189-衆-農林水産委員会-3号 平成27年03月19日
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。委員会で初めて質問をさせていただきます。
まず、米価暴落問題について質問をいたします。
二〇一四年度産米の農協の概算金は、コシヒカリで一俵九千円、その他の銘柄では七千円から八千円台の価格になっており、昨年と比較しても、六十キロ当たり二千円前後下回っています。
農林水産省の米の生産費調査で、米の生産費と物財費は幾らとされていますか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
直近の平成二十五年産の米の生産費統計の全ての規模階層の平均で見ますと、肥料、農薬、農機具等の購入費ですとか償却費等から成る物財費は、六十キログラム当たり八千九百八十二円となっております。
これに労働費、資本利子、地代を含めた全算入生産費は、六十キログラム当たり一万五千二百二十九円となっております。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
つまり、今の米価は生産費の半分、物財費さえも割り込む価格になっているということです。
さらに言えば、日本で最も高いとされる新潟県魚沼産のコシヒカリを例えば五百ミリリットルのペットボトルにいっぱい入れても九十五円にしかなりません。私の地元千葉では六十円です。ペットボトル一本で、おにぎりは大体八個以上つくれる量になります。それが水よりも安い価格で取引されているというのが今の米価です。
こうした状況の中で、私の地元、稲作農家の方からは、冬の間に機械をメンテナンスに出すんだが、三十五万から五十万かかる、米価も下がり簡単には出せない、農機具屋に話を聞いても、例年約三十件来ていたものが、ことしは五件しか来ていない、こういう話です。米価の暴落による収入減がこうした形であらわれています。また、匝瑳市の営農組合の方からも話を聞きました。先行きは全く見えない、しかし、若手が三人働いているから、やめるにやめられないと話されていました。
もし、またことしも同じように米価が暴落したら、米農家はたまったものではありません。生産基盤は崩壊寸前、崖っ縁です。今の米価暴落を大臣はどのように認識されていらっしゃるでしょうか。
○林国務大臣 二十六年産米の本年一月の相対取引価格でございますが、六十キログラム当たり一万二千七十八円でございまして、今、斉藤委員からお話がありましたように、二十五年産より二千円程度低い水準になっております。二十六年産米の概算金や価格が例年に比べて低下したことなどによって、今、生産現場の御紹介もしていただきましたが、二十七年産の生産に向けて不安が生じているということは承知をしておるところでございます。
二十六年産米については、ナラシ対策によって収入減少に対する補填を実施するほか、緊急対策ということで、直接支払交付金の早期支払いを実施する、それから、農林漁業セーフティーネット資金の実質無利子化を図る、それから、米の生産コストを低減し、米価の変動にも対応できるように、稲作農業の体質強化のための新たな対策、こういうことを実施してきておるところでございます。
やはり、米の需給の安定を図るためには、需要に応じた生産を進めるためにきめ細かい情報提供をしていかなければなりませんし、それから、飼料用米等の、ほかに需要のあるものへの転換、これを主食用米から図っていく必要がある、こういうふうに思っておりまして、ナラシ対策の加入促進にあわせて農家経営の安定を図ってまいりたいと思っておるところでございます。
○斉藤(和)委員 ナラシ対策といっても、国費で実質補填されるのは三三・七五%で、本当に少ない状況になっています。しかも、標準価格というのは、五年間の一番高い米価と低い米価を除いた価格の平均を基準にしますので、平均価格が下がれば、補償された額も必然的に下がっていくという仕組みで、生産者を支えるものにはなっていません。
飼料米にということですが、これも、一月十九日の政府の産業競争力会議で、飼料用米の本作化は補助金に依存することなく進めるようにと指摘がされています。農家の方から、いつまで補助金が続くのか、本当に飼料米にして大丈夫なのかという声が既に上がっています。全ての対策を飼料用米だけに求めるというのも、率直に言って、無理があると思います。
本当に米価暴落の深刻さを認識し、対策を打つというのであれば、私は、やはり需給調整に乗り出す、国が余っているお米を買うということが必要だと思います。
ことしでいえば、米価暴落の原因となっている余剰米は何万トンでしょうか。
○松島政府参考人 委員から余剰米についての御質問がございましたけれども、農林水産省は、毎年、七月から翌年六月の一年間を期間といたしまして、需給見通しというものを発表してございます。そのときに、六月末の在庫数量というのを公表してございまして、昨年六月末の民間在庫数量は二百二十万トンという水準でございます。
