190-衆-環太平洋パートナーシップ協定に関する特別委員会-8号 平成28年04月20日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。よろしくお願いいたします。
昨日も熊本で繰り返し余震が続いております。熊本県を中心とした九州地方の地震によって犠牲になられた方々に心から御冥福を申し上げると同時に、被災された皆様に私からもお見舞いを申し上げたいと思います。日本共産党としても、引き続き救援、救済に全力を挙げることを申し上げて、質問に入りたいと思います。
私は、TPPと食の安全の問題について質問をいたします。
国民の皆さんにとってTPPと食の安全の問題は最大の関心事項だと思います。TPPで、自分たちの食べているものは大丈夫なのか、守られるのか、安心なのか、大きな問題になっています。
昨年十一月の総合的なTPP関連政策大綱で、TPP協定により、我が国への海外からの輸入食品の増加が見込まれることから、食の安全、安心を守るため輸入食品の適切な監視指導を徹底するための体制強化に努めるとしています。
そこで、お聞きいたします。
TPPによって輸入食品の増加が見込まれるとありますが、輸入食品の増加がどれだけふえるというふうに見通されているのか、石原大臣にお聞きいたします。
○石原国務大臣 ただいま委員が御言及されました、私どもが昨年末に行いました経済効果分析によりますと、TPPによる関税削減といった貿易コストの低下に加えまして、経済全体に占める貿易の割合の増加によりまして、この中に当然食料品も入っております、販路や市場が拡大し、生産性が向上しという前提をモデルに組み込んだ分析を行わせていただきました。
その結果、どの程度のことであるかという御質問でございますけれども、日本経済全体のマクロ試算ではございますけれども、GDPの〇・六一%、すなわち、二〇一四年度のGDPで換算すると三・二兆円程度の輸入が増加する、この中に食料品等々が含まれていると御理解をいただきたいと思います。
○斉藤(和)委員 全体の輸入がふえる、その中に食料品も含まれているということで、輸入はふえるということはわかることです。
言うまでもなく、日本の食料自給率というのは三九%です。先進国の中でも最低と言われる食料自給率になっているわけで、その結果、世界最大の食料輸入大国に日本は現在なっている。全世界から三千二百万トン、国民一人当たり年間二百五十二キログラムの食品を輸入しています。一人当たりの年間の米の消費量が約六十キロですから、そこから見ても大量の輸入食品が入ってきていることはわかるわけです。
さらに言えば、TPP加盟十一カ国からの輸入量は、現在の時点で、重量ベースで見れば、全世界からの輸入量の実に六一・八八%です。資料でもお配りさせていただいています。六割を超えるものがTPPに加盟する十一カ国から現在も入ってきているということです。
つまり、輸入件数は増加傾向にあり、TPPでさらにふえる。TPPは九五・〇八%の関税が撤廃されるわけですから、増加というよりは、食品の面でも急増するということが懸念されるわけです。
そのTPP十一カ国からの輸入食品の中で残留基準を超えているなどの食品衛生法違反の状況、TPP十一カ国から入ってきている輸入食品の中で食品衛生法違反の現在の状況はどうなっているでしょうか。厚労大臣、お願いいたします。
○塩崎国務大臣 二〇一四年度におきますTPP締約十一カ国からの輸入をされた食品について、今お話がありました食品衛生法違反、これがあった食品の数を多い順番から申し上げますと、アメリカ合衆国が七十四件、ベトナムが五十七件、マレーシアが十四件、カナダが七件、ニュージーランドが五件、オーストラリアが四件、ペルーが三件、シンガポールが三件、チリが三件、メキシコが二件、ブルネイはございません。合計いたしますと百七十二件違反がございました。
○斉藤(和)委員 現在の時点でもTPP加盟十一カ国からの食品衛生法違反の状況は百七十二件に上る。全違反件数の約二割ぐらいに相当するというふうになります。アメリカの違反件数は七十四件で、中国に次いで第二位です。ベトナムは五十七件で第四位。TPPで輸入食品の安全性が大変な事態になることは、現在の段階を見ても明らかだというふうに考えられます。
そこで、輸入食品の検査率が現段階でどうなっているのか、これも表にしました。こちらのパネルにもありますとおり、輸入食品の検査率は、二〇一四年の、先ほど大臣からもありましたとおり、違反件数百七十二件が出た段階で、検査されているものは全体の八・八%です。二〇〇三年以来、最低の検査率になっています。実に九一・二%が検査がない状態で輸入されてきているということになります。
輸入件数が年々増加する、その一方で、検査されている総数自体が減ってきているわけです。九一・二%が検査なしで輸入されている。この現状の中で、さらにTPPで輸入食品が急増すれば、この検査率というのはさらに低下するのではないかというふうに考えられるのですが、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 輸入食品の検査というのは、釈迦に説法ではございますけれども、検疫所において食品添加物とか残留農薬それから遺伝子組み換え食品等を検査するためにサンプルを取り出して行うモニタリング検査、それから、モニタリング検査等の結果を受けて、食品衛生法の違反の可能性が高いと判断された食品を対象に輸入者の経費負担で全量を検査する命令検査というのがございます。
