189-衆-農林水産委員会-14号 平成27年06月04日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。よろしくお願いいたします。
農業委員会法の改正問題について質問をいたします。
農業委員会法の改正を進めてきたのは、二〇一三年一月に設置された、住友商事相談役岡氏が議長を務める規制改革会議でした。
第一回の規制改革会議で安倍総理は、規制改革は安倍内閣の一丁目一番地と強調をし、二〇一三年の九月十九日の規制改革会議で、農地中間管理機構の創設に関する規制改革会議の意見を取りまとめ、その中で、「今後の課題について」として、「下記に掲げる事項をはじめとする抜本的な改革に早急に取り組む必要がある。」として、このように書いています。「(一)農業委員会の在り方 今回の新制度において、農業委員会の法的な関与は求めないこととする一方、そもそも農地制度における農業委員会の果たすべき機能及び組織の在り方について、早急に検討を開始すべきである。」としています。
この日の規制改革会議では稲田大臣が、私はやはりここの今後の課題の中の農地法そのものが一体どうなのか、農業委員会のあり方とか農協のあり方もそうなんですけれども、農地法自体、それはどうなんでしょうか、今、戦後のそれこそ総理がおっしゃっている戦後レジームの中でできているこの農地法が機能しているんですかという根本的なところをぜひ検討していただきたいと話されています。
もともと、農業委員会からは改正をしてほしいという要望は出ていません。逆に、反対の声の方が充満している。
このもとで、安倍政権によるこの改正というのは、安倍政権が進めている戦後レジームからの脱却、この一環としての農業委員会法の改正だと理解してよろしいでしょうか。
○林国務大臣 安倍内閣においては、農業を成長産業として地方創生の核としていくために、農林水産業・地域の活力創造プラン、これをつくりまして、農政改革を進めてきたところでございます。
農政改革が、時代の変化、環境の変化に応じて成果を上げていくためには、政策面の見直しに加えて、政策を活用する経済主体等が積極的に活動できる環境を整えていく、これが必要不可欠でありまして、今回の農業委員会改革もその一環として行っているものであります。
平成二十五年十二月に、先ほど申し上げました農林水産業・地域の活力創造プランを決めさせていただいておりますが、実はここに、農業の成長産業化のための施策を定めるとともに、農業委員会についても翌年六月に向けて見直しの議論を進める、これが既にそこに明記をされております。
その後、政府・与党で議論が進められて、昨年六月に与党取りまとめであるとか、それから日本再興戦略ということが決まっておりますが、そこで農業委員会の改革の方向性が示されて、これらを踏まえて、ことしの年初だったと思いますけれども、さらに検討を加えて、今回の法案を提出したということでございます。
今御指摘の規制改革会議でございますが、昨年五月に意見というものが出ておりますが、ここは内閣総理大臣の諮問機関でございますので、内閣総理大臣に直接諮問に応じて答申を出すということの性格でございますので、今回の法案を見ていただくとわかりますように、先ほど申し上げた経緯で法案はつくっておりますので、規制改革会議の意見とは、この法案は異なっているところもある、こういうことでございます。
○斉藤(和)委員 ところもあるということなんですけれども、ちょっと先に、先ほど言った二〇一三年の九月十九日の規制改革会議、その二カ月後、十一月二十七日の規制改革会議で今後の農業改革の方向性についてというのが決められます。
そこで、「農地の権利移動に係る許可や農地転用に係る意見具申、農地の適正利用の監視・監督に係る措置といった農業委員会の業務における重点の見直しを図るとともに、委員の構成や選挙・選任方法、事務局体制の整備等についての見直しを図るべきである。」というふうに、今回の改正の大筋が明記をされています。
この日の規制改革会議で岡議長が、総理を含めた関係者の農業改革をしなければいけないという意識は大変強いものがあると私自身も認識しておりますので、ぜひ我々規制改革会議でも、今、金丸座長からも御指摘がありました、農業委員会なり、あるいは生産法人の資格要件、農協問題について、目指すべき農業にとっての阻害要因は大いに変えていこうと、これから積極的に取り組んでいきたいと思いますというふうに言われています。
