農業競争力強化法案は農業を弱体化する 委員会質問
投稿日:2017年04月05日

193-衆-農林水産委員会-6号 平成29年04月05日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 農業競争力強化支援法案について質問をします。
 まず、法案に至る経過をお聞きします。
 政府は、確認なんですけれども、二〇一五年十月のTPP合意を受けて、関税の撤廃などにより影響を受けることが想定される農林水産分野の対策として、二〇一五年の十一月に農林水産分野におけるTPP対策を取りまとめました。その際に、継続の検討として、二〇一六年秋までに政策の具体的内容を詰めるとして、十二項目が明記されています。そして、その十二項目の検討を進め、二〇一六年の十一月二十九日に、農林水産業・地域の活力創造本部の会合において、一連の施策をまとめた農業競争力強化プログラムが策定をされました。
 この農業競争力強化プログラムの「1 生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」、「2 生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立」、この二つを法案化したのが今審議をされている農業競争力強化支援法となったという理解でよろしいでしょうか。

○山本(有)国務大臣 そのとおりでございます。

○斉藤(和)委員 そのとおりであるという確認ができました。
 つまり、TPP対策としてまとめられたものが土台になって、この競争力強化支援法がつくられているというふうにも見られるわけです。それが、アメリカのTPPからの脱退で、現在、TPPの発足自体はめどが立っていない状況になり、破綻と言ってもいいような状況になっているわけです。そういう状況にもかかわらず、政府がこの農業競争力強化支援法、TPPをもとに考えられた、この成立を進めようとしているわけですけれども、現在はTPPはめどが立っていない。
 それで、その一方で、日米FTAということも言われているわけですけれども、この法案というのは、そうした想定され得る日米FTAの対策として機能させようと考えているのか。さらに、報道などでは、先ほどもありましたけれども、アメリカ抜きのTPP協定発足も検討しているというような記事が出ています。こういうことも想定をして、この法律を機能させようとしているんでしょうか。いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 農業競争力強化プログラムと申しますのは、TPP関連政策大綱を契機に検討されたものでございます。その内容は、農業者が自由に経営展開できる環境整備ということに重きを置いておるわけでございます。農業者の努力では解決できない構造的な問題を解決していくための施策でございます。TPP協定の発効いかんにかかわらず、今後の農業の発展のために不可欠だというように位置づけております。
 したがいまして、プログラムに盛り込まれました施策のうちで、生産資材価格の引き下げ、農産物の流通、加工構造の改革の実現を目指したこの法案は、いわゆるTPP対策ではないというように考えております。
 御指摘の、先日の日米首脳会談における一連の会談を含めまして、米国政府から二国間のFTAにつきまして具体的な要請はなかったと承知しておりますけれども、いずれにしましても、この法案を、今後、貿易交渉に伴う対策として機能させるということは想定しておりません。

○斉藤(和)委員 想定していないというお話でした。
 しかし、ちょっと振り返りたいんですけれども、二〇一三年七月に自民党の皆さんが参議院選挙の際に発表された公約、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略というのがあります。ここでは、今議論されている良質かつ低廉な農業資材の供給によって農業所得の向上を図るといった視点は全く触れられていません。
 つまり、TPPによって関税撤廃がされる、そうした中で、農産物の価格が大きく引き下がる事態が想定される。そうなった場合に、農業資材の価格の引き下げを図らないと、農家の所得倍増目標が達成できない。こういうところから、今回の法案の提出に至ったのではないですか。

○山本(有)国務大臣 農業者の所得向上を図っていく、そして生産コストの削減あるいは農産物の付加価値の向上、こういったことを重要だと考えるところは同じでございます。そして、農地の中間管理機構による担い手への農地集積、集約化の促進、六次産業化や輸出促進、こういう各種の施策を進めさせていただいております。
 一方、TPPにつきましては、交渉で獲得した措置とあわせて、体質強化策あるいは経営安定のための備え等の国内対策、それによりまして国内生産が維持されると見込んでいたところでございますが、この法案について、TPP発効いかんにかかわらず、農業者の努力では解決できない構造的な問題を解決して農業の競争力強化を図るために国会に提出したわけでございまして、TPP対策と位置づけたものではない。
 そして、平成二十五年の自民党の農業・農村所得倍増目標十カ年戦略、こうしたことを踏まえた形ではありますが、繰り返しになりますけれども、TPP対策として位置づけたものではございません。