この二つから成っているわけでありますが、輸入食品の検査件数というのは、違反の可能性が高い食品を対象とした命令検査の件数が減少することによっても低下をするわけでございまして、食品の輸入量の増加のみが検査率の低下に結びつく要因ではないわけでございます。
いずれにしても、今後の輸入食品の増加の可能性を踏まえて、検疫所の検査の体制強化を図るために、職員の研修による資質の向上や必要な職員の確保、それから検査機器の充実等によって、引き続き、我が国に輸入される食品の安全性の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 検査率が下がるというのは輸入食品が増加するからだけではないというお話がありましたけれども、全体の輸入届け出件数は二百二十一万件です。そのうち検査されているのはたった十九万件なわけですね。そういう中で輸入食品がふえていけば、検査される数というのは今の体制のままではやはり低下する状況というのは拭えないというふうに思うわけです。
輸入食品の検査というのは検疫検査ですから最も重要で、輸入食品、つまり私たち国民の口に入るものが安全かどうか、国民にとっては非常に関心があるし、逆に言えば、安全だと思って食べているものが実は検査されていないというのは、それ自体が驚きなわけです。
そういう点で、TPPで輸入食品がふえていくという見込みがあるもとで、検査率そのものをやはりしっかりと上げていくことこそが食品の安全を確保する国民に対する責任だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、サンプルで検査をした後に、違反の可能性が高いというものを判断して全量検査するということを今やっているわけでありますが、我々としては、サンプリング調査をきっちりやって、疑いがありということであれば全量検査をやる、この体制をしっかりとやることが安全性を確保するということにつながるわけでございます。
ですから、先ほどアメリカの数を言っておられましたが、中国に次いで二番目ということでありますけれども、全体としてそういった件数がそれぞれの国で下がっていくように私どもとしても検査をきっちりやっていくということをやることで、相手国もそういったことに大変厳しい国としての日本をよく見るということになれば、出す方もいろいろ考えざるを得ないというか、それでサンプリングで捕まるということになるわけでございますので、我々としては、先ほど申し上げたように、資質の向上を含めて、そして体制も含めてしっかりとやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますし、まさに食の安全は国民の基本だというふうに思っております。
○斉藤(和)委員 食の安全は基本、しっかりやっていくというふうな御答弁でしたけれども、私は、サンプリング検査そのものについても抜け道があるというか、抜け穴があるというふうに思うんですが、それは別の機会に、もしあればやらせていただければと思うんです。
やはり、食品の安全性を確認するという問題というのは、書類の上でチェックするだけではわからないわけです。残留農薬が基準を守っているかどうかというのは、実際にその検体を検査しなければわからない。それをやられているのが八・八%で、残りの九一・二%は、書類だけで、検査されずに輸入されているということなわけです。
先ほども大臣からありました、そしてTPPの関連政策大綱でもありますとおり、「食の安全・安心を守るため輸入食品の適切な監視指導を徹底するための体制強化に努める。」というふうにしておりますけれども、検疫所で検査業務に従事している食品衛生監視員の現在の人数は何人でしょうか。
○塩崎国務大臣 全国の港とか空港に設置をされております検疫所で、我が国の食品衛生法に適合する食品が輸入されるように、常時、輸入食品の審査、検査を実施しているわけでありますけれども、今お尋ねの食品衛生監視員、これにつきましては、二〇一六年四月一日現在、全国の検疫所に配置されている食品衛生監視員は四百八名でございまして、二〇一五年度から見ると増員は二名ということでございます。
今後とも、先ほど申し上げたとおり、輸入される食品の安全性が確保できるように、必要な職員の確保などによって輸入食品の検査等を着実に実施してまいらなければならないというふうに考えております。
○斉藤(和)委員 全国で四百八名だ、そして、輸入の監視体制を強化するというふうに言われましたけれども、二〇一六年で増員された数はたった二人しかありません。先ほども言いましたが、全体の輸入届け出件数というのは二百万件を超えているわけですから、それを四百八人でさばくということ自体が無理があるというふうに思うわけです。
検疫所で輸入食品の監視業務に従事しているのが、先ほど、全国に四百八人いらっしゃる食品衛生監視員です。国が行っている行政検査、先ほどもありましたが、モニタリング検査というふうに言われています。この検査を実際に行っているのが食品衛生監視員。この行政検査、四百八人の全国の皆さんがやられているこのモニタリング検査は八・八%ではないんです。この下にある二・六%、これをやられているのが、今、四百八人の食品衛生監視員の皆さんがやられているものです。これは、輸入食品監視統計が一九六五年に公表されて以降、過去最低の検査率となっています。
輸入食品の検査というのは、幾ら検査機器をそろえても検査率を上げることはできません。検査機器に入れる前の前処理過程というのが全て人の手で行われています。つまり、人をふやさなければ検査率を上げることはできません。
