一方では広がっているということです。
 民主党の支持基盤の労働組合は、TPPで雇用が守れないと反対運動を展開しています。同時に、TPPが施行された後にその影響で職を失った労働者に失業手当や再就職支援を行う貿易調整支援法案、TAA法案と、貿易相手国が故意に自国の通貨を下げることを禁じる為替条項をTPPに加えることを要求し、その取り扱いをめぐって上院での審議入りがもめたわけです。
 それだけではありません。TPPやTPAに反対する世論は、アメリカの地方自治体からも広がって、起こっています。
 お手元にお配りした資料をごらんいただきたいと思うんですけれども、多くの自治体で、TPP除外地域宣言とかTPA反対、TPP反対が表明されていることがわかります。こういった世論が広がる中で、来年選挙が予定されている下院では、上院よりもさらに厳しい対応になるだろうということが予想をされるわけです。
 もともとTPA法案は、過去に米国大統領が取得を求めても、例えば、クリントン大統領のときも、八年間の在任中、六年間取得ができなかった。ブッシュ大統領も、TPAの取得に二年間費やし、期限が切れた後、期限延長を二回も否決されているというわけです。
 そういう困難がある中で、TPP反対の世論も広がっているアメリカ国内で、TPA法案を通過させる見通し自体が極めて厳しいというふうに見られるわけですが、そういう認識を日本政府は共有されているんでしょうか。

○齋木政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、米国においてTPAまたはTPPに反対をする地方議会の決議が複数なされていることは承知しております。
 政府といたしましては、他国の議会における法案審議の見通しを予断する立場にございません。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、TPP交渉参加各国はTPPの妥結にはTPA法案の成立が不可欠と認識しており、我が国としてもTPAの早期成立を期待しているところでございます。
 政府としては、引き続き、同法案そして同法案をめぐる動向をしっかりと注視してまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 それぞれ、アメリカ議会、地方自治体でこういう反対が起こっているということは認識しているということで、早期妥結のためにTPA成立をというふうにおっしゃいましたけれども、このTPAを通すこと自体が非常に困難になれば、やはりTPPの交渉自体も難航することは目に見えているわけです。
 しかも、安倍首相はTPPの出口は見えたとしていますが、TPA法案一つにしても既にさまざまな修正がなされている。
 例えば、上院の財政委員会では百二十六本もの修正案が出されたと言われています。項目だけでもこれだけの修正が出された。そのうち三本が今回の法案に盛り込まれ、例えば、人身売買や強制労働で改善が見られない国との貿易交渉にはTPAを与えないというものが盛り込まれています。この修正を加えた上院の議員は、マレーシアをTPPから除外することが目的だというふうに語っています。さらに、今、上院の本会議で二十三本の修正案が提出されていると言われている。
 このように、修正がTPP交渉を一層複雑なものにすることは目に見えていますし、そもそもTPA法案の上院と下院との協議が、修正をされれば不可避になる、その協議自体も難航するということも予想をされています。
 出口が見えるどころか、TPPの漂流の可能性が現実味を帯びてきているというふうにも見られるんですが、いかがでしょうか。

○西村(康)副大臣 TPA法案につきましては、アメリカ議会で今審議中の内容でもありますし、また、アメリカ国内での法案の審議の話でありますので、私からその内容についてコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、いずれにしても、我が国としては、TPA法案の動向も注視をしながら、国益を最大限実現すべく、TPP交渉の妥結に向けて粘り強く交渉してまいりたいというふうに考えております。

○斉藤(和)委員 妥結する上で絶対に欠かせないこのTPAが、アメリカ国内でもう本当に成立するかどうかさえ見えないような状況になっているということは、いかがでしょうか。

○西村(康)副大臣 繰り返しになりますけれども、アメリカ国内での審議が今行われているところでありますので、私がコメントすることは差し控えたいと思いますが、しかし、アメリカ政府あるいはTPPを推進しようとしている議員の皆さん方も何とかこれを通そうということで努力をしておられる姿は、私は訪米中に意見交換の中で感じました。
 いずれにしましても、私どもとしては、早期成立を期待し、そして、TPP交渉妥結に向けて全力で努力してまいりたいというふうに考えております。

○斉藤(和)委員 もっと深刻に私は受けとめるべきではないかというふうに思っています。
 TPPの情報公開について、政府の対応がこの間も全く後ろ向きだというふうに言われているんですけれども、二〇一五年のTPA法案は、正式名称が二〇一五年超党派議会貿易優先事項及び説明責任法というふうに、TPPの情報公開、すなわち説明責任が法案の表題にされています。
 さらに、大統領は、通商協定署名六十日前までに協定テキストをUSTRのウエブサイトに公開すること、実施法案などを議会に提出する三十日前までに最終協定テキストの写しなどを議会に提出するとしています。
 国会議員に対するテキストの閲覧ということとあわせて、米国と同様にこうした取り扱いを日本でも行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○西村(康)副大臣 TPA法案につきましては、まだ審議中でありますので、どういう形で成立するか、これはしっかりと注視をしてまいりたいと思います。
 一般論として申し上げれば、交渉に大筋で合意した後に、署名までの間、どの時点でどのような内容のものを公表するかについては、十二カ国全体で相談しながら対応していくことになるというふうに思います。その際、協定案文の精査の状況なんかも勘案しながら判断されることになると思いますが、いずれにしましても、私ども、できる限りの情報開示は引き続き検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 TPAはまだ通っていませんけれども、仮に通ったとしたら、ウエブサイトに公開するということは、国会議員だけではなくて全ての人が見られるわけです。
 だとしたら、私は、このアメリカのTPA法案に倣って、日本国内でもしっかりと協定テキストが見られるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○西村(康)副大臣 アメリカも含めまして十二カ国で合意がなされた場合に、その後、どういう形で開示をしていくのか、アメリカの法案もどういう形で成立するのか、これも含めてでありますけれども、相談しながら対応していくことになると思いますけれども、いずれにしても、私どももできる限りの情報開示に努めてまいりたいというふうに考えております。

○斉藤(和)委員 アメリカがやると言ったら、日本もやりますか。

○西村(康)副大臣 繰り返しになりますけれども、十二カ国でしっかりと相談をしながら対応していきたいというふうに考えております。

○斉藤(和)委員 ぜひ、しっかりと対応していただいて、公開していただきたいというふうに思います。
 最後に、今ありましたけれども、国会議員に対するTPPのテキストのアクセスというのは、アメリカでは認められているけれども、日本では認められていない。そして、重要五品目の大幅な関税削減や十七万トンにも及ぶ米の別枠輸入までが検討されている、国会決議に真っ向から反するような交渉が進んでいるということも報道されていて、これは絶対に認められるものではないと思います。
 そして、交渉自身も、TPA法案をめぐる動向などを含め、漂流目前というふうになっているもとで、やはりTPP交渉から撤退する、私はこのことこそが国益を守ることになるというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○林国務大臣 どのような場合に交渉から撤退すべきかにつきまして政府として申し上げることは、逆に言えば、どこまで譲歩できるかということを示すことにもなりますので、交渉戦略上、不適切であると考えておりますし、そのことは繰り返し申し上げてきたところでございます。
 衆参両院の農林水産委員会決議は国会の意思表示でございます。まさに批准をいただく立法府の意思表示でございますから、これを守ったと評価していただくように、しっかりと交渉していきたいと思っております。

○斉藤(和)委員 TPPをめぐる問題で、TPAも不透明な状況の中で、国会決議に反するようなことが次々と出されている、こうしたTPPからは即時撤退することを最後に求めて、質問を終わります。ありがとうございました。