農業共済掘り崩す農業災害補償法改正 農業所得が確保できる岩盤制度こそ(6月7日 農水委 議事録)
投稿日:2017年06月07日

193-衆-農林水産委員会-19号 平成29年06月07日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 前回に続いて、農業災害補償法の改正案について質問します。
 前回、六月一日の審議で、農作物共済の当然加入から任意加入制度に変更する問題について質問しました。任意加入によって、逆選択、いわゆる保険加入者が幅広い層に行き渡らずに被害が多い層に偏ってしまうことが起こるのではないか、そうなれば、農業共済組合の財務や農村集落における相互扶助の仕組みにも影響を与えかねないと指摘をし、山本大臣に見解をお聞きしました。
 これに対して大臣は、米麦を取り巻く状況の変化を踏まえて任意加入制度に移行する、当然加入を廃止しても、危険段階別共済掛金率を導入するので大丈夫だ、また、経営発展を目的とした融資及び補助事業の採択に当たって共済への加入を促すので、共済事業の運営に支障を来すようなことは起こらないだろうというふうに答弁をされました。しかし、これで本当に逆選択を防ぐことができるのかというふうに私は疑問に思います。
 これまで当然加入としてきたのは、前回も指摘したとおり、自動車の自賠責保険と同じで、社会政策的な位置づけで行われてきた。自賠責保険がなければ、交通事故による補償ができなくなり、その分社会的なコストが莫大になるわけです。だからこそ、農作物共済でも当然加入を行ってきた。しかし、それをなくしてしまって、全国で被害を支え合うという、逆選択を防ぐことが本当にできるのか。その辺の御認識をもう一度大臣にお聞きします。

○山本(有)国務大臣 米麦を取り巻く状況の変化、あるいは経営安定対策が任意加入制となっているというようなことを申し上げました。
 当然加入制度を廃止しましても、危険段階別共済掛金率を導入するということになりますと、共済金を受け取らない農業者ほど掛金が安くなるということもありまして、低被害の人でも継続加入するというような方向性が出てまいります。
 また、坪刈り等を要さずに、目視による評価で一筆ごとの損害を補償する制度を導入しておりますので、これも制度の普及に資するものだというように考えております。
 被害が多い者だけが加入して逆選択となるというような事態は、およそ想定をしておりませんし、農業共済の各団体の主要な役員の皆さんからもそういう御意見はまだ余り聞かれていないという状況でございますので、この制度を導入して以降、もしそういうことがあるならば、改善を考えていきたいというようにも思っております。

○斉藤(和)委員 もしそのようなことがあれば改善もという言葉がありましたが、本当に、先ほどもあったけれども、当然加入だから入っているという声を私も聞いてまいりました。
 改めて考えてみますと、農業は自然災害の影響を受けやすい特性があります。農業者の栽培管理によって被害を防ぐことも限界があるときのうの参考人質疑の中でも指摘がありました。
 平成五年の大冷害の際に、共済金支払い額は四千三百九十四億円に上った、当然加入制だったために、ほとんどの被災農家が農業共済の加入者で、共済金を受け取ることができ、特段の混乱がなかったと言われています。しかも、再保険金の支払いのための借入金も、七年間で全て償還した。
 これはまさに、当然加入制だからこそ、安定的に、しかも、非常事態でも皆さんの支え合いによって健全に運営されてきているという証拠ではないかと思うんですけれども、任意加入になって本当に大丈夫なのか、先ほどもありましたけれども、無保険者がふえるようなことがあってはならないと思いますけれども、もう一度、大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 繰り返しになりますけれども、危険段階別共済掛金というような制度を導入することによりまして、例えばサトウキビの共済加入でございますが、鹿児島県で、平成十九年に四七・八であったものが、こうした危険段階別共済掛金の導入によりまして、現在は五八・二というように一〇%以上加入率がふえております。沖縄でも同様に、十九年に三六・三であったものが平成二十七年には四九・四と、一〇%以上加入率が増加しております。
 というように、この危険段階別掛金制度というのは加入者をふやしていくというインセンティブがございますので、そんな意味におきまして、こうした任意加入制度をとりましても、万が一のことを考える経営選択、そうした農業者にとりましては、こうしたものを選択いただける、収入保険制度を選択いただけるというように今考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 私は、危険段階別で本当に大丈夫かという非常に疑問があります。
 先ほど、もしそういう状態になれば検討もするというお話でしたので、ぜひ実態に即して、決して無保険者が生まれるような事態にならないように対応していただきたいというふうに思います。
 都道府県別に見ても、農作物共済の被害率は、冷害が多発しやすい県とそうでない県で大分違いがあるわけです。当然加入制なので、全国一律の制度運営ができてきたわけですけれども、任意加入になった場合、県によって差が出てくる。被害が少ない県は加入者が減少する、県単位で差が出てくる。そうなった場合、これまでどおりの全国一律の制度運営ができるのかと疑問に思うわけですけれども、どうお考えでしょうか。

