TPP 影響試算を批判 2016年3月9日 農林水産委員会
投稿日:2016年03月09日

190-衆-農林水産委員会-2号 平成28年03月09日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 森山大臣に質問をさせていただきます。
 まず、TPPの影響試算についてお聞きします。本格的な論戦はTPPの特別委員会で行われることになると思いますが、試算の前提について聞きたいと思います。
 今、日本の農業、農村は、先ほど来話に出ていますとおり、農業者の高齢化に直面しています。後継者がいない中で、離農予備軍とも言われるような農家の方々が多くいる、そうした大臣の御認識はいかがでしょうか。

○森山国務大臣 やはり高齢化している面もありますし、若い後継者が頑張っているということもそのとおりだと思います。ただ、これは、お互いに年を一年に一つずつとってまいりますから、いつまでも続けられるものではありませんが、農業の場合は、比較的御高齢の方も頑張っていただいているのが現状ではないかと思います。

○斉藤(和)委員 まさにやはり農業は今現実問題として高齢化しているけれども、高齢の方が頑張っているから今何とか日本の農業は成り立っているというふうにも私は言えると思っております。
 二〇一五年の農業センサスによりますと、農業就業者の三分の一が七十五歳以上、農業就業者の六三・五%が六十五歳以上です。平均年齢は六十六・三歳。こうした状況の中で、農業後継者がいない販売農家は六十六万二千戸で、約四六%後継者がいないという状態です。この間、米価がなかなか上がらず、六十キロ、一俵当たり一万円以下というような価格低迷の中で、毎年四万戸の販売農家が離農しているということが続いています。
 米の生産には、当たり前のように、コンバインだとかトラクターだとか田植え機だとか乾燥機だとかが必要になります。それぞれ一千万とか四百万円ほどの価格がかかるわけですけれども、これには当然、償還するための期間が必要になります。そして、農業機械の買いかえ時期が来れば、後継者がいない高齢の農業者は、高価な農業機械を仮に購入したとしても、返済のめどが立たなければ結局購入を控える。さらに、ここに来て、TPPでこのまま農業は成り立っていくのかという先の見通しがなかなか持てない、こうした中で、農業を本当に続けていくのか、それともやめるのかという判断がこういう機械の買いかえ時期に迫られている。こういうことが米の生産者だけではなくてさまざまな分野でも起こっていると思います。
 例えば酪農家でも、六十頭規模の乳牛を飼育している場合、牛舎の建てかえが必要になりますけれども、一億円ぐらいかかるわけです。更新時期に、そろそろ牛舎も四十年、五十年たって、かえたいけれどもという方もいらっしゃいます。畑作農家にしても野菜農家にしても、トラクターは必要。園芸作物農家にすれば、ビニールハウスだとかガラスハウス、これもやはり更新期が来るわけです。
 そもそも、TPPは、先ほど来あるように、基本的に関税は撤廃をするということが原則の協定ですから、将来的に経営環境がよくなるという見通しはなかなか農家の方は持てない。そうなれば、やはりここで機械が壊れたら離農するしかないかなというふうに思われている方はたくさんいるというふうに私も話を聞きましたし、容易に推測できるわけです。
 こうしたTPPによる将来不安、後継者不足、高齢化による離農に起因する生産量の減少、こうした問題はTPPの影響試算の対象になっているんでしょうか。

○森山国務大臣 今回のTPPの農林水産省の試算は、あくまでもTPPによる関税削減の影響等を分析したものでございますので、高齢化の進展などの要素というのは考慮しておりません。

