189-衆-農林水産委員会-5号 平成27年04月15日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
食料・農業・農村基本計画は今後十年間の農政の方向性を示すものです。
自民党の皆さんは、二〇一三年四月に農業・農村所得倍増目標十カ年戦略を発表します。同年六月十四日には、今後十年間で六次産業化を進める中で農業・農村全体の所得倍増をさせることが盛り込まれた日本再興戦略が閣議決定されます。それに基づいて、総理が本部長になって十二月十日に農林水産業・地域の活力創造プランが決定をされました。
農業・農村の所得倍増というのはアベノミクスの成長戦略の目玉だと思います。関連する資料でも、所得倍増になるように試算がされています。
これだけ所得倍増が強調されながら、基本計画には「所得増大」とされています。農林水産省としては、どのように倍増を増大というふうに整理されているんでしょうか。
○林国務大臣 今、新たな食料・農業・農村基本計画についての記述ぶりのお尋ねがございましたが、基本計画にどう書いてあるかといいますと、「「農林水産業・地域の活力創造プラン」等においては、「今後十年間で農業・農村の所得倍増を目指す」こととされており、これに向けて、農業生産額の増大や生産コストの縮減による農業所得の増大、六次産業化等を通じた農村地域の関連所得の増大に向けた施策を推進」、こう記載をしております。
農業・農村の所得倍増は活力創造プランにおいて目指すとされておりますが、基本法において目標として設定すべきものというふうにされている食料自給率とは異なりまして、基本法上の目標として設定すべきものというふうにされているわけではないわけでございます。
基本計画とあわせて農業経営等の展望というものを策定しておりますが、この中で、マクロの道筋として、農業所得及び農村地域の関連所得の増大に向けた対応方向とそれぞれの試算値、またさらに、ミクロでの道筋ということで、営農類型別、地域別の農業経営モデルとあわせて地域で六次産業化等の取り組みを示して、地域の農業所得と関連所得の合計が増大するイメージをお示ししているところでございます。
○斉藤(和)委員 食料・農業・農村政策審議会の企画部会の委員の生源寺氏がこうおっしゃっています。「所得倍増について、やはり、基本計画の中に、具体的な形で織り込むことは避けた方が良い。」「ある程度高めの目標を設定するということはあるかもしれないが、現実からかけ離れたものを掲げるということとは別。」「引用として「所得倍増」という言葉を使っていくというケースと、この審議会の答申、それを受けた基本計画の中で、「所得倍増」という言葉を使うというのは、全く意味が違う。審議会として、閣議決定した内容に責任を持てるかどうかという、こういうレベルの話になるので、この辺も注意深く対処する必要がある。」というふうに発言されていますが、やはりこの指摘を受けて、基本計画には「所得増大」というふうに書いたのでしょうか。
○林国務大臣 生源寺先生は審議会の重要なメンバーでございますので、審議会でいろいろな議論をされる中で、今御指摘の発言があったのかな、こういうふうに思っております。
最終的に、閣議決定に当たっては、先ほど申し上げましたように、基本法に基づいて計画をつくる、こういうことでございますので、基本法において食料自給率は目標として設定するものと明記をされておりますので、そういう形で設定をすべきもの、こういうふうにいたしたところでございますが、所得倍増を目指すということについては、先ほど申し上げましたように、基本法において設定すべきものということではありませんので、農業経営等の展望の中で書かせていただいた、こういうことだと思います。
○斉藤(和)委員 増大というふうには書いたけれども、基本的には所得倍増ということでいろいろなプランなども閣議決定をされているということですので、その所得倍増について、農林水産省の試算などの資料を改めて見ていきたいというふうに思うんです。
農業の所得は、二・九兆円から三・五兆円と六千億円ふやすというふうになっています。その一方で、先ほど来話が出ていますが、農村地域の関連所得が一・二兆円から四・五兆円と大きく伸びることになっています。これは、加工・直売や都市と農山漁村の交流など七つの分野が示されていますが、大きなウエートを占めているのが輸出になっています。現在の輸出額は、農水省が出した資料ですけれども、四千五百億円ですが、二〇二〇年には一兆円、さらには十年後には三兆円に拡大するという目標です。
十年で農業の所得は六千億円しかふえないのに輸出額を三兆円にするという見通しは、どのように持っていらっしゃるんでしょうか。