○山本(有)国務大臣 水稲共済でございますが、従来から、事業の適正な運営を確保する観点から、掛金と共済金が長期的に均衡するように、地域ごとの被害の発生状況を反映して、共済組合等ごとに掛金を設定しております。地域別の被害の状況は掛金率に反映される仕組みというものになっているわけでございます。
 こうした考え方のもとに、水稲共済が任意加入制へ移行しましても、このことにおいては同様でございまして、共済事業の安定的な運営というものはしっかり図られるものというように考えるところでございます。

○斉藤(和)委員 つまり、危険段階別にしなくても、今の段階で地域ごとにやっているわけですよね、そういうことは。ですから、やはり任意ということの意味が、本当に今までのような状態が保たれるのかというところに非常に疑問があるわけです。
 さらに、私、この任意加入にするということも問題なんですけれども、それでも共済にとどまってもらえるという点で、無事戻しと一筆方式を残したら、まだ、やはり残ろうというふうになったと思うんですけれども、ここもなくしてしまう。
 当然加入の作物共済では、無事戻し実施組合割合は、農水省の資料でも九六・九%というふうに書かれていました。無事戻しは、掛け捨て感を緩和して、非常に共済に対する信頼感をつくってきたものだと思うんです。しかし、これも今回の改正で無事戻しはなくしてしまう。さらに、先ほど大臣からあった、一筆方式、残すというんだけれども、今までは三割の被害でも補償が受けられた。しかし、今回は五割以上の被害じゃないと補償が受けられない仕組みになる。
 要は、無事戻しも廃止して、多くの人が利用している一筆方式までなくしたら、しかも当然加入じゃなくなると、作物共済は本当に維持できるのか、深刻な影響を与えることになりかねないのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 いわゆる無事戻しは、共済組合に積立金がなければ実施されておりません。また、積立金がありましても、共済組合の判断によるわけでございまして、事故低減のインセンティブが小さいわけでございますので、これは廃止をさせていただきたいと思います。
 また、一筆方式でございますが、現在、特に米で普及した制度ではございますけれども、農業者による損害評価や、いわゆる坪刈りによる査定方式など、事務コストがかかり、将来に向けて継続することが困難な状況がございます。それで廃止をさせていただくことになりました。
 無事戻しを廃止いたしましても、繰り返しになりますが、危険段階別共済掛金率を導入するということになりますと、共済金の支払いが少ない農業者は翌年以降の掛金が確実に下がるわけでございまして、加入を維持することができると思っております。
 一筆方式を廃止いたしましても、他の方式の中で、簡単な査定で一定の場合に一筆ごとの損害を補償する一筆半損特例、これを設けることとしておりまして、より安い事務負担や掛金で一筆方式とほぼ同等のメリットを感じていただけるものというように考えております。
 こうした制度、仕組みを構築させていただくことによりまして、水稲共済の無事戻しと一筆方式を廃止しまして、なおかつ任意加入制度に移行させていただきましても、加入者数は大幅に減少することはないというように考えるところでございます。

