米価低迷加速、TPP撤退こそ国益 2015年8月26日衆議院農林水産委員会
投稿日:2015年08月26日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 質問をさせていただきます。
 二〇一五年の米の収穫が始まりました。早場米では、昨年に比べて、三百円とか、高いところだと千八百円と概算金が設定されていると言われています。
 私も、地元千葉県で米の買い入れをしている農協があるんですけれども、そこに伺ったところ、九千五百円にしたと。昨年に比べれば五百円ぐらい値上がりしたということなんですけれども、農家の方にしてみれば、昨年が本当に暴落したわけで、それに比べて、五百円だけれども、大きく値を回復する見込みもなければ、展望もない。米の生産費は一俵一万六千円と言われているわけですから、それに全く届かない。
 ここ数年の平均的な全国的な相対取引価格を見ても、一万五千円とか一万四千円で推移してきたわけです。その米の価格が、昨年、一気に平均で一万二千円を割り込むというところまで落ち込んだ。
 農家の方々からは、米つくって米食えねえという怒りの声が上がったわけですけれども、米でも野菜でも、価格がちゃんと安定していれば後継者だっているんだ、また、農産物の価格が安いから、展望が見えないで、息子に農業を継げなんて言えない、外に働きに行く、そういうふうに言うしかないんだという声、それから、一万円を割った状態で米づくりを続けるということはもうとてもじゃないけれども無理だ、こういう声をどこでも聞くわけです。
 そうした状況にもかかわらず、政府は、毎年、ミニマムアクセス米で七十七万トンを輸入している。米の需要が減っているもとで、このMA米の数量は一切減らすことなく輸入し続けているわけです。
 ここに来て、TPPに関連をし、甘利大臣が米の別枠輸入を五万トンと主張したと、先ほどもありましたが、それは事実ですというふうに甘利大臣みずからが記者会見で述べているわけです。
 私は、ちょっとこれは林大臣にお聞きしたいんですけれども、こうした米の価格が暴落している状況、こうした状況の中で、五万トンという数字はどういう意味を持っているとお感じになっていらっしゃるでしょうか。
    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕
○林国務大臣 先ほど来お答えをしておりますが、交渉内容そのものでございますので、私からはコメントすることは差し控えたい、こういうふうに思っております。
 米について非常に厳しい要求が特に米国からなされている、こういうことは事実であろうか、こういうふうに思いますが、米は国民の主食でもありまして、主要な基幹的農作物である、こういうことでございますので、慎重に交渉を進めておるところでございます。
○斉藤(和)委員 私は、生産者目線から見たときに、やはり米をつくりたいという思いを生産者の方々は持っているわけです。そうしたときに、その米を豚や牛に食わせるのか、しかし、今の米価の状況を見れば、飼料米にするしかないという選択をされているわけです。
 そのときに、政府は、米が毎年八万トン程度需要が減少している、それが米余りになっているんだということを繰り返し繰り返し強調されているわけですね。今回出てきた数字というのは、それに匹敵する、アメリカは十七万五千トンと別枠輸入を主張しているわけですから、TPP交渉では、アメリカから要求されていることを考えると、この米が余っている八万トンというのは、しかも、譲歩する七万トンという話も出てきているわけで、本当にこんなことをしたら、ますますお米をつくり続けるということができない状況になると思うんです。
 米というのは単なる食料の生産というだけではなくて、中山間地が多い、山があって、平地が少なく、すぐ海に向かう、こういう日本の特殊性の中で、水田が果たしている国土を守るといった役割というのは非常に大きいというふうに、農林水産省も多面的機能ということで試算を出しているわけですよね。
 そういうことを考えても、やはり日本にとって米づくりというのは国土を守るといった点からも非常に私は重要だと思うんです。だからこそ、国会決議の中で、重要五品目については除外または再協議というふうに明確に書いて、衆参両院で決議をされている。
 この米の五万トンの別枠輸入というのは除外というふうに言えるんでしょうか、大臣、いかがでしょうか。
○林国務大臣 先ほど申し上げましたように、交渉内容については私からコメントすることは差し控えたいと思っております。また、決議について私から解釈をすることは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