しかしながら、その二百二十万トンの民間在庫数量には、七月から八、九月、新米ができる間の消費される分ですとか、それから、やはり米を安定的に供給するためには一定の流通在庫が必要ということもございますので、この六月末の民間在庫数量が全て余剰になっているというわけではございません。
そういうお米の性格から見まして、一年間、さらには一年間を超えて消費されるという性格があるものですから、明確にこの量が余剰在庫ということはなかなか申し上げがたいということについて御理解いただければと思います。
○斉藤(和)委員 明確に述べられないという御回答でしたけれども、実際に政府が対策を講じているのは二十万トンです。
全国知事会からも、昨年の十二月、米政策についての緊急要望書が出され、国は、米の需給バランスの改善に向け、必要な対策を講じることを求めるというふうに言われています。また、西川前大臣も、十二月十六日の記者会見で総選挙の選挙結果について問われ、八千円前後では再生産ができない、こういうことがやはり大きな投票行動の一つにあらわれたんだと思いますと答えていらっしゃいます。
やはり、しっかりと政府が余剰米の買い入れを行い、米価の下落に歯どめをかけるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○あべ副大臣 委員にお答えいたします。
国は、米が国民の主食として重要な位置づけにあることを踏まえ、食糧法に基づきまして、大不作などの不測の事態が生じた場合でも国民に米を提供できるよう、百万トン程度を基本に備蓄を行っているところでございます。
その備蓄の運営に当たりましては、国による米の買い入れ、売り渡しが市場に影響を与えないよう、いわゆる棚上げ備蓄方式としておりまして、毎年、一定量について収穫前に入札による買い入れの契約を行うとともに、大不作などによって放出することがなければ、一定期間保管後に非主食用に販売することとしているところでございます。
豊作また需要の減少によりまして米の供給が過剰となった際に、国が直接市場に介入し、政府買い入れを行うことにつきましては、食糧法上、政府買い入れは備蓄の円滑な運営を図るために行うものでございまして、需給調整のために行うこととなっていないことから、適切ではないというふうに考えております。
また、米につきましては、消費者のニーズに即し、需要に応じた生産が行われることが重要でございまして、豊作や需要の減少による需給緩和に関しましては、民間主導による対応が基本であると考えているところでございます。
このため、平成二十七年度当初予算におきまして、産地であらかじめ生産者が積み立てを行った上で、長期計画的な販売や輸出用などのほかの用途に対しての販売を行う場合に支援する事業を措置しているところでございまして、この需給安定に向けた産地の自主的な取り組みを支援しているところでございます。
○斉藤(和)委員 いろいろ言われましたけれども、それでは米価は下どまりせず、いまだに下がっているという状態が、新聞紙上でも報道が行われています。
今でさえ、ぎりぎりの状態です。既に、農政に展望を見出せず、自殺者まで出ています。
群馬県では、昨年一月と八月に相次いで大規模な米農家の方が自殺をされました。一人の方は、十五ヘクタールの農地を持つ六十代の男性で、首をつられたそうです。もう一人の方は三十代。民主党政権下の二〇一〇年、戸別所得補償制度が導入されたことをきっかけに、サラリーマンをやめ、実家の農業を継ぎました。耕作面積は二十六ヘクタール。インターネットを通じて直販などにも挑戦するなど頑張っていたそうです。しかし、自民党農政のもとで、十アール当たり一万五千円の直接支払いは七千五百円に半減され、二〇一八年には廃止をされる方向です。
国が推進してきた大規模化をすればするほど、大型機械が必要になり、そのリース料や修繕費がかさみ、経営が立ち行かなくなっている。同じ群馬の米農家の方は、彼は国に殺されたようなものだとまで話されているんです。
何とかする必要があると思いますが、こういう事態だからこそ、しっかりと国が需給調整を行う。もし、またことしも同じような米価暴落をしても、国は決して日本の米を買い入れるということはやらないということでしょうか。
○松島政府参考人 先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたように、国が需給調整の観点から買い入れるということは、食糧法上難しい、困難だと考えてございます。