○斉藤(和)委員 きのう、参考人質疑の中で、鈴木宣弘先生がこう指摘されていました。農業共済の農地一筆ごとに損害を評価する方式は維持しつつ、人手不足にはドローンによる調査で代替するといった農家へのサービスを低下させない方向性を追求すべきだと。つまり、人手不足だというのであれば、最新の技術を使って、農家の皆さんの損害になるようなことは、低下になるようなことはやるべきではないという指摘は、私は当然だというふうに思うんです。
 一筆で、五割でもほぼ同等のメリットがあるというふうに大臣はおっしゃられたんですけれども、現場の農家の感覚は、三割と五割というのは大きく違うわけですね。ここは本当に、現場の感覚に合う制度としてやはりしっかりと見ていく、改めるべきは改めていく、こういうことが必要だろうというふうに思うわけです。
 前回、私は、任意加入に変えることで、農業共済が果たしてきた非常に基礎的な農村社会の基盤をも掘り崩すんじゃないか。支え合いで、みんな当然加入だから、先ほどもありましたけれども、共済部長も選んで、みんなで支えてということをやってきた。そういうことに対して大臣は、農業共済の評価はそのとおりだというふうに言った上で、ただ、時代背景というものを踏まえた形で、新しい仕組み、制度を導入するんだというふうに答弁をされました。
 改めて、農村社会の基盤を掘り崩すということには答弁がございませんでしたので、そういう懸念があるんだけれども、そこに対してどう大臣は認識されているのか、その辺、もう一度お聞きしたいと思います。

○山本(有)国務大臣 我が国におきまして、特に水稲作につきまして、水管理などを共同して行うということ等で伝統的に農村社会の結びつきが形成されてきているというように理解をしております。
 また、これは自助、共助、公助の中で、農村社会というのは、共助、相互扶助が盛んであります。例えば高知県を収入別に、都市、市町村で割ってみまして、一番収入の低い農村地域では逆に生活保護世帯が少ないということは、相互扶助思想が徹底しているからではないかというように分析もされております。
 そんなことを考えたときに、こうした農村社会の結びつき、基盤を大事にしていくということは、これはもう不可欠な農政の基本であろうというように思っております。
 そうした意味で、水稲共済の当然加入制というのは伝統的な農村社会の自発的結びつきを前提としておりまして、法律上の罰則がなくても維持されていたというのが実態でございます。
 法律上、当然加入があるから農村社会の結びつきが維持されるというものではないというように理解しておりまして、他方、現在の農村社会における高齢化、混住化等の状況は、伝統的に形成されました農村社会の結びつきにも影響を及ぼしているわけでございますが、損害評価等の際に農村社会の結びつきや農業者のボランティア活動に過度に依存していた面のある水稲共済、こういったことが将来的にその仕組みの維持ができるかどうか極めて不安に思っているわけでございます。
 今回の改正は、こうした状況を踏まえて、農業者の負担の軽減を図るということが一つ。それから、一筆半損特例の導入等によって従来と同様の補填を確保するということがもう一つでございまして、共済制度の維持を図ることが大事であるということは任意加入でも強制加入でも同様でございます。
 今回の改正が、農村社会の基盤を崩すというのではなく、家計を維持するということにおいて、農村社会がより基盤が安定するというように考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 農村社会の基盤がより強固なものになっていく、そういう方向にならなければならないというふうに思っています。
 ただ、当然加入だからこそ、私は、農家の結びつき、基盤があった、ある意味、扇のかなめだったと思うんです。確かに、自発的な農村の結びつきもありますけれども、そのきっかけをつくっていたのは当然加入だと。水管理の話もありましたけれども、みんなが入っているから水管理もみんなでやろうというふうになるわけですよ。それがばらばらになるというところに私は非常に危機感を持つし、そうならないようにやはり共済制度を維持することが大事だと。今大臣おっしゃられたとおり、共済制度に任意加入だとしても入っていようと思うようなものにやはりしていかないといけないと改めて強調したいというふうに思います。
 ちょっとこだわるんですけれども、もし万が一、この任意加入に移行をして加入者が、減少するということはあってはならないと思いますけれども、なった場合、共済組合の経営が立ち行かなくなった、そうなった場合、事業が成り立たない、そういった事態になったときに政府はどういうような責任をとるというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 任意加入にいたしましても、制度設計上、加入者が激減するということは想定はしておりませんが、国としても、公庫資金あるいは経営体育成支援事業等、経営発展を目的とした融資あるいは補助事業の採択に当たりまして農業共済等への加入の働きかけを行うなどして、まず加入促進を努力させていただき、万々が一の場合には、そうした団体等の支援に対する事業等あるいは融資等を駆使してまいりたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 万々々が一にならないようにと思いますけれども、その場合は支援もするし融資もするというようなことが検討として考えられるという御答弁がありました。
 共済制度をしっかりと支えていく、これは本当に農村社会の基盤であるというふうに私も思いますので、ぜひ、立ち行かないことがないようにしていただきたいというふうに思います。
 次に、畜産農家の家畜共済についてちょっと質問をいたします。
 家畜農家は収入保険には加入できないわけで、引き続き家畜共済になるわけです。しかし、今回の改正で、この家畜共済も診療費に自己負担を導入するということが盛り込まれています。現在、家畜共済の診療費は、初診料は自己負担だけれども、初診料以外の診療費は共済金で全額補償されています。しかし、この自己負担を今後は政省令で決めることができて、農水省の一存で負担の割合も変えることができるというふうなことになります。
 今、人間、私たちの健康保険は三割自己負担になっておりますけれども、将来、家畜の診療費も負担割合を上げて、現在の健康保険同様に三割負担となるようなことが決してあってはならないと思いますけれども、そんなことは考えていらっしゃらないのかどうなのか、お答えください。