まさに総理の、諮問機関と言われましたけれども、意向に沿うように、今回の農業委員会法の改正を進めるというふうに明らかにしています。
そして、その規制改革会議は、六カ月後の二〇一四年、昨年の五月二十二日に、先ほどありました農業改革に関する意見を取りまとめ、そこで今回の農業委員会法の改正の詳細な事項と方向性が打ち出された。
林大臣が、その三日前の五月十九日、林大臣自身も出席されていた産業競争力会議課題別会合が開かれ、そこで農業改革に関する意見が説明をされて、それに対して林大臣は、問題意識は共通する、規制改革会議の意見については、稲田大臣と協力してしっかりとまとめていきたいと、規制改革会議の意見を法制化することを表明しています。
しかも、この会議に出席していた安倍総理も林大臣に対して、林農林水産大臣には、今が農政転換のラストチャンスとの認識のもと、以上の改革について、官房長官と調整して実行していただきたいというふうに指示を出されています。
林大臣、今回の農業委員会法の改正というのは、まさに安倍総理の意向を受けた規制改革会議が取りまとめた意見を法制化、違う点もあると言いましたけれども、やはりこの意向を本当に受けて法制化したものだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 もちろん、内閣でございますから、最終的には総理のリーダーシップのもとで内閣として一体である、これがまずあるわけでございます。
地域の活力創造本部で農林水産業・地域の活力創造プランを決めさせていただいた、こういうふうに申し上げましたが、その活力創造本部の本部長は総理でございます。したがって、産業競争力会議ですとか規制改革会議、またこの活力創造本部がいろいろな議論をして、そして最終的に、政府全体としては、当然でございますが、法案の決定というのは閣議決定でございますので、総理の責任のもとで最終的に政府として行うということでございます。
私が申し上げておりますのは、規制改革会議はあくまで諮問機関であるので、諮問機関である規制改革会議の意見を受けて総理がどういう御指示をされるかということは、これは、規制改革会議は諮問機関としての役割をそこまで果たした上で総理の御判断ということになるわけでございます。
今、多分議事録だと思いますが御披露いただきましたけれども、総理の指示ということでその場で出たわけでございますので、私は、規制改革会議の意見をそのまま全部法案化するというふうに申し上げたつもりはございませんが、総理の指示として受けとめて、しっかりとそれをまとめていく、官房長官がこの調整に当たるということでありましたから、しっかりと政府部内でまとめて、そして法案化をした、こういうことでございます。
規制改革会議の意見は、例えば、農業委員の過半数を認定農業者とする、こういうことはございませんし、また、あらかじめ地域から推薦を求め、募集を行う、こういうことも入ってございませんが、法案では入っております。
また、農業委員会をサポートするネットワーク機構として指定法人に都道府県農業会議や全国農業会議所がなっていくということも、規制改革会議の意見では、こういうところは廃止するというふうになっておりますので、そのまま規制改革会議の意見が法案になったということではないということでございます。
○斉藤(和)委員 規制改革会議がそのままではないというのは、ただやはり、総理の意向に基づいて改革を進めるといった内容であるということには私は変わりがないというふうに思います。
しかも、一番の根幹である公選制というところは、この会議の中でも非常に追求されていた問題で、その核は残っているわけでありまして、そうしたことからいっても、この規制改革会議の影響力というのは非常に大きく受けているというふうに捉えられると思います。
先ほど、二〇一四年五月十九日の産業競争力会議で安倍総理は、地域の農業の担い手の経験と企業の知見が結合し、農地が最大限有効に活用されて、力強い農業活動が展開されるように制度改革を進めていきたい、このため、農業委員会の見直し、農地を所有できる法人の要件見直しについて具体化を図っていきたいと述べています。
また、同じ会議で、産業競争力会議の農業分科会主査でローソン代表取締役の新浪さんは、意欲ある農業の担い手と企業の英知と人材を総動員した農業の産業競争力を強化することが改訂成長戦略の核であるとしています。
