193-衆-農林水産委員会-9号 平成29年04月20日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
土地改良法等の一部を改正する法律案について質問をします。
そもそも、土地改良は農業者の私的財産に影響を及ぼし負担を強いる、だからこそ、地域の話し合いと合意形成をつくり、農業者の申請と同意を基本要件として進められてきたという原則があると思います。
本法案は、農地中間管理機構が借り入れた農地について、農業者の申請がなくても、都道府県が独自の判断で、合意をとらない、それから費用負担もなく基盤整備ができるとしています。つまり、費用負担を求めないことで、なかなか目標が達成されていない中間管理機構を通じた集積を推進しようというふうにも見えるわけです。
そこで、中間管理機構の現状について少しお聞きします。
機構は、本来、出し手から土地を借り受け、一定のまとまりをつくって意欲ある担い手に貸し出すという仕組みになっています。しかし、二〇一五年度の実績を見ると、目標が十四万ヘクタールに対して実績は約八万ヘクタールと、目標の六割にとどまっていて、担い手に八割というところにいくと、目標になかなか達していないという現状があります。
こういう状況、なかなか思うように進んでいない、この原因を大臣はどのように捉えていらっしゃるでしょうか。
○山本(有)国務大臣 この要因でございますが、農地中間管理機構についての出し手、この出し手へのPRが十分に行き渡っていなかったということ、それから、中山間地域あるいは果樹産地、ここにおいて、平場の土地利用型農業の地域と比べて担い手への農地集積がかなりおくれているという状況にあること、現場の機運を盛り上げるための農地中間管理機構と土地改良区などの関係機関との連携がいまだ十分でないという地域があるというような問題点があるためではないかと思います。
こうした課題の分析に基づきまして、今後ですけれども、都市部の住民を含めた農地の出し手への農地中間管理機構の一層のPR、あるいは優良事例の横展開などによる中山間地域での取り組みの推進や果樹産地における産地協議会と機構の連携による集積と改植の一体的推進をする、あるいは役職員体制の整備、そして地域の農業者の徹底した話し合いの推進、さらには農地整備事業との連携強化、こうした取り組みをすることによって理解を得て目標に達することができるのではないかというように考えるところでございます。
○斉藤(和)委員 二〇一五年の三月末で、農地中間管理機構の全体の集積率は五〇・三%と出ています。このトップが北海道の八七・六%、このほかの県の、北海道を除く県を見ると、平均は三三・五一%という現実があるわけです。
PRがとか、いろいろ地域の話し合いとか連携がというお話があったんですけれども、二〇一五年度の実績にある八万ヘクタールも、担い手同士の交換だったりだとか、利用権設定を解除して機構に出し直す、いわゆるつけかえ、こういう数字も含まれていて、こうしたものを除くと集積面積は二万六千七百十五ヘクタールとさらに小さくなるわけです。
現場で話を聞きますと、やはり耕作するのが大変だ、誰かにやってほしいという話は幾らでもある意味出てくるわけですよね、米価も下がっていますし。しかし、今中山間地や果樹というお話がありましたけれども、特に条件が不利な農地というのは、農地中間管理機構に出しても預かってくれない、返される、仮に受け取ってくれても借り手がつかなければ返ってきてしまう、こういうことを聞くわけですけれども、こうした実態を大臣は認識されているでしょうか。
○山本(有)国務大臣 そもそも条件不利地域等で、担い手がまずいないわけでございますし、農地の条件が悪いということから、結果として、借り受け条件に合わない、そして、農地中間管理機構が農地を借り受けることができない場合、ほったらかしになっていくというような現状、これは私も憂慮しております。
このため、機構が地域外を含めて農地の受け手の掘り起こしを行うということが必要でございますし、中山間地域の農業ルネッサンス事業などの支援によって地域農業の活性化措置を講じていく、そういう車の両輪が必要だろうというように思います。
現時点で機構が出し手に返却した農地は今のところありませんので、農地中間管理機構の機能や将来のあり方を考えたときに、集積は御理解をいただければ進んでいくものというように思っております。
○斉藤(和)委員 担い手じゃなきゃいけないのかという問題があると思うんですよね。やはり、一定の規模がなければ担い手にならないわけで、中山間地では、四ヘクタールの規模というのを一気に引き受けるというのは、なかなかそれはそれで大変なわけで、この辺はちょっと、担い手にという、農業をやりたい人は全て担い手、そういう私は意味づけをしていかないとなかなか難しいんではないかなというふうにも考えるわけですが、それはちょっとおいておきまして、この法案によって、要は自己負担なく基盤整備ができる、こういうことによって、なかなかうまくいっていない中山間地などの条件不利地、中山間地だけじゃないですけれども、条件不利地でも、借り上げて、基盤整備を進めて、そうすれば集積が進むというふうに大臣はお考えなんでしょうか。