○斉藤(和)委員 先ほどの、自民党の皆さんの政策である農業・農村所得倍増目標十カ年戦略を踏まえたものであると。つまり、農業者の所得を倍増していかなきゃいけないというところには重きが置かれているということだと思います。
 そこで、その十カ年戦略でも触れられている問題をちょっと次に見ていきたいんですけれども、農業者の所得というのはこの二十年間半減しているというふうに、この十カ年戦略の中でも書かれてあります。正確には、生産農業所得は、一九九四年は五兆千八十四億円、それに対して、二〇一四年は二兆八千三百十九億円と、ほぼ半減しております。それは、WTO協定締結以降の日本農業のあり方を端的にあらわしていると言えるのではないかというふうに思うわけですけれども、農林水産省としては、このWTO協定締結以降になぜ日本の農業所得がここまで半減したのか、その要因は何だというふうにお考えになっているのか。大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 御指摘のように、生産農業所得の推移は、平成七年は四・六兆円、二十七年には三・三兆円、随分減少しております。そして、農業総産出額が二十七年にはやや増加しているわけでございますし、資材価格が前年並みということであったことから、生産農業所得も二十七年には増大しております。
 ですから、一概に全て減ったというわけではなくて、二十七年にはふえているということも言えるわけでございますが、長期的には、やはりトレンドとして、米の需要が毎年八万トン減少しているというようなこと。そしてさらに、随分農業従事者が多かったわけでございますけれども、全就労人口の今や三%程度になっておりまして、昭和三十七年には三〇%程度だったわけでございますので、その意味では、十分の一ぐらいに農業従事者の割合が減っているというようなこともあります。農産物価格も低迷しているわけでございまして、その意味におきましては、農業がいわば産業として永続可能なものではないという危機に陥っているわけでございます。
 そんな意味におきましては、これから大きな改革を遂げて、自助自立、そして未来ある農業産業、そういう位置づけになり、永続できる、そして若者が雇用できるように変革が遂げられなければ、このトレンドを挽回することができないというような危機にあるというように思っておる次第でございます。

○斉藤(和)委員 いろいろな要因があるけれども、価格も低迷しているというふうに答弁をされました。
 お配りしています資料にもありますとおり、大臣からもありましたお米の生産量で見ても、一九九四年が千百九十八万トンが、二〇一四年には八百四十三万トンに減っています。野菜では千五百四十九万トンが千三百七十六万トン、果樹で三百六十七万トンが二百七十七万トン。そのうち、ミカンは、一九九四年、百万トンを超えて百二十四万トンあったものが、二〇一四年には八十七万トンにまで減少をしています。
 品目の自給率で見ますと、果樹は自給率四七%が四三%、野菜も四七%が四三%になった。豚肉は六五%から五一%に。自給率も品目別に見ても下がっているということです。つまり、やはり全体として生産量が減っているということは見えるわけです。
 さらに、農業所得の減少というのは、生産量の減少だけではなくて、大臣も先ほど言われたとおり、農産物価格の低下、価格が下がってしまっている、ここにやはり大きな原因があるのではないかというふうに思うわけです。
 二〇一三年の「農林金融」に掲載をされました論文があります。「農業所得・農家経済と農業経営」という基礎研究部長の清水さんという方が書かれたものです。「農業所得減少の要因」として次のように書かれています。
 生産量が減少すると同時に、農産物価格も低下した。農産物価格指数、二〇一〇年を一〇〇として見ると、九〇年から一一年までの間に農産物全体で一八・六ポイント低下しましたが、品目別に見ると、米がマイナス五九・八ポイント、肉類がマイナス一一・七ポイントの低下幅が大きく、野菜、果実、牛乳はほぼ横ばいで推移している。
 農産物価格が低下した要因は、価格支持政策の減少、廃止、円高に伴う輸入農産物価格の低下であり、特に米はウルグアイ・ラウンド合意後に食管制度が廃止され政府による米買い取りがなくなって価格が大きく低下した。また、九一年より牛肉の輸入自由化が行われ、同時に進行した円高も相まって牛肉の輸入価格が低下し、国内価格の低下ももたらしたと指摘がされているわけです。
 こうしたもとで、WTO協定の農産物価格、海外からの圧力による低下によって、やはり農業所得全体が大きく減少したというふうに見えるわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 所得と価格の面は連動していると考えております。
 米については、消費が減少する中で、収穫量及び価格も低下しました。野菜については、御指摘のように、農家の高齢化等により、重量野菜、特に大根、白菜を中心として生産量が激減しております。畜産につきましては、経営体が減少する一方で、飼養規模の拡大により生産量及び産出額はほぼ横ばいでございますというような特徴がそれぞれございまして、一概には言えません。
 しかしながら、これからブランド化を図ったり、あるいは輸出競争力をつけたり、あるいは、そのほか、強い農業づくりの観点から、新しい時代を迎えれば、こうしたことに歩どまり感があるだろうというように思っておりますし、今後、我々は、国内市場と海外市場と両道に、倍の生産で価格が上昇していくというようなことも視野に入れながら考えていくということが大事ではないかというように思っております。