また、米の価格の安定ということにつきましては、主食用米の需要が減少する中で、やはり需要のある飼料用米等への転換を進めていくという形で価格の安定を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 それではやはり米価暴落に歯どめはかけられないから、ぜひ乗り出す必要があるのではないかということを質問させていただいています。
もう一つお聞きします。
二〇一四年度まであった米価変動補填交付金を廃止しました。米価変動補填交付金は、米の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合、その差額を全額直接交付するものでした。
しかも、この交付金の対象は、米の直接支払交付金を受けた販売農家と集落営農に対してですから、この廃止は非常に大きいと思います。この制度を続けていれば、今回の米価暴落が直接農家に大打撃を与えることはなかったはずです。
なぜ、この米価変動補填金をなくしたのでしょうか。大臣、復活させる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○あべ副大臣 委員にお答えいたします。
なぜこの定額部分の廃止をしたのかという問いと二ついただいておりますが、まず、平成二十五年末の経営所得安定対策の見直しの中で、米の直接支払交付金、十アール当たりの一万五千円につきましては、米は、麦、大豆などと違いまして、十分な国境措置がございまして、諸外国との生産条件の格差から生じる不利はないこと、全ての販売農家を対象とすることは農地の流動化のペースをおくらせるという面があること、また、米につきましては、潜在的な生産力が需要を上回っている状況にあることなどの政策的な課題がございましたので、二十六年産から単価を削減した上で、三十年産から廃止することとしたところでございます。
このように、米の直接支払交付金を削減する一方、多面的機能支払いの創設、さらには、非主食用米への支援など水田の有効活用対策の拡充、また、農地中間管理機構を活用した農地の担い手への集約を推進するための支援策などの拡充を行うこととしたところでございます。
米価が変動した場合には、収入減少影響緩和対策、ナラシ対策などのセーフティーネット対策を講じているところでございまして、意欲と能力のある担い手の経営の安定を図っていく考えでございます。
また、交付金を復活すべきではないかという問いでございますが、これに関しましては、委員がおっしゃったように、民主党政権下で行われた米の所得補償制度の米価変動補填交付金につきましては、やはり、全ての販売農家を対象とする、また、米価が標準的な販売価格を下回った場合に、下回った分の全てを全額国費で補填するというものでございましたが、これにつきましては、全額国費で補填をすることで生産者の販売努力を損なうなどのモラルハザードになるおそれがあること、また、他の農作物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたいこと、全ての販売農家を対象とすることは農地の流動化のペースをおくらせる面があることなどから、一昨年末、平成二十五年末に農政改革の中で経営所得安定対策の見直しを行いまして、米価変動補填交付金につきましては平成二十六年産から廃止することとしたところでございます。
米価が変動したときには、収入減少影響緩和対策、ナラシ対策などのセーフティーネット対策を講じているところでございまして、意欲と能力のある担い手の経営の安定を図っていく考えでございます。
○斉藤(和)委員 ナラシ、ナラシとおっしゃいますが、予算面から見ても、ナラシに入っていない人も含めた補填を合わせて一千百八十五億円になっていると思います。
では、もし仮にこの米価変動補填交付金が存続していたら、今回の米価暴落では幾ら交付金が支払われたことになるでしょうか。
○奥原政府参考人 米価変動補填交付金でございます。
この仕組みは、二十二年産から二十五年産まで措置をされておりましたけれども、価格が低下したときに出る仕組みでございますので、実際に発動されたのは二十二年産だけでございます。この二十二年産のときの交付額、全体で千五百三十九億円でございました。
今度の二十六年産につきましては、この仕組みはございませんけれども、仮にあったとすれば、これを上回る金額になったものというふうに推測されます。
○斉藤(和)委員 上回る金額というお答えでしたけれども、農水省の方から試算を出していただきましたら、二千億円という回答が来ておりました。二千億円というこれだけのお金が、いわゆるこの制度をなくしたために農家、農村から奪われてしまった。経営が立ち行かなくなったということは、私は当然だと思います。
今回の米価暴落は、米の買い入れも行わず、国が需給調整にも責任を持たない、農家が頼りにしていた戸別所得補償制度の直接支払いも廃止の方向を打ち出し、価格変動に対する交付金も廃止する。結局、米価暴落に対して政府がこれまでやっていたことさえ投げ出していると言えるのではないでしょうか。彼らは国に殺されたようなものだという農家の方の訴えをぜひ重く受けとめていただいて、私は、政治がやはりしっかり責任を果たす必要があると思います。