農業改革に関する意見でも、既存農業者や新規参入者、農業団体や企業などの意欲ある主体が、地域や市町村の範囲を超えて精力的な事業展開を図るなど、新しい道を積極果敢に切り開いていく必要があるというふうにしているわけです。
これらに共通するキーワードというのは、担い手と企業だというふうに読めます。
これからやっていく農業の成長戦略化、この推進役はまさに担い手と企業である、この考え方に間違いありませんでしょうか。
○林国務大臣 それは、新浪当時座長でしょうか、がおっしゃったことというふうに御紹介いただいたということだと思いますけれども、我々としては、農業基本法とか基本計画に基づいて、担い手を中心とした方々が農業の大半を占める構造を確立していく、これは法律で定められて、基本計画で追求すべき姿ということでございますので、我々としては、その法律や計画に基づいてやっていくということが基本的なスタンスであると考えております。
○斉藤(和)委員 企業ではなくて担い手なんだと。要件緩和も含まれていますので、企業というのがこれから入ってくるだろうということは容易に想像がつくわけです。
そこで、具体的に法改正の中身について質問をいたします。
まず、農業委員会の公選制の廃止についてです。
規制改革会議の農業改革に関する意見では、より実務的に機能する者を選任することができるよう選挙制度を廃止し、選任委員に一元化する、また、制度の中立的で健全な運用を担保するため農業団体などからの推薦制度を廃止する。
さらに、規制改革に関する第二次答申では、現在の農業委員については、名誉職となっているのではないか、兼業農家が多いのではないかなどの指摘がある、したがって、農業委員会の使命を的確に果たすことのできる適切な人物が透明なプロセスを経て確実に委員に就任するようにするため、選挙制度を廃止するとともに、議会推薦、団体推薦による選任制度も廃止するとしています。
今回の公選制の廃止というのは、まさにこうした理由があるのでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○林国務大臣 いろいろなところでいろいろな御意見を賜っておりますので、その一つの御意見であろう、こういうふうに思いますが、二十六年六月、先ほど御紹介いたしました与党の取りまとめというのをいただいておりますけれども、選出方法については、適切な人物が透明なプロセスを経て確実に就任するようにするため、市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に変更し、その際、事前に地域からの推薦、公募等を行えるようにする、こういうものを与党の取りまとめとして示されておるところでございます。
○斉藤(和)委員 ちょっとここでお聞きしたいんですけれども、逆に、では何でこれまで公選制が農業委員会においてとられてきたのか。
衆参両院、私たち議員もそうですが、都道府県、そして市町村議会議員の選挙と同じように、公職選挙法が準用されてこの農業委員の公選制は行われてきました。公選制がとられてきた理由というのは、なぜなんでしょうか。
○林国務大臣 農業委員会は昭和二十六年に各市町村に設置されたものでありますが、農業全般にわたる問題を農業者が自主的に解決していくために、それまであった三つの委員会、すなわち農地解放による農地の売り渡しを行った農地委員会、それから農業者から食糧の供出を行った農業調整委員会、農業者への技術指導を行った農業改良委員会、この三つの委員会を統合してできたというものでございます。
そのときに、母体となった農地委員会それから農業調整委員会が選挙制をとっていたということもありまして、農民の代表である農業委員の選出に当たって選挙制を採用したということであります。
また、ちょっと歴史の勉強になりますが、農林水産省としては、その後、昭和三十一年でございますが、選挙制を廃止して、首長の任命制とする改正法案、これを提出したところですが、当時の野党の反対により選挙制が維持された、こういう経緯もあるそうでございます。
○斉藤(和)委員 要は、農地というのはほかの土地と違って、農地の権利の移動や転用というのは一定の制限がかかっています。そこに介入する、それが農業委員だからこそ、農業者の代表者であり、農業者そもそもに納得してもらえる、そのためにやはり公選制は不可欠だったからこそ、先ほどもありましたけれども、公選制が、廃止を提案されたけれども結局否決をされて、この間ずっと維持されてきたということだと思います。