○斉藤(和)委員 高齢化などのこうした問題は考慮していないという答弁でした。
 私は北海道に伺いまして、中堅の酪農家の方々に離農が相次いでいるという問題を次にちょっとお聞きしたいと思っているんですけれども、酪農家の方々がなぜ離農しているかというと、経営に問題があるというよりは、どちらかというと先の見通しが持てない、そして、ここに来てやはりTPPだと。こうなると、先ほど来言ったように、借金をさらにして設備投資をするということを断念して、苦渋の思いで早期に撤退を選択しているという方がいらっしゃるということがわかっています。
 北海道の酪農中心地である別海町にも伺いました。七百戸の酪農家がEUに匹敵する規模の酪農経営を営んでいます。びっくりしたのは、そのうち百戸が高齢化や後継者がいないために離農を待機しているというお話が出てきました。今は限定的でも、来年、五年後、十年後はどうなるのか、全く先の見通しが見えない、いつ離農しようかという方々がたくさんいるんだというお話をお聞きしました。
 当然、TPPによる将来不安が出れば、離農待機、要は、いつやめようか、更新はできないしという方が離農を決断するということは容易にやはり想像できるわけです。それでも酪農生産が、私は低下すると思いますけれども、TPPの影響試算には、こうした離農による酪農の生産の大幅低下、こういうものも対象になっているんでしょうか。
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○森山国務大臣 乳製品につきましては、政策大綱に基づきまして、体質強化対策として、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上などの収益力、生産基盤の強化を図ることとしているわけでございます。
 具体的には、畜産クラスター事業等の活用によりまして生産コストを削減していく。また、規模拡大による生産効率の向上、また、性判別の技術あるいは受精卵移植等を活用した優良後継牛の確保、省力化機械の導入等々を図ってまいりまして、品質向上、付加価値につきましても、国産の生乳を利用した商品開発を可能とする製造加工技術の開発とか、あるいは乳製品の製造や直接販売、観光牧場の推進等の六次産業化の取り組みを進めているところであります。
 さらに、経営安定対策といたしまして、加工原料乳生産者補給金制度の対象に生クリーム等の液状乳製品を追加するとともに、補給金単価を一本化することとして、その単価については関税削減の影響など将来的な経済状況の変化を踏まえて適切に見直すなど、より万全の対策をとることとしております。
 このような対策に加えて、長期にわたる関税削減期間において生産者みずからによる創意工夫に基づく取り組みも期待をされるということでございますので、今回の試算におきましては、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産が維持されると見込んだところでございまして、いろいろな政策を打ってまいりますので、そこでカバーができると理解をしております。

○斉藤(和)委員 対策を打つから大丈夫だろうと。畜産クラスターにしても、生産基盤の強化、規模拡大というお話がありました。これはこれで、畜産クラスターも非常に喜ばれていて、要望も高いというお話も聞いています。しかし、先ほど言った、六十頭ぐらい、五十頭、六十頭、でも設備更新には一億かかる、こういう人たちは、こぼれてしまって対象になっていないんですよね。
 そうなれば、やはり、今政府が掲げている対策だけで本当に酪農は生産が維持できるんだという見通し自体が非常に私は甘いのではないかというふうに思っています。
 こういうふうにも言っていました。離農が波を打ってこれからやってくるんじゃないか、波を打って離農する方々がぶわっとふえていくんじゃないか、これが別海町の町役場の方の実感です。ぜひ、これは、ちょっと現場の実感というかそういうものをやはりきちんと反映した試算にしていかないと納得が得られないんじゃないかというふうに思うわけです。
 現に、農業センサスを見ましても、農家数の推移はこの間ずっと落ちています。一九九五年、三百四十四万四千戸、これが二〇〇〇年には三百十二万戸、二〇〇五年には二百八十四万八千戸、二〇一〇年には二百五十二万八千戸、そして直近では二百十五万三千戸、この二十年間で百二十九万戸の農家が離農している。
 そして、離農のスピードを見ると、五年間で二十七万二千戸から三十二万戸、これが一気に、この二〇一〇年から二〇一五年の五年間では三十七万五千戸と加速をしてふえているわけです。
 私の地元は千葉県ですけれども、ここでも、中堅の米どころだとか、二十ヘクタールを周りから委託を受け家族でやっていた米農家の方が、もうこの低米価で、とてもじゃないけれどもやっていけないということで離農されたというお話もお聞きするわけです。
 やはり、TPPによる経営不安によって、酪農にしても米生産にしても離農がとまる要因には私はどうしてもならないと思うんです。どっちかといえば加速をする。それでも生産減少はないんだと大臣はお考えなんでしょうか。

○森山国務大臣 先生のお話を聞いておりますと、非常に悲観的なお話をお聞かせいただくわけでありますが、そういう声が現場にあることは私も理解をしております。
 私もいろいろなところを歩かせていただきまして、例えば北海道の十勝の加藤牧場というところに参りました。非常にいい酪農経営をしておられるところでありますが、この加藤さんなんかの話を聞きますと、本当に今から日本の酪農は伸びていけるんだなというふうにも思います。
 また、新潟で、八人の若い人たち、異業種から入ってきた人たち、集落営農を百ヘクタールやっている人たちと懇談をいたしましたが、この人たちは、TPPが始まったときにどの国にどの品種の米を輸出するのが一番有利なのかということを今研究しているという話を聞かせていただいております。
 ですから、現場にしっかり明るい話と今先生の言われるような厳しい見方と両方あるなということは私もよくわかりますけれども、我々は、やはり政策をしっかり実施させていただいて、何としても皆さんが再生産に意欲を持っていただいて、若い人たちが農業に参入をしていただけるという世界をつくっていくということが大事なことではないかなというふうに思っておるところであります。