国は、今、米の需給調整は行わないというふうに言っておりますが、何が何でも日本の米は買わないという姿勢です。しかし、なぜか海外からは毎年七十七万トンも米を買い入れていると思うんですが、これはなぜでしょうか。
○松島政府参考人 海外からの米の輸入の関係でございますけれども、これは、平成六年にガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉が決着いたしまして、その際、ミニマムアクセスといったものについて我が国が同意いたしまして、毎年、消費量の一定量を輸入するという約束をした結果、今委員が御質問ございましたように、現在、玄米ベースで毎年七十七万トン程度の輸入を行っているということでございます。
○斉藤(和)委員 そもそもミニマムアクセス米は義務でしょうか。
○松島政府参考人 このミニマムアクセスにつきましては、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業協定に基づきましてミニマムアクセス機会を設定するという約束をしているわけでございますけれども、我が国が負っております法的義務の内容は、米の国内消費量の一定割合の数量について輸入機会の提供を行うということでございます。
しかしながら、我が国のミニマムアクセス米につきましては、平成五年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う閣議了解をしておりますけれども、その趣旨を踏まえまして、国産米の需給に極力影響を与えないように、引き続き国家貿易によって輸入していくということとなってございます。
その結果、米は国家貿易品目として国が輸入を行う立場にあることもありまして、平成六年に衆議院予算委員会において示しました政府統一見解にありますように、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合は当該数量の輸入を行うべきものというふうに考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 ミニマムアクセス米はそもそも義務ではないということです。
国家貿易だから輸入するんだというふうにおっしゃいますが、他の国を見れば、例えば韓国では、トウガラシのアクセス数量は七千トン、これに対して、入っている数量は千七百トンです。中国の穀物アクセス量は二千二百十五万トンですが、実際輸入しているのは八十七万トンと、各国の需要によって輸入数量の幅というのは現実に変わっています。
そうした状況の中で、日本は相変わらずミニマムアクセス米を買っている。その保管料だけでも、例えば一九九五年からの累計で千八百億円以上です。また、このアクセス米は赤字であって、十年間で見ても二千七百億円、売れずに赤字。つまり、ミニマムアクセス米を買い、税金を投入してまで輸入米を買っている、それなのに日本の米を買わないというのは道理がないと思います。
しかも、このミニマムアクセス米の中で、二月七日の日本農業新聞に出されましたが、「米国産米シェア保証の闇」という記事が載りました。口約束でアメリカと、ミニマムアクセスの半分の数量を買うという約束を日本政府が行っていたという記事です。
これに対して、大臣、真相を明らかにする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○松島政府参考人 委員から御質問がございました二月四日の日本農業新聞の報道については承知してございますけれども、この件につきましては何度も国会で答弁してございますが、米国からのミニマムアクセス米の輸入に関しまして、米国との間で御指摘のような合意は存在いたしません。
○斉藤(和)委員 存在しないというふうにおっしゃいますが、実際に、平成十二年から毎年、アクセス米の半数の数量、三十二万トンが輸入し続けられています。もし仮にこうした事態が本当だとすると大問題であり、私は、しっかりと真相を明らかにする責任があると思います。
同時に、今、TPP交渉の中で、ミニマムアクセス米とは別枠に五万トンを輸入するということが報道をされています。
この農水委員会でも決議がされている、五品目について聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断したら脱退も辞さないとするという決議をしっかりと受けとめて、私は、TPP交渉から脱退することが必要だということを求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。