 今委員がおっしゃったように、水田というのは大変重要な機能を有しておる、これはそのとおりでございます。多面的機能の試算自体は農水省ではなくて学術会議だったと思いますが、そこで試算をしていただいたものがありますように、治水治山機能に始まりまして、いろいろな機能を持っているというのが出ております。数字に換算できるものであれぐらいの数字が出ておりますが、それ以外に数字に換算できないものもあるということでございます。
 したがって、我々としても、水田という生産装置をフル活用するということで、かつ、需要に合った生産をするということで、今おっしゃっていただきました餌米ですとか、あるいは酒米ですとか、麦、大豆、こういった転作奨励ということを通じて、水田をフル活用していただくということをしっかりと施策で展開していきたい、こういうふうに思っておりますし、先ほどお話がありましたような、ことしの概算金の状況も、生産調整というものが始まりましてから初めて達成をする見通しが出てきた、こういうこととも相まって出てきているのではないか、こういうふうに受けとめておるところでございます。
○斉藤(和)委員 国会決議の解釈はということで発言されませんでしたけれども、私は、この米の五万トンの別枠輸入、最低ですけれども、これをやっても、もし国会決議が守られたと評価されると思っているとしたら、非常に大問題だ、国会決議というのは何なのかという根底が問われることになるだろうというふうに思っております。
 国会決議は、あくまでも五品目について、「引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」とし、さらに六項目めで、「自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さない」というふうに書いてあります。
 今でさえ再生産できない価格に追い込まれているこの米の状況を見たときに、政府がさらにそれに追い打ちをかけるような、再生産が本当に根底からできない、農業が続けられないような状況になるような交渉というのは、私はもう続けるべきではないというふうに思うわけです。
 そもそも、七月末のハワイでの閣僚会合は、最終合意するんだということで鼻息荒く行ったわけですが、大筋合意には至りませんでした。甘利大臣は、会合の後の記者会見で、八月末までに会合を持つというのが共通認識だというふうに述べたんですけれども、その後、八月中に閣僚会合開催は困難と、さらに、十日後のテレビ番組では、九月いっぱいに開催しないとというふうに発言されているわけです。
 内閣官房の方にお聞きしますけれども、その後、このTPPの閣僚会合の開催の日程だとか進捗状況というのはどうなっているでしょうか。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
 先月のハワイの会合での成果を踏まえまして、できるだけ早期に次回の閣僚会合を開催するべく調整中でありますが、現時点ではまだ日程は固まっておりません。
 なお、マレーシアで開催されておりますASEANの会議の場で、きのうまでUSTRのフロマン代表と数カ国の関係閣僚でTPPに関する会談も行われたようでございまして、その中でTPP交渉をできるだけ早く終結させることを話し合われたということでございます。
○斉藤(和)委員 早期開催のために頑張っているというふうに言われましたけれども、現状はまだ決まっていない。
 甘利大臣も、残された課題を処理した後に閣僚会合を開くというふうに話されていて、なかなか開くめどが立たないということは、合意しがたい深い溝があるんだろうというふうに思うんです。
 ハワイで合意に至らなかった原因について、安倍首相に我が党の紙智子議員が十日に質問をしました。その答弁の中で、一部の国の間の物品市場アクセス交渉、知的財産分野の一部について各国の利害が対立したというふうに答弁されています。
 物品市場のアクセスの問題になっているのはニュージーランドの乳製品だというふうに思いますけれども、甘利大臣は紙議員の質問に、ニュージーランドの日本に対する過大な要求に、我々は阻止するために頑張ったんだというふうに答弁されました。しかし、ニュージーランドは、乳製品を念頭に、そもそも例外なき自由化という趣旨でTPPの前身であるP4に入っていて、TPPの枠組みへの構想にしたわけですから、たやすく引き下がるとは思えないわけです。
 また、アメリカにとって医薬品は巨額の利益を生む分野であるというふうに言われていて、特許の保護期間を十二年にしろと譲らない。一方、他の国にとっては、後発薬であるジェネリック医薬品が製造できなくなるから五年にしろと猛反発している。これは、要は各国にとっては国民の命にかかわる問題だから、だからやはり必死になって抵抗し、抗議をしているわけだと思うんです。