○斉藤(和)委員 所得と価格は連動しているというお話がありました。まさに本当にそのとおりだと思います。
 論文でも指摘されていますが、「農業所得増大に向けた課題」として、生産コストの削減や六次産業化による付加価値の取り組み、農産物輸出増大の可能性を指摘するとともに、私、ここからが非常に大事だと思うんですけれども、所得の倍増と両立しない関税撤廃と価格所得政策の再構築、これが必要ではないかということが指摘をされています。この角度が私は非常に大事だし、当然のことだと考えるわけです。
 その一方で、TPPにしても、日米FTAなどにしても、重要品目も含めて広範囲に関税撤廃ということが言われている。そうした状況のもとでも強い農業をつくり、所得の向上を図るというふうにされているんですけれども、所得と価格、これは連動する、外圧によって価格が下がっているという実際がある。そういう状況の中で、この論文で指摘されているとおり、関税撤廃と価格所得政策の再構築というのはこの法案にはないわけですよね。そのもとで両立し得ないと思うんですね、所得の倍増というのが。この辺、大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 一見しますと、関税を撤廃すると安いものがより安く入ってくるというような傾向にあることは否めません。しかし、必ず日本農業がそれで打撃を受けるかというと、そうではないというように考えております。
 我が国の農業の将来性を考えたときに、農業の構造改革の取り組みとあわせて、農業者の努力で解決できない今回の資材価格の引き下げとか流通構造改革とかいうものを図っていくならば、必ずしも私は世界に劣後する農業ではなくなっていくのではないか、こう思っております。
 特に、耕地面積が断然、我が国と比較にならないようなオーストラリアあるいはアメリカというような農業があくまで我が国に脅威かというと、我が国の農業は地域地域の特色を生かした農業でございまして、その意味で、例えば和牛でもアメリカに輸出が急増しておるわけでございますし、オーストラリアとFTAを結びましても、オーストラリア牛が格段に輸入が増加したというわけでもございません。
 そんな意味におきますと、農業というのは、私は、足の速い生鮮食料品を中心に考えれば、必ずしも輸入というものに脅威的な影響があるというようにも思っておりません。今後、我が国が体質を強化することによって、むしろ、どんなに関税を撤廃することによっても永続できる農業がこのチャンスに確立でき得るならば、打って出るということがむしろ容易になってくるような気がしておりまして、その意味において、今の改革、特に競争力強化法案というものはその支えになってくるだろうというように思っております。

○斉藤(和)委員 ちょっと驚いたんですけれども、関税撤廃がさらにされてもということは、関税撤廃をしていくという方向を農水省は考えていらっしゃるということなんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 それは誤解を招きます。関税撤廃は、我々は、今現在何にも考えておりません。そして、それぞれの貿易交渉で我が国の関税はしっかりと守っていくつもりでございます。
 先ほど申し上げましたのは、強い農業という意味で、どこにも負けない、世界じゅうでただ一つの農業をつくっていきたいという希望を申し上げたところでございます。

○斉藤(和)委員 やはり、関税撤廃を前提に物事を考えていくということ自体が私は非常にゆゆしき事態だと思いますし、やはり世界の農業が、先ほど質疑でもありましたけれども、再生産可能な価格や所得をどう保障していくのかということによって農家を支えているというのが世界の流れになっている。そこを抜きに所得を上げるんだと。コストを下げることはいいことだと思いますけれども、それによって全て万々歳、うまくいくという見方は、私はいかがなものか。それはあり得ないし、農業の所得向上には、はっきり言ってつながらないだろうというふうに考えるわけです。
 次に、本法案の中で、農協の問題。第四条と第五条で、農業者や農業団体に努力義務を課し、第十六条で、先ほどもありましたが、五年ごとに効果の検証と必要な追加施策を明記し、附則で、施行後一年以内に調査し、二年以内に施策を検討すると。政府によるチェックの仕組みを盛り込んでいるというふうに読めるわけですけれども、このことが、農協や全農に対する政府による強制的な介入を招くことはないのかという懸念があるわけです。
 ちょっとそこで、まずお聞きしたいのが、この委員会でも出されましたが、二〇一六年の十一月に協同組合がユネスコの無形文化遺産になったこと、これに対して、大臣の受けとめを改めてお聞かせいただけないでしょうか。