○斉藤(和)委員 意欲を持ってやっている方たちがいるのもよく知っています。やはり、一番最初に言った、現実問題として日本の農業は高齢化をしていて六十六歳が平均になっている、お年寄りが頑張っているから日本の農業は一定支えられている、ここをしっかりと見ていかないと、もちろん若い方が新規参入して頑張ることを応援することも大事ですが、踏ん張ってくださっている方々をしっかりと支えていく、ここを抜かしてしまうとやはり土台が崩れるというふうに私は見ているわけです。
 悲観的というふうにおっしゃいましたけれども、こういう声がありました。なぜ生産量が減らないと断言できるのか、農水省が言っていることは全く理解できない、現場の実態をわかっているのかというふうに感じるという声もお聞きしました。
 先ほど各地で説明をしているというお話がありましたけれども、その場で農家の方が職員の方に、本当にあんたたちはこれで生産量も落ちないと思っているのか、本当にこのとおりだと思っているのかというふうに詰め寄ったら、何も言えなくなってしまったと。私は、これは当然だと思うんです。
 現場に近ければ近いほど、今の、生産がなかなか苦しい、成り立たない現状、そして将来の見通しが立たない状況というのはよくわかりますし、周りの農家の方々がやはり現実として次々離農していっているわけですね。その一方で、代々やってきたじいちゃんの土地、父ちゃんの土地をやはり自分の代で終わらせちゃいけないということで、新たに仕事をやめて入ってきている若い方が例えば千葉県にもいます。
 しかし、全体の流れとして見た場合、そういう意欲があって頑張っている人たちもいる一方で、もう機械は買いかえられないし、TPPでこれからどうなるかもわからないし、米の価格が再生産可能な一万六千円に上がるような見通しも持てない。そうした状況の中で、やはり現場の方たちは相当な悲壮感を持っている。先ほど大臣もおっしゃられました、悲壮感があるのはわかっていると。
 やはり、そういう人たちの思いにも応えるような、対策を打つから大丈夫なんだではなくて、TPPによってこれだけ影響が起こるんだ、対策を入れずにしっかりと日本の現状から出発をしたTPPの影響試算を出すことが、今現場で踏ん張っている農家の方々を励ます一番の力になると私は思うんです。
 そうした点で、今の現状を反映していない試算は撤回をしてしっかりとやり直す必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○森山国務大臣 たびたび申し上げておりますが、前回、平成二十五年三月の政府統一試算につきましては、米、麦の国家貿易がなくなるなど全ての関税が撤廃をされる、国内対策も何も行われないという極めて単純化した前提を置きまして試算をしてきたところであります。この結果、米の国内生産量が三割輸入に置きかわり、生産額が一兆円減少するなど、全体の農林水産物の生産額が約三兆円減少するというのが前回の試算でございます。
 今回は、TPP交渉の結果、多くの品目で関税撤廃の例外や長期の関税削減期間も措置できましたし、また米、麦、砂糖などは今後も輸入が大きく拡大する状況にはないと考えております。また、政策大綱に基づきまして、重要五品目については、畜産などにおいては、マルキンの法制化や補填率の引き上げなど、TPPの協定発効後の経営安定を万全に期するための措置を講ずることとしておりますので、今回の試算では、前回と異なり、再生産が確保されるよう、交渉で得られた措置とあわせて国内対策を確実に実施するということを踏まえて試算を行っているところでございますので、この試算を再度するということは今は考えておりません。