 さらに、原産地規制の問題では、自動車部品をめぐって、アメリカ、カナダ、メキシコのNAFTAではこの原産地規制は六二・五%になっているんですけれども、日米では四〇%ともそれ以上ともとかいろいろ言われていますけれども、明らかにNAFTAよりは低い。こうした状況の中で、メキシコが日米合意は受け入れがたいと言ったというふうに日経の新聞記事にもなっているわけです。
 報道で出されているこうした課題を見ても、なかなか合意に至るのは難しいというふうに思うんですけれども、日本政府としては、こうした状況をどう打開しようというふうに思っていらっしゃるんでしょうか。
○澁谷政府参考人 ハワイの閣僚会合では、ルールの分野では実質的に収束したチャプターがかなりあったということでございます。現在、テキスト、いわゆる協定の案文に係る法的チェックなどの作業が事務レベルで行われております。また、さまざまな国同士で事務レベルでの調整が精力的に行われているところでございます。
 残された問題はいずれも政治的な課題でございまして、いずれの国も、自分以外の国が先に譲れば自分は最後にというのを十二カ国がみんなそれぞれ言っている非常に難しい状況でございます。だからこそ、十二カ国が一堂に会して、全体でパッケージで取りまとめるということをハワイでも試みたわけでございまして、次回の会合に向けて関係国と十分に協議した上で、残された論点の解決に向けて最大限の努力をしていきたいと考えております。
○斉藤(和)委員 ハワイで試みたんだけれども、なかなかうまくいかなかったという状況だというふうに思います。
 こうした状況を見たときに、日程の見通しとして、アメリカ議会におけるTPAの可決そのものがぎりぎりの綱渡りだったんですけれども、TPP交渉においても、アメリカは常に議会に監視されている、議会の納得が得られないものであれば否決されてしまうというような立場にありますから、当然、強硬姿勢を崩すわけがありません。
 仮に交渉が妥結したとしても、アメリカは署名までに少なくとも九十日間かかり、署名の六十日前にはUSTRのホームページに全文を掲載するというふうになっています。同時に、独立性の高い国際貿易委員会の経済影響分析も受けることになっています。こうして十二カ国でそろって署名した後、さらに最大九十日間の一括審議が米国議会で行われる。こういう手続、段取りだと思うんですけれども、これでよろしいでしょうか。
○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。
 まさに委員御指摘のとおりでございまして、二〇一五年の貿易促進権限法、TPA法によりますと、通商協定の署名、これに先立ちまして、その九十日前までに大統領は協定への署名の意図を議会に通知しなければいけないということが規定をされておりますとともに、通商協定の署名六十日前までに協定のテキストをUSTRのウエブサイトで公開しなければならないということが規定をされております。
 また、国際貿易委員会、こちらの方からも、協定の署名後百五日以内に、大統領及び議会に対して、協定が経済全般に与える影響等を評価する報告書を提出しなければならないということが規定をされております。
 さらに、実際に通商協定を承認する実施法案というものが提出をされた場合には、議会は、その提出後最大九十議会日以内に上下両院で採決をしなければいけないということが規定をされているというふうに承知しております。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 そうすると、仮に九月下旬に大筋合意をしたとして、署名が最も早くて十二月下旬、そこからすぐアメリカの実施法案の審議が始まって、九十日審議すれば三月下旬です。
 しかし、アメリカの議会は、二月一日から大統領選挙の予備選がスタートし、三月初旬にはスーパーチューズデーと言われる、多くの州で同時に予備選挙が行われて、淡々と議会審議が行われる状況ではなくなるというふうに思うわけです。
 それまでに通すとなると、今でさえ全米でTPPの反対の声が広がっている、さらに、条文がホームページで公開されるわけですから、日本も含めて世論が沸騰する、そう単純にはいかないというふうになると思うわけです。だからこそ、甘利大臣は十七日のテレビ番組で、九月いっぱいにという気持ちを持ち続けないと漂流する危険性があるというふうに話されたんだろうというふうに思うわけです。
 林大臣、この甘利大臣の、漂流する危険があるという言葉をどう受けとめていらっしゃるでしょうか。
○林国務大臣 先般の閣僚会合においては、今後も交渉の早期妥結に向けた努力を継続する、こういう認識が各国で共有されております。