○林国務大臣 輸出でございますが、日本再興戦略におきまして、平成三十二年に日本の農林水産物、食品の輸出額一兆円を達成し、その実績をもとに、新たに平成四十二年、二〇三〇年でございますが、輸出額五兆円の実現を目指す、こういうふうに定められております。
したがいまして、平成三十二年の政策目標である一兆円、それから平成四十二年の政策目標である五兆円の中間値が三兆円でございます。これに最近の好調な伸び率、これは一兆円に向けて実はかなり、四千五百、五千五百、六千百と好調な伸び率を記録しておりますので、これを維持した場合、中間値より一五%程度上回る、こういうふうに試算をいたしまして、数字をはじいて、そしてこれに農村の帰属割合を乗じて、農村地域の市場規模として平成三十七年においては三兆円、こういうふうに試算をしたところでございます。
○斉藤(和)委員 三兆円ということで、帰属割合をという話だったんですけれども、やはりウエートとして、三兆円の農林水産省の方が出した試算を見ていただきますと、お手元に資料をお配りしていますが、加工食品の割合というのは五千億円になっています。
つまり、農業の所得で六千億円にもかかわらず、輸出額は三兆円というふうにするというのは、まさに農業の生産品だけを輸出することによって価格をふやすということだけではなくて、まさにこの試算どおりに、いわゆる生鮮品を輸出ということだけではなくて、加工品の輸出を大きくふやすということだと思いますが、間違いありませんか。
○林国務大臣 お示しした試算の中でも、二十五年は生鮮品が〇・一八兆円、千八百億円に対して加工品が三千七百億、〇・三七兆円で、トータルで五千五百億ということでございますが、三十七年はこれがそれぞれ一・二兆円と二・二五兆円になる、こういうふうに推計をしておるわけでございます。
生鮮品の場合は当然農村地域の帰属割合は一〇〇%ですが、加工品の場合は、二十五年は七三%、これを三十七年においては八〇%をそれぞれ見込んでおるということで、はじいておるところでございます。
○斉藤(和)委員 加工食品がふえるということはお認めになりますよね。三兆円の中で加工食品の割合が占めるウエートというのは非常に伸びるという、こちらの。
○林国務大臣 当然、我々が内訳をつくって、一兆円の目標をつくっている中も、加工品が五千億だったと思いますが、そういう割合になっております。
三兆円、五兆円ということを目指していくということになりますと、いわゆる新大陸型のアメリカとかブラジルというような、大豆、トウモロコシ、小麦等の、コモディティー的にたくさんつくって、大変安い値段で輸出するということではなくて、オランダやフランス、イタリアといったような、付加価値の高い加工品、集約的な花等をやっているもの、フランス、イタリアは、さらに加工したものをブランド化するということで付加価値をつけている。
どちらかというと、我が国が目指す方向はこういう形ではないかな、こういうふうに考えておりますので、先ほど申し上げたような数字の推計をしているということでございます。
○斉藤(和)委員 やはり輸出の三兆円というのは、非常に加工品がふえるウエートが大きい。つまり、六次産業化を進めて加工品を拡大し、より付加価値の高いものを海外に輸出をして、もうける。それが、行く行くは農業・農村の所得倍増につながる。私は、農業版のトリクルダウンの発想だというふうに思います。
経済全体においても、大企業がもうかればそのおこぼれが滴り落ちるというトリクルダウンはうまくいっていないという現状があるもとで、農業において、特に気候条件にも大きく左右される、こうした発想というのがそもそもいいのかということを私はちょっと指摘しておきたいというふうに思います。
同時に、農林水産省の品目別輸出戦略によれば、二〇二〇年の輸出額一兆円のうち、三分の一以上は水産物です。農業・農村の所得倍増といいながら、水産物が大きなウエートを占めていますが、これはどのように説明をされますか。
○林国務大臣 トリクルダウンということは、加工食品の場合はゼロだというふうに申し上げるつもりはございませんが、先ほどフランスの例を出させていただきましたけれども、GI、ことしから我が国でも始まりますが、これを活用して、例えばブリー・ド・モーといったチーズは、非常に小さい規模の生産者がこういうものをつくって、これが世界に輸出されているということもございますので、目指すべき姿はこういうところにあるのではないかなというふうに思っております。
今お話のありました水産物でございますが、御指摘いただいたように、農村地域の関連所得の算出のもととなる輸出額には水産物も含まれておるわけでございますが、農村地域の関連所得を試算する際に、推計された市場規模から、原料となる農産物や水産物等の中間投入額を除くことによって関連所得を算出しておりますので、最終的な関連所得額には、原材料である水産物に係る漁業の生産所得額、これは含まれていないということでございます。
