参考人質疑 農協解体で地域衰退 2015年5月27日 農林水産委員会
投稿日:2015年05月27日

189-衆-農林水産委員会-12号 平成27年05月27日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 本日は本当にありがとうございます。参考人の先生方、本当に貴重な御意見をお聞かせいただきました。私が最後になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、笠原参考人の方にお聞きしたいんですけれども、生産法人の要件緩和にかかわって、やはりあくまでも主体は農業者というふうに発言の中で強調されたんですけれども、逆に、この要件緩和によってどのような懸念があるというふうにお考えに、感じていらっしゃる件などありましたら、お答えいただければと思うのですが。

○笠原参考人 全く私の私見ですけれども、私、四十年の中で、大手商社ですとか大手企業と一緒にやってきました。しかし、そういう方は、損益分岐点が、だめだということになると引き揚げますよね。このことを私は危惧しているということなんですね。
 農業人というのは、経営コストだけではなくて、情熱を持って国民の命を支えている、やはりこういう誇りとプライドを持っています。そういう意味では、大変利益が薄い事業かもわかりませんけれども、これを粘り強くやって、それで付加価値をつけていく、こういうことが我々の求められていることなので、緩和は、金融だとかそういう意味では非常に結構ですけれども、最終的にはそういう誇りを持った方に、農業人にやってもらいたい、そういう意味です。
 以上です。

○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 続いて、新福参考人にも同じように、生産法人の緩和について、農業は他産業と同じく考えてはいけないんだというふうに発言されていたという資料がありまして、それに関してどのようにお考えか、お聞かせいただければと思います。

○新福参考人 経験から申し上げますと、やはり農業というのは、通常言われる企業は人なりでございます。農業人ほど、農家ほど、今、人材に投資をする時期でもあるわけなんですよね。
 しかし、金融機関にしろ、そういう人材投資というのは、短期的には見られても、私たちは二十年かかりました、この二十六・五歳にするまで。そういう中長期的なものが、今後、農業生産法人の要件緩和にしろ、はっきり申しまして、今の現時点では、過半はその地域の農業人が守るべきだ。また、それが二十年後、三十年後、時代が来たときにまた考えればいいんじゃないかな、私はそういう考えでおります。
 以上です。

○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 次に、川上参考人にお聞きしたいと思うんですが、先ほどもありましたけれども、農業委員会の公選制がなくなるということで、私は、地域の代表としてやはり選挙で選ばれている、選挙をしないとしても、代表として地域から推薦をされて出てきているというところに大きな責任と意味があったのではないかと思うんですが、その辺、いかがお感じになっていらっしゃるでしょうか。

○川上参考人 今までのお答えでちょっと誤解があったかもしれませんけれども、私は、公選制が第一義でありまして、それがあって初めて選ばれておるわけであります。ただ、その中身が、趣旨が、地域から選ばれる、そして、みんなから選ばれた、このプロセスを言っておるわけでありまして、それができるのは公選ということがあって初めて可能になります。
 したがって、その趣旨を無視しては成り立たないと思っておりますので、そのことだけはつけ加えさせていただきます。

○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 私も、やはり公選制であってこそ地域の代表だというふうに思うんです。
 私は、その地域の代表という点でもう一つ川上参考人にお聞きしたいのが、意見の公表、建議の規定の削除で、これは年間でいうと千六百件ぐらい各地方から上がっているというふうに聞いているんですけれども、やはり地域の代表であるがゆえに意見を言える。
 逆に言えば、公選制もなくし、この意見の規定も、限定的なものは残りましたけれども、大枠は削除するということは、農業者の皆さんの声が逆に届かなくなるのではないかという非常に私は懸念を持っているんですが、いかがでしょうか。

○川上参考人 御質問のとおりでございまして、この意見の公表、建議というのはきちんとしたものの中で行うことが必要だと思っております。ただ、その中身の問題と、それから、出された意見や建議がきちんと反映できる、そういう流れになっていく必要があると思っております。
 そういう意味で、私どもは、中身の充実ということで、農地白書あたりも工夫して、鳥取県は十九市町村ございますけれども、どの市町村も全部そろって、同じような視点から項目を検討しながら、それを図表化し、数値化して、さらにそれにつけ加えて意見を述べてということにいたしました。そこまで持っていきますと、各首長さん方は、ああ、これが欲しかったと、ほとんどの市町村長さんがおっしゃっておられました。
 したがって、もっともっと我々も工夫しなきゃならぬと思いますけれども、より掘り下げた意見を出す必要がある、これは私どもの方の責務になります。
 ただ、その流れの中で、先ほども申し上げましたように、聞きおく程度のことにとどめられてしまうと困りますので、ぜひとも、どういう形であろうと、きちんと重く受けとめてもらえるような、そういう体制整備をしていただきたいということをお願いしておるわけであります。

○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 最後に、太田原参考人にお聞きしたいんですけれども、この農協法が改定をされる、その大もとの根本的な認識なんですけれども、農協法ができたときは食料が不足基調だった、しかし、今は食料が過剰基調にあるんだということが根底に置かれて、さまざま改革が必要だということが言われているんですけれども、食料が過剰基調にあるというこの認識、私は、ちょっと、こういう認識でいいのかなという、非常に疑問を持っているんですが、太田原先生はどのようにお感じになっているのかということと、あわせて、日本の農業が小農、零細農家で担われている、この食料の過剰基調という認識とあわせて、日本の農業の担い手としての小農の役割というのをお聞かせいただければと思います。