○斉藤(和)委員 そういう、やはり現場の納得が得られない試算を出して、対策を打つから大丈夫なんだというのは、現場の方にとってみると、本気で俺らのことを考えてくれているのかよという思いになるわけです。
 この問題は、引き続き特別委員会でも、やはりTPPを考える上で非常に大事な土台になると思いますし、今後の農業政策のあり方、対策の打ち方にも大きく影響する問題だと思いますので、審議をさせていただきたいと思います。
 次に、米の備蓄問題についてお聞きします。
 TPPで義務づけられた米の別枠輸入、これは七万八千四百トンになります。政府は、国内の米需給に影響を与えないために、別途国産米を、同量の七万八千四百トンを備蓄米として買い上げることにしています。
 これまで、一万円を割る、まさに赤字覚悟でなければ米はつくれない、つくるよりも買った方が安いという低米価の中で、何度も農業団体の方と私も交渉をして、米価暴落を食いとめるために備蓄米として買い上げをやってほしいと何度も求めてきましたけれども、頑として政府は受け付けず、米価暴落は放置をされ、現状になっているわけです。
 しかし、ここに来て、TPPで一転、七万八千四百トンを別枠輸入するとなると、頑として受け付けなかった備蓄米を、七万八千四百トン、同量を買い上げるというふうに決めたわけですけれども、だったら、今後やはり国産米の需給バランスが崩れたときには備蓄米としてしっかりと国産米を買い支えるんだというふうに理解してよろしいでしょうか。

○森山国務大臣 斉藤委員もよくおわかりになって御質問いただいているのかと思いますが、備蓄米の百万トンという数量は変わらないわけでございます。
 それで、五年のサイクルでやっておりますけれども、やはり五年もたった古米を、有事のときといえども、国民の皆さんに提供することがどうなのかなと考えますと、それはもう少しやはり短いものであってほしいというのが国民の皆さんの願いではないかなというふうに思っておりますので、そこを少し短くさせていただくことで、それぞれの国に割り当ててあります米を吸収していこうというのが今度の政策であることを御理解いただきたいと思います。

○斉藤(和)委員 つまり、TPPの別枠輸入で七万八千四百トンは買い上げるけれども、需給調整として国産米が例えば米価が暴落しても、備蓄米として買い上げることは今後もやらないという理解でよろしいでしょうか。

○森山国務大臣 買い上げるということは今後もやらないと思います。
 ただ、政策については、いろいろそのときそのときで対応しなきゃならないことは出てくるかもしれませんが、そのために特別買い上げるということはやめるということが政府の方針でございますので御理解いただきたいと思います。

○斉藤(和)委員 本当に全く筋が通らないなというふうに思うわけですね。要は、国内で米価が下がって、もう生産が成り立たない、何とか支えてくれ、備蓄米を買い上げてくれと言っても頑としてやらなかったけれども、TPPで七万八千四百トン新たに買うとなったら、その頑としてやらなかった枠を変える、そして回転を短くするというお話でした。
 私は、今でも備蓄米というのは経費がかなりかかっているというふうに思うわけですけれども、さらに問題だと思うのが、今大臣がおっしゃられた、現在備蓄米というのは五年の棚上げ方式です。要は、五年間保管するわけですから、主食用米として買い上げて、五年後には飼料用米、つまり、主食としては販売していないわけです。しかし、このTPPの七万八千四百トンを買い上げ、備蓄するというふうになれば、報道ベースですけれども、三年保管に変更するというようなことも報道がされています。先ほども短縮をされるというお話が大臣からありました。
 五年間であれば主食用米としては出ないで飼料米として出るけれども、例えば三年にすれば、主食用米として、回転備蓄という形で市場に出ていくことになると思うんですけれども、そうなると、私はこれこそ米価に影響が出るというふうに思うわけです。
 百万トンを維持するというお話だったんですけれども、私は五年間を維持しろとは言いませんが、主食用米として出ていけばやはり市場の価格に影響するわけですよね。それを抑える意味で、やはり主食用以外で備蓄米は回転させるんだ、棚上げ方式でやるんだという、五年間を維持すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○森山国務大臣 新しい方式でも、主食米として備蓄米が市場に出ていくことはありません。

○斉藤(和)委員 主食用米として出ていかないということは、どういうふうにやるというお考えなんでしょうか。

○森山国務大臣 今から制度はつくらなきゃなりませんが、一定の期間を過ぎたものは、今までと同じように、飼料米とかあるいは加工用とかそういうところで出てまいりますので、主食用として市場に出ていくことはありません。

○斉藤(和)委員 主食用として出ていくことはないという御答弁でしたので、これはしっかりと飼料に回すだとかしていただいて、主食に必ず影響が出ないようにするということは絶対に必要だというふうに思っております。それでなくても、米価は、農水省のものでも再生産可能なのは一万六千円、しかし今はもう一万円を切っているわけですから、やはりここを本気で変えるということを、支えるということをやっていかないと、米づくりは危機的な状況なわけですので、やはりここはしっかりと絶対に揺るがずにやっていただきたいということを強調したいというふうに思います。
 次に移ります。
 昨年の十二月に在日米国商工会議所が意見書を出しました。それは「共済等と金融庁監督下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」というもので、その中で、JAグループの改革を進めるべきとの内容が含まれています。
 大臣は、この意見書、どのような御見解を持っていらっしゃるでしょうか。