二〇〇三年の農業委員会に関する懇談会の報告書においても、農業委員会は公選制を基本に制度が構築され、現在その役割を発揮していることなどを踏まえれば、直ちに公選制の見直しを判断し、結論づけることは困難だというふうに指摘をしています。
それを、実務的に機能する者を選任することができるようにするということで廃止するというのは、私は、非常に乱暴な議論ではないかと思うんです。
現在、農業委員は七五%が公選制で、要は選挙によって選ばれています。
無投票が多いといっても、現在の市町村議会選挙でも無投票当選がふえ、現在の与党、自民党や公明党さんの市町村議会も、無投票当選されている方も多くいらっしゃいます。だからといって、議員の権威が損なわれているかといったら、そんなことはないと思うんです。
市町村議会選挙で無投票当選が多くなったからといって市町村長の任命制にしようとしたら、国民世論は大問題になって大変なことになると思うんですが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 地方議会の議員との比較でございますが、地方議会の議員は地方自治の基本を形づくるものでございまして、地方行政をその地方の住民の意思に基づいて行おうという住民自治の原則がありまして、憲法において、住民が直接選挙することが定められております。憲法第九十三条でございます。
これに対しまして、地方公共団体における独立行政委員会は、特定の分野についての専門的な知識が必要、こういった事情から、法律に基づき設置をされております特定の分野の執行機関でございますので、その委員の選出方法はそれぞれの委員会ごとに異なっておりまして、公選制を採用しているのは、現在の農業委員会と海区漁業調整委員会のみでございます。
したがって、どういう仕組みにするかは立法論、こういうことになるわけでございます。
農業委員会の委員の選出方法と地方議会、これは憲法の九十三条に原則が定められております、この選出方法を同じに論ずるのはなかなか難しいものと承知をしております。
○斉藤(和)委員 確かに役割は違います。ただ、住民自治ということと、農民の代表者である、土地との関係で、農民から信頼される人という代表者を自分たちで選ぶ、ここにやはり公選制の大きな位置づけ、意味があったと思うんです。
農業者の代表機関として農業者が自主的に運営する趣旨から、市町村長から独立した執行機関とされ、その指揮監督を受けることはないというふうにされていますけれども、これが、公選制が外されて、農業委員が市町村長の任命制になれば、この独立性さえ奪われることにならないか、そういう懸念があるんですが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、法律でそれぞれ定められておりますので、公選制を採用しておりますのは農業委員会と海区漁業調整委員会のみだ、こういうふうに申し上げましたけれども、それ以外の独立行政委員会において、委員が独立性を欠いているという御指摘は余り聞かないわけでございまして、公選制を採用しているからといって独立性があって、これがなければ独立性がない、こういう議論ではないのではないかというふうに考えております。
○斉藤(和)委員 実は、公選制をやめたのが教育委員会です。一九五六年に教育委員も任命制になりました。これで実は問題も起こっています。
例えば大阪では、橋下徹大阪市長が、府知事時代に、大学時代の友人である方を府立高校の校長に任命し、その後教育長になりますが、パワハラ問題などさまざまなトラブルを起こして大問題になりました。このようなことが起こらないとも言えません。あの池上彰氏も、教育委員会の委員の選出を公選制に戻すべきだと主張をされています。
問題は、先ほど来言われている独立性の問題であって、教育委員会は公選制から任命制に変わったことによって、独自に教育予算案をつくる権限を奪われました。農業委員会の予算も、現在、独自の行政委員会として、時々の市町村財政に左右されずに適正な法令事務を遂行するために、交付金として措置をされています。
これまでも、地方分権改革推進会議の「事務・事業の在り方に関する意見」でこの交付金の一般財源化というのが繰り返し主張されていますが、大臣、行政委員会の独立性を確保するという点で、農業委員会の交付金制度はきちんと堅持されますでしょうか。