○斉藤(和)委員 つまり、漁業に含まれる帰属割合の意味は含まれていないということですか。輸出額の一兆円の中の三分の一を占める三千五百億円というのの中に、あくまでも農業、農村だというふうに捉えてよろしいんでしょうか。
○林国務大臣 輸出は先ほど申し上げたとおりでございますが、六次産業化事業体の関連所得を算出する際には、加工食品を原材料によって切り分けられないなど、統計上、これらのみを厳密に切り分けることが困難であるということに加えまして、農山漁村の実態を踏まえますと、農家の人が、例えば輸出向けの水産物の加工施設で働くというような場合も考えられまして、こういうものも含めて、地域全体で雇用や所得を伸ばしていって、農山漁村を活性化していく必要がある、こういう理由で、六次産業化事業体の関連所得の算出の際には水産物が含まれている、こういうことでございます。
○斉藤(和)委員 つまり、今のお答えは加工食品の話であって、一兆円の中の三千五百億円の水産物というのは別だという話だということだと思います。つまり、農業・農村の所得倍増といいながら、漁村の所得にかかわる水産物が含まれているという点でも、この試算自体に水増しがされているのではないかというふうに私は考えています。
先ほどお答えになりましたけれども、加工食品の帰属割合、この問題で、もう一つの表で、今現在、加工食品の農村地域の帰属割合は七三%だ。これはなぜかといえば、輸入原料を使っているから、農村に帰属するのは七三%。しかし、十年後には八〇%になるというふうにされていますが、つまり、それは国産原料をふやすということだと思うんです、加工食品の中での割合を。これはどのように実現しようと考えていらっしゃるんでしょうか。
○林国務大臣 今後、農林水産物、食品の輸出の拡大を図るためには、今つくっております国別・品目別の戦略に基づいて、マーケティングをオール・ジャパン体制で進めまして、相手国のニーズに適した商品開発等を行うことが重要でございます。
このために、生産者、流通関係者等が一体となって、お客様、海外の需要者のニーズに応じた国産農産物等の生産供給体制の確立を図っていこうということで、PDCAサイクルを回して課題等を分析して、毎年、取り組みの改善を行っていこうということを考えておりまして、こうした取り組みを通じて、加工品の原材料としての国産農産物の使用割合を高めていく、こういうふうに考えております。
○斉藤(和)委員 割合を高めていくというお話だったんですけれども、私は、今の加工食品の原料というのは輸入がどんどん増加傾向にある、こういう実態を考えても、本気で国内生産の原料を拡大しようと思ったら、やはり輸入に対する規制をしっかりと歯どめをかけて行う必要がある、TPPなどはもってのほかだというふうに思うんです。国内生産を拡大する対策を打たなければ、この間、輸入はどんどんふえているわけですから、ますます輸入が拡大することは目に見えているというふうに思います。
この点でも、現状よりもさらに国産品をふやすという八〇%という帰属割合自体も、私は、水増し、数字を合わせるためのものではないのかというふうに感じています。そういう点からも、私どもの試算で見ると、試算の段階で六千四百億円にも上る水増しがされている。
今、米価が暴落をして先行きが見えない状況の中で踏ん張っている農家の皆さんたちにとって、それをだますような、所得倍増という、これはもう撤回をすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 水増しというふうに、先生から見るとそういうふうに位置づけられるのかもしれませんが、我々は政策をやっていく上で、そういう七三から八〇というのをはじいて、先ほどフランスの例を申し上げましたけれども、GIというのをやりますと、やはりちゃんと地元のものを使って今までやってきたやり方を踏襲するということが付加価値の源泉になる、やはり目指すべき方向はこういうことではないかな、こういうふうに思っております。
やはりしっかりとそういう目標をつくって、輸出の目標もそうでした、一兆円と最初に言ったときは、関係者の間で、これは高い目標ですけれども、目標として頑張りましょうか程度の感触もあったわけでございますが、実際に戦略を細かくつくって積み上げていきますと、四千五百が五千五百、六千百、こういう勢いでふえてきておるわけでございますので、一見高くハードルが掲げられているように見えても、その実現に向かって諦めずにしっかりと着実に努力を続けていくという姿勢が大事ではなかろうかと考えておるところでございます。