○森山国務大臣 在日米商工会議所が意見書を発せられたことは承知をいたしております。
 農協の共済事業につきましては、経営の健全性の確保や契約者保護に関し、農協法で保険業法と同等の規制を行った上で、他の協同組合による共済事業と同様、農林水産省が単独で監督をしております。この体制につきましては、昨年の農協法改正でも何ら変更をしていないところであります。
 また、准組合員の利用規制のあり方につきましては、五年間の調査を行った上で決定する旨が改正農協法の附則で明定されているところであり、この規定に従って対応していくという考え方でございます。

○斉藤(和)委員 この在日米国商工会議所が出した意見書の中には、農協法の改正案の可決を歓迎し、一九五四年に農協法が制定されて以降、安倍政権が初めて大規模な農協の改革を実行したことを高く評価している。この改革は、有意義な構造改革の達成に向け、大きく前進していることを示しているというふうに、農協法改正が構造改革の前進だと絶賛しています。
 さらに、二〇一四年の規制改革会議農業ワーキンググループの提言の中にはあった、准組合員の事業利用が正組合員の事業利用の二分の一を超えてはならないなどの規定が法案には入らなかったということに対して不満を示した上で、金融庁監督下の保険会社に厳しい規制を課す必要があるのであれば、同様の商品を販売する全ての競合会社にも同じく厳しい規制を課すべきであり、共済等も例外ではないというふうに言い切っています。
 さらに、共済等の優遇措置は、WTOのサービスの貿易に関する一般協定のもとで、保険、保険関連サービスを含む金融サービスに関する合意事項に反しているというふうに言及しているわけですけれども、大臣はこの指摘をどう受けとめていらっしゃるでしょうか。

○森山国務大臣 いろいろな御指摘があることは承知をいたしておりますが、私どもは別に間違ったことをしているとは思っておりませんし、また、農協の共済につきましても、ほかの事業協同組合の共済につきましても、それぞれ歴史を重ねてきた事業でございますので、そのことも在日のアメリカ商工会議所の皆様にも御理解をいただかなければならないと思っております。

○斉藤(和)委員 御理解を求めるというお話だったんですけれども、問題は極めて重大なことを指摘しているというふうに思うわけです。
 農協共済の問題が、WTOのサービス貿易に関する一般協定上の、国際通商上の義務に抵触しているというふうにこの意見書は言っているわけです。これはTPPにも関連してくることは明確だというふうに思うわけですけれども、TPPの金融サービスの問題では金融サービスの紛争処理規定が明記されていて、ある意味、そこにこの抵触している問題を持ち込むぞ、訴えるぞというふうに言っているにも等しいぐらいの痛烈な意見書だというふうに私は受けとめました。
 当然、大臣、先ほど来答弁されていますけれども、こうした不当な要求に対しては絶対に受け入れることはない、断固拒否するんだ、その立場にお変わりはないでしょうか。

○森山国務大臣 林前大臣も答弁をしておられますけれども、「見直し規定でございますから、これは一般的に法律には大体付されているものでございまして、何か方向性を持って見直すときには、こういう方向で見直すとかそういうことが普通は書かれるわけでございますが、そういうことも付しておりませんので、単純な見直し規定だ、こういうふうに考えております。」という答弁でございますので、いずれにいたしましても、いろいろ御意見があるのは、それぞれ御意見があるのは私も承知をいたしておりますが、私どもは、そのことを見直すという気持ちはありません。

○斉藤(和)委員 今のは違うと思います。見直しというのは、多分、農協法の中での見直し規定の話ではないかというふうに思うので、今の話とはちょっと違うと思うんですけれども。
 TPPがこれから審議になります。やはり、この農業共済の問題、さまざまな共済の問題というのは、私は必ずTPPとも直結してくる問題だというふうに思っております。そうした点で、やはりTPPというのは、農業だけではなくて、共済だとか金融だとか、さまざまな幅広い分野に非常に影響をしてくる、こういう問題ですので、私はTPPの批准は決して認められないというふうに強調をしたいわけです。
 本当は国家戦略特区の話をしたかったんですけれども、多分時間だと思いますので、引き続き質問をさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。