○林国務大臣 まず、橋下市長、知事のお話がありましたが、個別の事案についてコメントするのは差し控えたいと思います。せっかく維新の先生方がおられますので、維新の先生方にお答えいただく方が適当か、こういうふうに思っております。
教育委員会以外にも、人事委員会、公平委員会、公安委員会、労働委員会等々、選任を首長さんがやっている例というのはほかにもたくさんございますので、制度的に、こういうところで全て今御指摘のような問題があるということではないのではないかというふうに考えておるところでございます。
それで、農業委員会の交付金でございますが、現行の農業委員会法では、農業委員会の委員の手当、それから職員の人件費については、国の義務的経費ということで農業委員会交付金で措置をしております。
今般の改正では、農業委員会がその主たる使命である農地利用の最適化、これをよりよく果たせるように、合議体としての意思決定を行う農業委員とは別に、農地利用最適化推進委員を新設するなど、体制の強化を行うこととしております。
したがって、今般の改正においては、農業委員会交付金の対象にこの農地利用最適化推進委員も追加をしまして、同交付金の制度については維持することといたしまして、改正後の農業委員会法第二条一項にその旨を明記しておるところでございます。
○斉藤(和)委員 さまざまなものがどんどん公選制でなくなって、任命制にされてきた。しかし、農業委員会はこれまで公選制がとられてきた。そこには私は重い意味があると思うんです。
ちょっと話を進めますが、農業委員会の農業委員は、委員の過半を認定農業者でなければならないとするとともに、農業委員会の事務に関し利害関係を有しない者が含まれるようにしなければならないというふうにされています。
しかし、現在の公選制の農業委員の過半数は専業農家です。もう十分に私はこの要件を満たしていると思うんです。
また、農業委員会の委員の定数を削減するわけですよね。推進委員をつくりますけれども、農業委員自体は半減する。その中に、あえて、利害関係を有しない者を加えるということは、私は逆に農業委員会の機能を弱めることになるのではないかと。
なぜ、あえて、利害関係を有しない者を農業委員会に加えるんでしょうか。
○林国務大臣 農業委員会、今御指摘があったように、農地に関する市町村の独立行政委員会でございまして、農地の権利移動の許可、農地転用許可に関する意見具申等を行っておりますので、公平公正な判断が強く求められるということでございます。
平成二十四年に行ったアンケートによりますと、農業者の約半数が、農業委員会については農業分野以外の人の意見を反映させるべきだ、こういうふうに回答をしておられます。ちなみに、農業者の方は、そういうお答えが五一%、農業以外の人の意見を聞く必要はないは二四・九%ですが、これが、農業委員会事務局になりますと、聞く必要はない四九・一%、もっと聞くべきだが二七と、やはりギャップがあるわけでございます。こういうアンケートでも、農業者の皆さんからそういう意見が出ているということがわかるわけでございます。
したがって、市町村長は、委員の任命に当たって、今御指摘いただいたように、農業委員会の所掌に関する事項に関して利害関係を有しない者が含まれるようにしなければならない、こういう改正をさせていただこうとしたところでございます。
○斉藤(和)委員 そうしますと、農業委員会の事務に関して利害を有しない者というのは、どのような方を想定しているんでしょうか。
○林国務大臣 どういう方ということでございますが、例えば、弁護士、司法書士、行政書士、農業委員会の所掌に属する事項に関し利害関係を有していない会社等の役職員など、かなりいろいろな方が具体例としては挙げられるのではないか、こういうふうに思っております。
○斉藤(和)委員 利害関係を有していないとしても、その先に、農業に関する見識を有し、農地などの利用の最適化の推進に関する事項その他の農業委員会の所掌に属する事項に関しその職務を適切に行える人でなければだめなわけですというふうに書かれています。
弁護士や司法書士、行政書士で、果たしてどれだけ農業に関する見識を有している人がいるのか、非常に疑問に思うわけです。特に、地方で弁護士がいない地域も逆に言えばあるわけです。そもそも、農業に関する見識をどういうふうに判断するのか。