○山本(有)国務大臣 農地の条件が悪いことによって担い手が農地を借り受けない場合、これが多いわけでございますが、このために、現在御審議いただいている土地改良法の改正案で、機構が借り受けている農地につきまして、当該農地が一定規模以上のまとまりのある農地であることなどを要件といたしまして、農業者の負担なしに基盤整備を実施できる制度、これを創設していただくわけでございます。
このような農地の条件が整備された暁には、機構が地域外も含め適切な担い手を見つけ出すことが容易となって、担い手への円滑な農地集積が可能というようになると考えるのでございますが、それは地域地域でさまざまな条件やさまざまな要因があるというように思っておりますので、これにつきましては、その地域の市町村長さんあるいは土地改良区の皆さんの御意見等、そういったものを踏まえてさらに進化していくことができればというように思っております。
○斉藤(和)委員 一定の規模の要件を満たせば、土地改良、自己負担なくという話だったんですけれども、やはり実際問題として、条件不利地で、担い手もいなくて、中間管理機構も借りてくれずに返してしまっているというところが、本当にこの法律によって前進していくのかというところは、ちょっと実情からいってなかなか厳しい部分があるのではないかなというふうに私は率直に思っております。
同時に、機構が借り受けた農地に限って費用負担を求めずに基盤整備をする、その際に、この事業を受けるためには要件が必要だ。それは、今大臣がおっしゃったとおり、「機構が借り受けている農地で、かつ、一定規模以上の面的まとまりがあるものが対象であること」というふうにされているわけですが、この一定規模というのは一体何ヘクタールを想定していて、平地と条件不利地でどれぐらいにするというふうに考え、要件を決めようとしているのか。それ以外にも、機構の借入期間が相当程度であるとか、担い手への農用地の集団化が相当程度であるとか、収益性が相当程度向上など、一定規模以外にも要件が幾つかあるんですけれども、これは具体的にどのような中身になるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
面積要件でございますが、現行の都道府県営の圃場整備事業につきましては、各団地の農地面積の合計が平場で二十ヘクタール以上、中山間地域で十ヘクタール以上あることを採択要件としております。
今回の機構関連事業でございますが、農地中間管理機構が借り受けています農地について、担い手が経営しやすくなるように、一定規模以上の面的なまとまりのある農地を対象に実施することとしております。したがいまして、面積要件につきましては、先ほど申し上げました、平場で二十ヘクタール、中山間地域で十ヘクタールという現行の要件よりも引き下げる方向で検討していく考えでございます。
いずれにいたしましても、面積要件につきましては、地域の実情、担い手の経営状況、意向などを踏まえながら、今後詰めてまいりたいと考えてございます。
また、委員御指摘の面積要件以外の要件でございますが、これらの要件につきましても、現在鋭意検討している最中でございます。それぞれの要件を設けた趣旨等も十分に踏まえながら、今後、早急に詰めてまいりたいというふうに考えてございます。
○斉藤(和)委員 一定規模、現行のものよりも引き下げるということだったんですけれども、やはり法律をつくる上で、このぐらいの要件のところはこの法律が適用されますよというのがわかるようにしていかないと、自分たちの地区が対象になるのかどうかわからないというのは、ちょっと私はどうなのかなというふうに感じます。
次に、条件のいいところというのは、やはり機構を通さなくても、既に相対で、自分たちのやりとりだとか地域センターなんかを通じて貸し借りしている。やはり、要望の強い中山間地では機構が農地を受けてくれない。そういう状況にある中で、そもそもこの中間管理機構を通さないとというところにあえて持っていく必要があるのかというふうに思うわけです。
農家の実情や実態、地域の現状に合わせてというお話が先ほど来出ているとおり、やはり地域の集落の皆さんや、そこで暮らしている、そして農業をやっている、そういう皆さん方の話し合いと合意形成、そして自主的な話し合いの積み重ねの中で、この地域をどうしていこうか、何をつくっていこうか、そういう人と農地プランというのがずっとつくられてきていて、面的なまとまりがなければ、費用負担なしで、機構を通さなくても基盤整備できる、そういう仕組みをつくることこそが必要ではないかというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