 ただ、残された課題というのは、何回も交渉をやりまして、できたものから片づいていく、こういうことでありましょうから、残っているのは、難しい、今まで全くチャレンジしていなくて残っているということではなくて、ずっとやってきて残っているということも事実でございますので、甘利大臣としては、私も全部コンテクストを拝見したわけではございませんが、交渉の妥結に向けて各国がしっかりと努力するということが重要である、こういうふうなことを強調されたのではないか、そういうふうに受けとめております。
○斉藤(和)委員 つまり、残っている問題は、繰り返しやったけれどもなかなか合意に至らない非常に難しい問題が残っているんだ、そういうことだから、そう単純ではないということだと思うんです。
 確認なんですけれども、八月末に日本では概算要求の締め切りです。TPPはいまだ合意に至っていないわけですから、来年度予算にはTPP対策予算はもちろん盛り込まれないというふうに見てよろしいんでしょうか。
○林国務大臣 まさに今TPP交渉は継続をして交渉しておりますので、予算を計上するということになると、何について計上するのかということは、その部分については対策が必要になるのか、こういうふうになりますので、交渉上不利益をもたらすおそれもある、こういうふうに思っておりますので、TPP交渉いかんにかかわらず、農林水産業・地域の活力創造プラン、こういうもの等に基づいて、今月末の概算要求提出に向けて現在検討を進めておるところでございます。
○斉藤(和)委員 自民党の稲田朋美政調会長は、先日の会見で、妥結後にTPPの対策予算についても補正予算を考えているというふうにおっしゃっていました。
 もし仮に九月中に合意したとしても、国会での承認が必要になるわけですから、国会の承認がないもとでTPPの対策予算が組まれることはないと思いますが、つまるところ、補正予算でも対策予算が組まれることはないというふうに考えてよろしいでしょうか。
○林国務大臣 これは、現在交渉中でございますので、いつ、どういうふうに妥結をするかという何らかの仮定に基づいて今何か御答弁を差し上げるというのは難しいのではないかというふうに思っております。
○斉藤(和)委員 つまり、日本としては、TPPが交渉中であり、妥結をしていないもとで対策予算等々を、補正また本予算を含め、立てられる状況にはないということだというふうに思うわけです。
 日本政府が何でここまで前のめりになってきたのかということは、やはり参議院選挙に影響を与える、そういうことを念頭に置いて、この秋の臨時国会で何としてもTPPを批准、進めたいというふうに考えていたのではないかというふうに思われるわけですけれども、今のTPPの状況を見ますと、なかなか秋の臨時国会というふうには今のお話でもあり得ないというようなことです。
 そうなりますと、やはり私は、そもそもTPP、どうするのかということが問われてくるだろうというふうに思うわけです。
 一番最初に米の問題を話しましたけれども、この間、報道ベースでも、牛肉は関税を現行の三八・五%から段階的に九%まで下げる。豚肉は、安い部位の関税を一キロ四百八十二円から五十円まで引き下げ、高い部位は関税を四・三%からゼロにする。小麦はマークアップを半減などなど、要は、重要五品目だと言っていたものさえもがどんどんどんどん、守るどころか、アメリカの要求に沿うような形になっていっている。
 私はさらに問題だと思うのが、この間、アメリカは一貫して、遺伝子組み換え食品の表示をなくせとか、防腐剤や防カビ剤など、収穫後に農薬をまくポストハーベスト、これが日本の基準が厳し過ぎるからもっと緩めろということを繰り返し日本は言われてきているわけです。
 こうしたTPPのみならないアメリカの要求を突きつけられて、これを丸のみするような動きというのは、私は、日本の国益を守るどころか、やはり一部の多国籍企業のもうけのために、日本人の食料も食の安全も含めて、日本を丸ごと売り渡すようなものになっているんじゃないかというふうに思うわけです。
 私が重要だと思うのは、ただでさえ、今食料自給率は三九%です。農協法の審議の中でも、食料を自国でつくらなければ兵糧攻めに遭います、こういう発言がありました。アメリカは食料をどう位置づけているか。軍事とエネルギーと並ぶ、国家存立にとって重要な柱というふうに位置づけています。そのときに日本が、コンバインやトラクターが壊れたらもう米づくりしないよ、もう再生産可能な現場ではない状況の中で生産意欲が奪われている。それに、日本には農業は要らないと言わんばかりの情報がTPPの流れの中でどんどんどんどん振りまいてこられたら、ますます日本の食料の安全確保という点は非常に危ぶまれる。
 私は、TPP交渉からは直ちに撤退することが何よりも日本の国益を守る方法だということを強く強調して、質問を終わります。ありがとうございました。