それから、もし、会社などの役員さんになっていただいた、その会社の役員さんが農業委員になった後、その会社が生産法人に出資をして利害関係が生まれてしまった場合、どうなのか。いかがでしょうか。
○林国務大臣 法律には、「委員は、農業に関する識見を有し、」こう書いておるところでございますが、この識見というのは、広辞苑を引きますと、「物事を正しく判断・評価する力。」こういうふうに書いておりますので、いわゆる学識経験とは異なって、その分野に関して特別な知識を求められるものではない、こういうふうに考えております。
したがって、現に農業を営んでいる者のほかに、その地域に長期にわたって住んでおられて当該地域の農業事情に精通している方とか過去に農業を営んでいた方、または農業を営む者と過去に取引関係があった方、農業問題に関し日ごろより関心を持っている方など、幅広い方がこれに該当するものと考えております。
先ほど弁護士と申しましたが、弁護士でなくてはならないということではなくて、例えば弁護士の方でも該当する、こういう意味で申し上げたところでございます。
そして、役員が立場が変わった場合というお尋ねもあったところでございます。
今申し上げましたように、「農業委員会の所掌に属する事項に関し利害関係を有しない者が含まれるようにしなければならない。」こういうことでございます。
したがって、農業委員になったときにはそうではなくて、この条項には当てはまるんですが、その後に、例えば出資等によって農業生産法人と利害関係を有することになった、結果、その方がいなくなると利害関係を有しない人が一人もいない、こういうことになってしまいますと、これは制度上適当ではない、こういうふうに考えております。
したがって、市町村では、農業委員会の所掌事務に利害関係を有しない者として就任する委員に、あらかじめ、在任中は利害関係を有することにならないように求めておくこと、仮に、その委員が利害関係を有することになって、利害関係を有しない者が一人もいなくなる、こういう事態になる場合には、その委員に辞任を促して、かわりの委員を任命する、こういった措置などをとっていただくことが必要になる、こういうふうに考えております。
○斉藤(和)委員 物事を判断できれば誰でもいいのかといったら、決してそうではなくて、公選制をとってきた意味の重みというのは、先日、全国の農業委員会の委員長をやられている方と懇談をしました。農業委員会の仕事を円滑に進めるためには、何よりも農業者の方からの農業委員会に対する信頼が不可欠だというふうに話されていました。農業委員会が農業者からの信頼を失ったら、農業委員会の任務を果たすことはできないと。
しかし、今回の公選制の廃止と、市町村長による任命制、過半は認定農業者、さらに、今ありました中立委員の加入など、その趣旨が、規制改革会議が言うように、実務的に機能する者を選任するというものである以上、果たして本当に、農業者の皆さんから信頼をされる委員構成ができるんでしょうか。いかがでしょうか。
○林国務大臣 まさにそのことは、与党の議論でも大変議論になったところでございますが、首長さんが、地域を定めて推薦する、また公募をする、そして、そういうふうにして挙がってきた方々の名前を整理して公表してやっていく、こういう丁寧な手続をいろいろ工夫してとることによって、選ばれた方がしっかりと皆さんから信頼を得られるようにしていく、やってもらわなければならないと思っておりますし、我々も、そういうふうに意を用いて、この法律が通った暁には運用してまいりたいと思っておるところでございます。
○斉藤(和)委員 信頼という点で、農業委員会が果たしてきたもう一つの役割、建議の規定を削除したという問題です。
先日の参考人質問でも、農業、農村の問題というのは複雑に絡み合った要因から成り立っておるものです、これが解決するには、農業、農村の全般の問題について意見の公表をすることは必要だというふうに考えます、したがって、農業委員会の意見公表の内容をさらに充実するということと、これを重く受けとめていただけるような裏づけの整備をお願いしたいというふうに意見が表明されました。
これは私、非常に大事だと思うんですけれども、裏づけを整備する、大臣、いかがでしょうか。