○太田原参考人 ありがとうございます。
 かつては不足していて、今は過剰だから農協を改革しなければならないという問題設定が私にはよくわからないんですが、恐らく、そういうことを言う人は、食管制度のことが背景にあると思うんですね。
 戦前から、食料が足りないとき、まさに食糧管理制度で乗り切ってきたわけですね、いろいろな犠牲を出しながら。そういう中で、農協というのは、まさに供出と配給のための機関として、きれいに言えば、農政とタイアップしながら、事実上は農政の下請をしながらそれを支えてきた。だから、過剰になって食管制度もなくなった、したがって農協も要らない、多分、こういう図式が頭の中にあるんだろうと思うんですね。
 ですから、それはやはり大間違いですよ。食管制度のときに大いに役に立ったというのは大変重要な公共的役割だったと思うんですが、食管制度がなくなっても減反がなくなっても、つまり、行政の下請の必要がなくなっても、これは先ほど言いましたが、農協には協同組合としてやらなければならない重要な役割があるわけですね。それは、こういう情勢の中ではますます必要になってくるわけで、先ほどの御質問とも関係いたしますけれども、それも組合員のためというだけではなくて、今まさに農協が地域のインフラになっておりますから、地方消滅と言われるような厳しい状況の中で、ますます農協は総合農協としてその役割を発揮していかなければならない、こういうふうに考えております。

○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
 引き続き、太田原先生に質問したいんですけれども、今、総合農協だからというお話があったんですが、私も農協の方とお話をして、やはり、今、農家の方が一番求めている営農指導、これは総合農協だったからこそできたんだという趣旨のことを発言されていたんです。営農指導だけではもうとても、赤字になるのは目に見えていると。
 そうした点で、営農指導だとか、総合農協だからできた農家の皆さんへの利益の供与というところと、今回の改定によって株式会社を、選択制ですが、選べる、そうなったときに、独占禁止法の適用外だった協同組合から、要は適用されることになる、それによって農業者の皆さんの期待に本当に応えられるのかどうかというところをお答えいただければ。

○太田原参考人 営農指導そのものはなかなか事業として付加価値を生まないので、ほかの事業からの繰り合わせでもっている。本来はきちんと賦課金を取るべきだという議論もあるんですが、なかなかそうはいかなくて、ほかの事業の収益で賄っているというのが実情でありまして、そういう点でも、総合農協でなければならないというのはおっしゃるとおりであります。
 ちなみに、台湾の農協法、あそこでは農会と言うんですが、農会法では、金融事業の収益の何%を営農指導に使わなければならない、そういう法律がありまして、こういうこともちょっと調べて参考にしていただければと思っております。
 それと、おっしゃるように、私も字面しか読んでおりませんが、今回の農協法改正で、営利を目的としないという協同組合の一番の肝のところが削られて、大いにもうけなければならないみたいなものになっていくと、たしかこれは独占禁止法の対象になるのではないか。小さい農協なら別ですけれども、全農くらいのことになるとそういう心配が現に出てまいります。
 ですから、その点は、やはり協同組合というのは何ぞやと。協同組合に対する独占禁止法の適用除外というのは、これは経済民主主義の大原則でありますから、そのことについてはきちっと守っていただけるようにお願いしたいと思います。

○斉藤(和)委員 最後に、また太田原先生にお聞きしたいんですけれども、今の総合農協とのかかわりや独占禁止法とのかかわりにもなるんですけれども、やはり監査のあり方が大もとから根本的に変わる。
 これは、先ほど来、参考人質疑の中でも出ていたんですけれども、農協が農協として、農家の皆さんのための農協というのではなくなり、今のお話と重なるんですが、やはり利益を求めていく、要は、そうでなければ会計監査に耐えられないというふうになった場合、中山間地なんかは特に、経営が成り立たなくなってやめざるを得ないというような、地域崩壊につながるのではないかというふうに私はちょっと感じるんです。
 やはり、農協がなぜ監査をきちんと自分たちでやってきたのかというところの、その意味の大きさというんでしょうか、その辺をぜひお聞かせいただければと思います。

○太田原参考人 今回の農協法改正の最大の論点ですね。
 今まで全中がやっていた監査を外出しして、しかも、それと一般の公認会計士とを選べる、そういうふうに変えるようでありますが、私は、おっしゃるような心配の前に、一般の公認会計士の方が総合農協の監査というのは果たしてできるんだろうかと非常に危惧しております。
 これは大変ですよ。私も生協の監事を何年かやったことがあるんですが、そこで公認会計士の方たちが大変だとおっしゃっていて、総合農協となるとさらに大変だろうと思うんですね。そこで果たして正確な監査ができるのか。もしそういう法律が成立したとしても、私は、各単協は従来どおりの外出しした監査法人の監査を選択すべきだというふうに考えております。
 それで、これまでの全中の監査というのは、何か仲間内の監査だとかいろいろな言い方がありますけれども、私は決定的に重要だと思っているのは、農協というのは金融機関ですから、これがほかの企業と違うところですね。金融機関というのは絶対に潰せないわけです。そのために、農協の監査は、単なる会計監査だけじゃなくて、業務監査、それから経営指導と結びついて、危ない農協は事前に察知して、合併させて、とにかくパニックを起こさないようにしてきた、この実績は非常に大きい。
 当たり前じゃないかと言われるかもしれませんが、他方、銀行も合併に合併を重ねてきたんですけれども、これは膨大な公的資金を投入せざるを得なかったわけですね。ただ、これだって監査法人のあれを通っているわけだから、何をやっていたんだろうと思うんですけれども、そういうことを、膨大な公的資金を投入せざるを得なかった銀行の合併、一切そういうものは使わずに自力更生した農協の合併、これを比較すれば、従来の全中による監査の役割というのは非常に明快なんじゃないでしょうか。それを外す必要は全くないというふうに私は考えております。

○斉藤(和)委員 参考人の皆さん、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
 以上で質問を終わります。