○斉藤(和)委員 一見高く見えるような目標であっても、それを掲げて頑張るのであれば、食料自給率は五〇%でもよかったのではないかというふうに思いますが、やはり農業・農村の所得倍増というふうに言っている無理な目標を、逆に言えば、設定することによって現実に合わない施策が進められ、現場は矛盾に陥る、そういう実態もあるというふうに思いますので、私は、しっかりと現場をよく見て考える必要があるというふうに思います。
次に、農地中間管理機構について質問をいたします。
農地中間管理機構は、農地の有効利用の継続や農業経営の効率化、コスト削減のためには規模拡大が必要だということで、農地の集積、集約化を進めるために設立をされましたが、今年度の目標とそれに対する実績は、先ほどもありましたとおり、非常に低い。今後、四月下旬に数字が出され、それをもとに安倍首相のもとで検討されていくというふうになっていますが、現時点で、大臣は今の現状をどのように認識され、今後どうしていく必要があるというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
○林国務大臣 これは先ほど来お答えをしてきたところでございますが、熊本県のような優良事例を横展開するための研修会、県別ヒアリング、こういうものを行ってまいりまして、機構の体制整備を促してきたところでございますが、やはり全都道府県の機構が軌道に乗っているという状況ではない、こういうふうに考えております。
この背景も、先ほど申し上げたとおりでございますので繰り返しませんが、ディベロッパーとしての自覚がなかなかないですとか、人・農地プランの話し合いが十分に進んでいない、また、機構の存在そのものの周知が徹底されていない、こういういろいろな原因が考えられることでございます。
したがって、三月末時点の初年度のデータをしっかりと収集して、これをもとに、官邸も含めて、機構の活動の検証、評価を徹底的に行いまして、大事な事業でございますので、しっかりと軌道に乗せるために具体的な対応策を検討していきたいと考えております。
○斉藤(和)委員 実は、規制改革会議の中で、奥原局長がこうおっしゃっています。「法律さえ変えれば世の中は変わっていって農地が動くのではないかと思ってきたところが随分あるわけです。ですが、この土地の問題というのは都市部でもそうですけれども、そう簡単に動くわけではありません。」とし、小さい規模で高齢の方がいたり住んでいたりする上で、「自分の持っている土地についての執着は物すごくあるわけです。」というふうに発言をされています。
この局長の発言というのは、私はそのとおりだと思うんですけれども、こうした農家の皆さんの土地への執着、こう考えた場合、農地中間管理機構のやり方というのは、目標に届かない現状を見ても、なかなか貸し出すということ自体に抵抗があって難しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 ちょっと局長の発言について詳細は承知をしておりませんが、先ほど申し上げましたように、そういう理由が、もしこのデータを収集して一つの理由として出てくれば、それに対応してどういうことを対応していけばいいか、こういう検討をしなければならない、こういうふうに思っております。
○斉藤(和)委員 これから検討をされるということですけれども、私は、やはり農地というのは単なる土地ではないと思います。農家は、より収量をとれるように、また、いい作物が収穫できるように、丹精を込めて土をつくるわけです。先祖代々の農地であると同時に、みずからの汗と苦労が詰まっている農地だからこそ思いが強い。そして、そういう思いがあるから、農村社会を構成し、農村文化をこれまでつくってきたんだと思うんです。
しかも、問題だと思うのは、農地中間管理機構は借りる側を公募します。つまり誰でも公募できるわけで、企業の農地の利用を拡大するためのものではないのかと指摘をされています。
埼玉県の羽生市で、イオングループが米の生産を始めることも報道されています。農地中間管理機構の役割は、安倍首相が昨年一月のダボス会議で、四十年以上続いてきた米の減反を廃止します、民間企業が支障なく農業に参入し、つくりたい作物を需給の人為的コントロール抜きにつくれる時代がやってまいりますという、まさに民間企業が農業に参入するための後押しだというふうにも見えます。既に、五年、十年で返せと言われたら困るだとか、産業競争力会議でも、企業による農地取得の自由化を求めるということも言われています。
こうした企業の農地取得に道を開くようなことは絶対にあってはならないというふうに考えています。企業は、もうからなければ簡単に撤退をするわけで、さらなる農地、農村の荒廃を招きかねません。本当に日本の農業、農村を守るというのであれば、こうしたやり方は許せないということを指摘して、質問を終わります。
ありがとうございました。