○林国務大臣 そこも、実は随分議論をしたところでございまして、農業委員会は独立行政委員会であって、主たる任務が、担い手への農地利用の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消といった現場の実務であるということでありますので、まずは主たる業務に集中をしていただこうということでありまして、そういう意味で、法的根拠がなくても行える意見公表や建議は、法令業務から削除をすることにしたところでございます。
もちろん、法令業務から削除しても、当然、意見の公表等は自由に行うことができるわけでございます。
さらに、今、先生からあったような御議論もございまして、農地に関する施策について、いわゆるPDCAサイクルをきちっと回していくという観点から、農業委員会におかれて、その所掌事務の遂行を通じて得た知見に基づいて、必要があると認めたときは、関係行政機関に対して、農地等の利用の最適化の推進に関する施策についての具体的な改善意見を提出する義務を課す、そして、改善意見を提出された関係行政機関は、その意見を考慮しなければならない、この旨を法律に明記するということで、三十八条にその対応をしたところでございます。
○斉藤(和)委員 その主たる任務の耕作放棄地がなぜ生まれるのかといえば、やはり米価暴落など農業をめぐる大変な、生産がなかなかいかないというような、農政全般にかかわる、だからこそ、農業委員会に建議という規定があったんだというふうに思うんです。
この点を、農業委員の参考人の方が言われた、重く受けとめて、裏づけを強化してほしいという、ここはもうちょっと考えていただきたいというふうに思います。
最後の質問です。
私、この質問の準備のために、茨城県の古河市の農業委員会の活動を視察しました。そこで奮闘されている秋庭農業委員という方にお会いして、農事組合法人茨城県古河中央植物センターが、水耕栽培のトマト工場をつくると称して膨大な産廃残土を持ち込んだという現場を見てきました。
この問題は、五月二十九日の全国農業新聞でも紹介をされて、「農業生産装い残土捨てる」との見出しで、深刻な事態だと警鐘乱打をしています。
この記事でも、国会では、農業生産法人の要件緩和とともに、農業委員会改革も審議中、農業委員の公選制を廃止し、全て市町村長による選任にする内容だ、委員数を半数程度に減らし、かわりに農地利用最適化推進委員を農地集積やパトロール活動に充てるという、この体制で本当に農地の番人が務まるのかと不安は拭えないというふうにしています。
私は全くそのとおりだと思うんですけれども、茨城県では建設残土の埋め立てが頻発し、産廃マフィアの介在も懸念されている。本当にしゃれにならない問題が起こっています。
林大臣、今回の改正でこのような事態というのは一掃できるんでしょうか。
○林国務大臣 農地への建設残土の投棄でございますが、農地法上、これは農地を農地以外のものにするということで転用行為になりますので、都道府県知事の許可を受けなければできないこととされております。これは農地法第四条一項でございます。
したがって、都道府県知事の許可を受けない不法な投棄は違反転用になりまして、農地法上、都道府県知事は、原状回復その他違反を是正するための必要な措置を講ずべきことを命じることができる、また、三年以下の懲役または三百万円、法人の場合は一億円でございますが、以下の罰金に処せられる、こういうふうになっております。
今回、農地法を改正いたしまして、こういった違反転用については、都道府県知事が措置を講じない場合、農業委員会が都道府県知事に対して、原状回復その他の是正措置の命令を講ずるように要請できることといたしましたので、さらに番人としての権限が強化されるということでございます。
○斉藤(和)委員 権限が強化されるということでしたけれども、及び腰だというふうにおっしゃっていました。新聞にも書いていますけれども、是正を求めて、その生産法人に言ったら、おまえらより偉い人がバックについているんだと言われたと。
この意味というのは非常に重いと思うんです。公選制で選ばれているからこそ、農家の代表として、農地を守るという立場でパトロールをされている。自分も非常に命の危険を感じるけれども、やはり農地は農地として守りたいから頑張っている、こういう農業委員さんの思いを本当に酌み取る、そういう中身にする必要があるというふうに思って、公選制は、私はやはり残すべきだということを最後に主張し、質問を終わります。
ありがとうございました。