○山本(有)国務大臣 全く考えておりません。
 病傷事故に対する共済金につきまして、現行では、初診料は満額、一〇〇%自己負担、それ以外の診療費は共済金で補償している、これはゼロ負担ということでございますが、診療回数の縮減につながるよう、また、アニマルウエルフェアの観点からしても、初診料を含む診療費全体の一割を自己負担とすることが賢明ではないかというように思っております。
 この一割という比率は、現行の自己負担総額と同水準となるだろうと予測しておりますし、全国ベースで診療費総額に対する初診料の割合より算出したものでもございます。
 このように、毎回の診療費に一割の自己負担を導入する狙いは診療回数の縮減に当たるということになると考えておりまして、大きな事情の変化がない限り、この割合を変更するということは全く考えておりません。
 なお、制度の適正な運用を確保する観点から、食料・農業・農村政策審議会農業共済部会におきまして掛金率を審議する際には、自己負担割合の事情の変化があるかどうかについてもあわせて審議をいただくことにさせていただきたいというように考えております。

○斉藤(和)委員 全く考えていないと。こんなことになれば、自己負担が上がれば畜産農家には大打撃になるので、絶対にあってはならないと思います。
 一つ気になるのは、診療回数の縮減、そのためだと。でも、私、これは非常に問題だと思うんです。
 農水省の資料にも、「人間の病傷について保険給付を行う健康保険では、初診料を含めた診療費全体に定率(原則三割)の自己負担を設けることにより、診療費の抑制が図られている。」というふうに書かれています。でも、人間は口があってしゃべれます。しかし、家畜は自分の意思表示ができません。そういう微妙な変化を農家の方たちは見て、これは必要だと診察を受けるわけですね。
 でも、診療回数の抑制だとか診療費の抑制というのを家畜に与えること自体が、私は、家畜の衛生に対する考え方がどうなのか、初診料を払えばどんな場合でも診療費無料で受けられますよ、これが家畜衛生をつかさどる国の責任じゃないかと思うんですけれども、大臣、もう一度、いかがですか。

○山本(有)国務大臣 初診料が人間の健康保険と違いまして一〇〇%自己負担でございますので、逆に、診療抑制に初診料自体がなっている可能性もあります。また、一度一度、全て一割負担ということになりますと、多少畜産経営者に負担がかかるわけでございまして、負担がかかるよりは、日ごろしっかりと家畜に対する健康維持というものの努力をしていただけるのではないかというように思っております。
 そんな意味におきまして、試みとして、国の負担や共済の負担については同じでございますので、そうした新しい制度、仕組みを導入して、そしてしっかりとした畜産経営ができるようにフォローをしていきたいというようなことが趣旨でございます。

○斉藤(和)委員 初診料をちなみにお聞きしましたら千二百円ということですので、初診料が受診抑制になっているというふうには余り考えられないわけですので、やはり負担感を畜産農家が感じないように、一割負担になったとしても、これは私は変えるべきだというふうに思いますけれども、絶対畜産農家に負担にならないように、受診抑制が起こらないようにしていただきたいというふうに思います。
 きのうの参考人質疑でも、先ほど質疑の中でもありましたけれども、収入を下支えする岩盤の制度、これが重要だというふうに指摘がありました。アメリカでも、収入保険だけではなくて、農業経営安定を実現していくためには、収入補償、不足払い、収入保険の三層構造になって農業経営を安定させている。
 大臣の認識をお伺いしますけれども、収入保険のみで農業所得の確保は実現できるというふうにお考えでしょうか。