委員御提案の人・農地プランでございますけれども、この人・農地プランは、地域の関係者の話し合いを行いまして、地域農業を支える担い手は誰になるのか、担い手にどうやって農地の利用集積を進めるのか等々の問題を解決する、いわば設計図のようなものであると考えております。農地中間管理機構の活動や今回の機構関連事業に当たって、この人・農地プランというのは重視すべきものというふうに考えてございます。
しかしながら、人・農地プランは、必ずしも機構を介するものではございません。農地の出し手、受け手の相対協議による取り組みもございますが、この場合、農地の利用の分散の解消にはつながりにくいといった側面もあるのではないかと考えてございます。
農地中間管理機構は、このような問題を解消して、地域全体で担い手へまとまった形で農地を貸し付ける仕組みとして整備したものでございますので、この機構による担い手への農地の集積、集約を加速化するために、今般、機構関連事業を創設したいと考えているところでございますので、この機構関連事業を活用することが適当ではないかというふうに考えてございます。
○斉藤(和)委員 分散が解消しない側面があるというんですけれども、その側面にはやはり地域の都合があって、その地域の実情や、そこに暮らしている農家の皆さんの思いがあるから、そういう集積が簡単にいかない。
逆に言えば、農地中間管理機構に出しているところでも、人・農地プランでこういう集積しましょうねというところで中間管理機構に出しているというところもあるわけで、やはり、単純に機構に任せれば分散が解消するという見方は、本当にそれが実情に合っているのだろうかということは、少し、ちょっと指摘をさせていただきたいというふうに思います。
そもそも、なぜ、中山間地で農家になる人がいない、耕作放棄地がふえる、こういう状態になっているのかといえば、やはり根本に農政の問題が私はあるというふうに思っています。
農業競争力強化プログラムの参考人質疑でも、参考人から、日本で農業所得に占める補助金の割合は三〇%台、スイスでは一〇〇%、イギリスでは九一%、フランスでは九五%、ほとんど農業所得の全部が補助金で賄われている、アメリカでも、農家にとって必要な最低限の所得が確保されるように、それに見合う価格水準を下回ったら政策を発動させる、こういう仕組みもあるんだという指摘がされました。
しかし、日本では、こうした戸別所得補償も平成三十年度には廃止をされる、減反政策も廃止をする。今後どうなっていくのかという先行きの不透明感だけではなくて、米価は下がることはあっても上がることはないんじゃないかというのが農家の皆さんの思いなわけですよね。
そうした状況の中で、よし、担い手として自分は頑張るぞというふうに思えるのか。そもそも、息子に農業を継げとは言えないという実態があるわけですよね。私、現場で聞くのは、米価が二万円とは言わないが、せめて生産費が賄えるものがあれば今の問題というのは大体解決していくんじゃないかという声も聞くわけですよ。
欧米では当たり前のようになっている所得補償、せめて政府が責任を持って再生産可能な価格を下支えするということを今真剣に考えていかないと、やはりこの先、本当に持続可能な農業というのはなかなか見通せないというふうに考えるわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○山本(有)国務大臣 米の農家への支援のお話でございますが、まず、諸外国からの話として、十分な国境措置が現在ございますし、生産条件の格差から生じる不利は、米に限って言えば余りない。そして、農地の流動化のペースをおくらせる、そういうマイナス面もございます。
そうした意味で、政策的課題を踏まえて、米の直接支払交付金、二十九年産までの措置としたわけでございますし、三十年産を目途に、行政による生産数量の配分に頼らずとも、生産者みずからの経営判断によって需要に応じた生産が行われるようにする。その実績が米の価格に反映されて、今のところやや上がり基調でございます。
その上で、農地中間管理機構による担い手への農地集積、あるいは需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興、こういったことを図ることによって、強い農業の実現に向け、前向きな政策を強化しているところでございます。
そうした意味で、我々としましては、農地集積等によるコスト削減に加えて、農業競争力強化プログラムに基づいて、生産資材価格の引き下げ、流通、加工の構造改革などを推進していくということでございます。
農林水産省としましては、これらを通じて、農業者が意欲を持って安心して需要に応じた生産に取り組んでいただいて、農業の競争力強化と農業者の所得向上を図り得るというように考えております。価格の下支えということは、今のところ、米だけに限ってするということの考えは持っておりません。
○斉藤(和)委員 世界では、農業の再生産可能なように国が責任を負っているというのが流れだ、そこに日本も踏み出していく、それがやはり、意欲を持って農業をやろうという人、担い手をつくっていく一番の近道だし、確実な持続可能な農業の発展につながるということをちょっと指摘しておきます。