私も横浜検疫所輸入食品・検疫検査センターを視察いたしました。食品衛生監視員の皆さんが、例えば、衣つきの魚のフライの冷凍食品、これを一つ一つ衣を剥がす作業をやっている、または、冷凍のブロック肉を、その場所にトンカチとかのみが置かれていて、それを使って細かく砕いている。まさに、検査機器に入れるまで、その検体を検査機器に入れられる状態になるまで、要は、職員の手によって幾つもの過程を経て、やっと検査機器にかけることができるわけです。
検査業務に従事している食品衛生監視員というのは、六五%が若い女性によって担われています。業務は、検査によっては休日出勤だとか深夜になることもあり、大変だという職場でした。だからこそ、現場の食品衛生監視員からは、率直にTPPが怖い、こういう声が出されました。
しっかりと輸入食品の安全を確保する上で体制強化をするという上であれば、食品衛生監視員を抜本的にふやすべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、おっしゃるように人が検査をするわけでありますから、私どもとしても、今お配りをいただいているグラフにもございますように、経年的にふやしてきているわけでございますが、それが十分かどうかという評価が今問われているというふうに思います。
先ほど申し上げたように、必要な職員の確保はやはり図っていかなければいけないというふうに思っているわけでありまして、先ほど検査機器などについてのお話の言及もありましたけれども、やはりこれはこれとして、検査機器を充実していくことによって生産性を上げるというか、検査の生産性を上げる、すなわち、効率を上げていくことによって検査のカバー率を高めていくということも大事であり、間違いない検査をしていくということはとても大事だろうというふうに思います。
もちろん、一人一人の生産性という意味では資質の向上をやっていくことも大事でありまして、あとは人数の問題でございまして、私どもとしては、これはでき得る限りの確保を図っていきたいというふうに思っているところでございます。
○斉藤(和)委員 できる限りの確保をということですが、現時点で六割がTPP加盟十一カ国から入ってきている、この状態の中で、やはり抜本的に人数をふやさなければ検査体制が追いつかないということを繰り返し強調したいと思います。
人手が足らないからといって、パートやアルバイトでこの食品衛生監視業務というのは補うことができないわけですよね。検査施設の国際標準規格からも正規職員でなければならないというふうになっているわけです。そうすれば、やはり食品衛生監視員を抜本的にふやすという取り組みがどうしても求められるわけです。
先ほども指摘したように、輸入食品が急増する中で、食品衛生監視員をふやさなければ検査率を上げることはできません。しかし、ふやすといっても、二〇一六年でふえたのは二人。なぜ抜本的にふやすことができないのか。
私は、その根底に国家公務員の総定員法があるからではないかというふうに考えるわけです。各省庁の定員が定められていて、食品衛生監視員を増員すると、その一方で、他の厚生労働省内の公務員を削減しなければならない。だから、厚生労働省内のパワーバランスの中で、食品衛生監視員を抜本的に増員するということになかなか踏み切れないのではないか。しかし、自衛隊員はこの国家公務員総定員法の対象からは外されています。
輸入食品の検査に携わる食品衛生監視員というのは、まさに私たち一人一人の人間が、当たり前ですが、食べ物がなければ生きていけないという根本的な国民の健康と命にかかわる問題に携わっている仕事なわけですから、私は、食品衛生監視員を国家公務員総定員法の対象から外して、抜本的増員を進めるべきではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
○萩生田内閣官房副長官 総定員法の趣旨は、政府全体の総定員数の膨張を抑制しつつ、政府全体を通じた定員の機動的、弾力的な再配置を進める点にあり、その枠組みにおいて食品衛生監視員といった個別の職種の定数を定めているものではありません。
その増員の直接の障害になっているとは現時点では思っておりませんけれども、委員の問題意識につきましては共有するところがございます。
したがって、国家公務員の定員については、各府省から業務量を踏まえて増員要求が内閣人事局に提出され、これを審査する中で、必要なところには増員を配置しておりまして、今厚労大臣が答弁したとおり、検疫所には現在四百八名の食品衛生監視員が配置をされております。
と同時に、厚労大臣から御答弁したように、検査機器なども日進月歩で新しい技術も出ておりますし、あるいは事務処理のICT化などさまざまな工夫をしながら、効率的な検査体制というのをここで再構築していく必要があるというふうに思っております。
輸入食品につきましては、その安全性が確保されるよう、今後の食品の輸入動向等を踏まえた検疫所の体制を整備することが重要であるという認識は共通しております。
したがって、今後、内閣の重要課題に適切に対応する体制を整備しつつ、めり張りをつけて審査をしてまいりたいと思っております。
○斉藤(和)委員 共有するところがあるというお話でした。
とにかく、やはり輸入が抜本的にふえるということは目に見えているわけで、私は、改めて食品衛生監視員の抜本増員を本格的に行うということを求め、国民の食を守る立場で頑張り抜きたいというふうに思っております。
そうした点で、検疫体制を強化していくことも大事ですけれども、やはり、輸入ががばっと入ってきて、それに見合う体制がつくれなければ国民の健康や命が脅かされるわけですから、改めてTPPからは直ちに撤退することを強く求めて、質問を終わりにさせていただきます。
ありがとうございました。