○山本(有)国務大臣 繰り返しになりますけれども、農業の成長産業化を図ること、農業所得を向上させていくこと、あるいは担い手への農地の集積、そして需要に応じた新規作物の生産、六次産業化など高付加価値化というような、そういう方向性を現在の農政は持っております。前向きな政策を組み合わせて積極的に講ずることということが農業経営に求められていることでございまして、農業者のチャレンジを促進するという意味が今回大事なものであろうというように思っております。
 こういう中で、収入保険制度というのは、経営規模を拡大したり新たな品目の生産などにチャレンジする、こういう意欲的な農業者のセーフティーネットになるわけでございまして、その仕組み上も、農業者の収入が増加傾向にある場合はこれらの収入の増加を補填の基準となる金額に反映できるわけでございまして、去年よりもことし、ことしよりも来年というように、所得を向上させていく上において一つのインセンティブになるだろうというように思っておりますので、新たなこの収入保険制度で私どもの農政が積極的なものになってくれるということを念願するところでございます。
 農業所得を確保という意味では、ある程度、しっかりとした制度、仕組みでございますので、確保はこの補填割合だけできるというように考えているわけでございます。

○斉藤(和)委員 確保はできると。
 しかし、米価がずっと下がっていけば、その所得、補償される額も下がっていくということですから、農業所得が確保できるのかというところは、やはりしっかりと岩盤、価格補償なり再生産を補償する、そういう仕組みがないとだめだと思うんです。
 しかし、戸別所得補償制度は二〇一六年に廃止をし、米の生産調整も二〇一八年、来年廃止をし、十アール当たりの七千五百円の支給の直接支払交付金も廃止をする。
 だから、本当に、岩盤があったものがなくなった上で後は頑張ってくださいというふうになるわけで、参考人の方も底なし沼だというふうにおっしゃっていましたけれども、やはり、米の生産調整の廃止によって米価の大幅な下落を前提に制度設計したのか、きのうの参考人質疑でも疑問が出されましたが、生産調整の廃止による米価の下落に今回の収入保険が対応しているというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 戸別所得補償制度における米の直接支払交付金というものは、全ての販売農家を対象としておりまして、恒常的に一定の給付を補償する仕組みでございます。こういう制度のもとに農業経営しますと、農地の流動化のペースがおくれるわけでございまして、また、農業者による前向きなチャレンジというものへの促進につながらないわけでございますので、この戸別所得補償を廃止したわけでございますけれども、収入保険とリンクさせて考えているというわけではございません。

○斉藤(和)委員 リンクしているわけではないと。しかし、やはり岩盤がなければどんどん底なし沼のように補償される額が下がっていくというのはよく受けとめていただきたいというふうに思います。
 そもそも、この収入保険、当然加入制の撤廃は、二〇〇七年に経済同友会の規制改革委員会副委員長が提案をし、無事戻しの見直しについても、二〇一六年十一月の行政改革推進会議の特別会計に関する検討の結果の取りまとめというところで、無事戻しや家畜共済の再保険の支払い方式の見直しについて検討していく必要があると。
 結局、農業者の要求というよりは、財界や行政改革、規制改革の要求に基づいて今回の改正があると言っても過言ではないと思います。
 この改正で最も困るのは、生産現場です。先ほどもありましたけれども、組合と組合員の間をつなぐパイプ役を果たしている共済部長が大変な思いをされると非常に懸念をしています。
 大臣、そういう思いをさせないようにする必要があると思いますが、いかがですか。

○山本(有)国務大臣 今回の農業災害補償法の改正内容でございますが、現場の農業者に十分理解していただけるように周知していくことがまず重要でございます。
 今回の見直しの内容というものは、収入保険制度の導入など、多岐にわたることになるわけでございまして、農業者に対する周知は、共済事業に精通している農業共済団体の役職員が中心となって行うということが重要でございますので、お願いをさせていただいているところでございます。
 役職員だけでは農業者への説明が十分に行えないことも想定されておりますので、集落の農業者の代表である共済連絡員に対しても、改正内容を丁寧に説明し、共済連絡員の協力をいただきながら改正内容の周知を図っていきたいというように考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 農業者の決して不利益になってはならないということを最後に強調して、質問を終わります。
 ありがとうございました。