本法案は、申請、同意不要という点が幾つかあるわけです。
政府が、二〇一四年四月の食料・農業・農村政策審議会において、農業生産の基盤の整備に関する資料というのを配付しています。それを見ますと、この中で、政府は、中間管理機構との連携によって集積、経営規模の拡大、大区画化、水管理の省力化を進めるという戦略を立てて、大規模経営体と土地持ち非農家への二極化が進む過程で、集落による農地や水の管理、土地改良区の組織運営、土地改良事業の実施等のさまざまな局面において新たな事態が生じる可能性があるというふうに言っています。そうした状況の中で、小規模農家等の無関心化、賦課金徴収の困難化、組合員間の意思の隔たりについて、課題の解消に向けた施策のあり方を検討していくというふうに書いてあるんですね。
この課題の解消というのは何なのかというところにいくわけですけれども、例えば、先ほども質問の中でありましたが、現在は換地は申請、同意が前提となっています。しかし、今回さまざまな部門で同意の要件を緩和しているわけですけれども、今後こうした換地についても申請や同意がなくてもできるような仕組みをつくっていく、そういう考えはないということでよろしいでしょうか。
○山本(有)国務大臣 そういう考え方はありません。
換地計画に基づく換地処分と申しますのは、工事前の土地、従前地と、工事後の土地、換地に係る個々の権利関係の変動、すなわち財産権の変動でございます。その実施に際しましては、個々の権利者の同意、不同意が必要でございます。
その意味において、土地改良事業である機構の関連事業、この管理権の処分と所有権の処分とでは全然、全く意味が違います。その意味で、今後ともこの考え方に変わりはありません。
○斉藤(和)委員 換地はあくまでも同意をとってやるんだ、所有権の管理に勝手に踏み込むことはないということです。それは当然だというふうに思います。
次に、ため池について申請、同意が不要というふうになっているわけですけれども、確かに、ため池の耐震化は喫緊の課題であって、申請を待っていては進まないというのはわかるんですが、これも、二〇一六年四月十五日に経済財政諮問会議における経済・財政一体改革推進委員会社会資本整備等ワーキング・グループの提出資料で、ため池を廃止することとあわせて、排水路の拡幅だとか、連結の水路を整備するというようなことが挙げられています。耐震化のもとにこうした整備事業を一体で進めるということが想定されているのかどうか。
ちょっと、時間が来たので次の問題も含めてやりますが、土地改良の施設の更新で、機能向上というのが挙げられています。先ほども、ICTで機能向上をさせると。これは、水利システムの構造転換を図る、機能向上だけではなくて、もっと大がかりな更新事業にも適用していくということはあり得るのかということ。そうなると、総会の議決もなくて同意もないままに、気づいたら賦課金だけが上がってしまった、そういうようなことになり得るのではないかという危惧があるんですけれども、そういう同意がないもとで賦課金が上がる、農家負担がふえるということはないということでよろしいでしょうか。
○佐藤政府参考人 一点目のため池の耐震化事業の話でございますが、ため池の耐震事業を単独でやるか、それとも、委員御指摘のとおり、ため池の耐震化事業とあわせて用排水施設の統廃合を行うか、これは現場の判断といいますか、受益者の皆様方の判断ということになろうかと思います。
一般的に申し上げますと、ため池自体の耐震化事業につきましては、非農家も含めた地域全体の安全確保に資するものであるといったことから、現在、国や地方の費用負担割合を示したガイドラインにおきまして、農業者の負担を求めていないという実態にございます。
一方で、耐震化事業とあわせて農業用用排水施設の統廃合を行う場合には、農家にとっても効率的な水利用が可能になるという意味で農業者としての利益がふえるということになりますので、その部分に関する費用の一部については農業者の負担が求められるということになります。
いずれにしても、地域の選択というふうに考えてございます。
次に、更新事業を行った場合に、賦課金が知らない間に上がってしまうのではないかということでございますが、今回、機能向上を伴うものであっても、三分の二の同意にかえて総会の議決で実施できるようにするという際には、管理事業計画の同一性、それと組合員負担の相当性という要件を満たす必要がございます。
委員の御質問は、組合員負担の相当性ということでございます。これはどういう意味かといいますと、更新事業を行った場合の組合員の賦課金が、更新事業を行わなかった場合の組合員の賦課金を上回らないということでございます。
したがいまして、更新事業を行って組合員の賦課金が上昇して、それが更新事業を行わなかった場合の賦課金を上回る場合には、これは要件を満たしたことにはなりませんので、その場合はきちんと三分の二の同意を得る必要があるということでございます。
○斉藤(和)委員 ありがとうございました。終わります。