○山本(有)国務大臣 ドイツからの申請で、昨年十一月、国際連合教育科学文化機関、いわゆるユネスコが、共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践というものを無形文化遺産に登録することを決定いたしました。それは十分承知しているところでございます。
 登録内容にもありますように、協同組合は、まさに組合員の共通の利益を実現する、そのために組織されるものでございまして、農林水産省としては、その所管する農業協同組合等が、その本来の趣旨に即して健全に発展していただけるということは重要であるというように考えるところでございます。

○斉藤(和)委員 無形文化遺産というのは、世代から世代へと伝承され、社会及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現し、かつ、当該社会及び集団に同一性及び継続性の認識を与えることにより、文化の多様性及び人類の創造性に対する尊重を助長するもの、非常に高い評価がされているものです。
 日本の協同組合連合協議会も、今回の決定を受けて談話を出されていますけれども、そこでも、今回の登録は、全世界で展開されている協同組合の思想と実践が人類の大切な財産であり、これを受け継ぎ、発展させることが求められていることを国際社会が評価したものと考えているという談話を出しているわけです。
 農協や全農も日本を代表する協同組合だと思いますけれども、当然、この協同組合に対して、こうした角度から、リスペクトを持って接すべきですし、そういう協同組合に対して、逆に、組合を潰したりだとか、行政が介入して自主性を損なうようなことがあっては決してならないと思うわけですけれども、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 常にリスペクトを持って臨んでいるつもりでございますが、一般論を申し上げれば、組合員によって自主的に設立された民間組織でございますし、その改革は自己改革が基本というように考えております。
 したがいまして、政府は、あくまでその自己改革を促す立場にございまして、決して強制に及んだりすることのないように考えるべきであろうと思っております。
 また、法的根拠もしっかり押さえていかなければなりません。農林水産省設置法四条、農業協同組合その他の農林水産業者の協同組織の発達に関することに基づいてというところの四条を根拠として、あくまで行政指導という任意の促しをもって、この改革について見詰めていきたいというように思っておる次第でございます。

○斉藤(和)委員 あくまでも自己改革で促すんだと。でも、やっていることがそういうふうには見えないなというふうに感じるわけです。
 この間、規制改革推進会議が、改革の進捗が見られない場合は、国は、生産者のために第二全農なる新組織を立ち上げるというようなことが提言されたり、農協法の改正でも、協同組合であるJA全中の解体を強行したりしてきました。
 協同組合原則は、やはり重要な第一の原則として、自主自立だというふうに思うわけです。農協法の改正は、JA全中が自己改革案をみずからまとめていたにもかかわらず、規制改革会議を中心としてまとめられた改正案が押しつけられたものではないか。農協法の改正のときにも審議の中で指摘をさせていただきましたけれども、この改革案に対して、ICA理事会からも、法改正の方向は明らかに協同組合の原則を侵害するものと考える、そういう批判まで出されたわけです。
 協同組合がユネスコの無形文化遺産に登録されたわけですから、改めて、協同組合の重要な原則である自主自立を決して侵害することはしないし、政府はそうしたやり方はしないと。こうしたやり方は改めるべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 行政手続法の行政指導の三十二条というものには、行政指導に当たっては、「行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。」という条文がございます。この条文に従って、私どもは、団体等の自主性を尊重しながら、おつき合いをしていきたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 任意のものでなければならないしというふうなお話でしたけれども、明らかに強制的な介入をしているようなことが、先ほども紹介したとおり、あるわけですよね。
 今回の法案の中にも、非常にいかがなものかと思うものがあるわけですけれども、農協改革に関する意見が盛り込まれた農業競争力強化プログラムに基づいて、先ほども指摘をしたとおり、第四条、第五条で農業者や農業団体に努力義務を課し、十六条で、五年ごとに効果を検証する、政府によるチェックの仕組みが盛り込まれているということです。
 さらに、附則で、施行後一年以内に調査をし、二年以内に施策を検討するというふうにされているわけですけれども、これは、規制改革推進会議による農協改革案、二〇一四年の六月を起点として、五年間の農協改革集中期間というのが設けられていますが、その成果の期限が二〇一九年の五月なんです。そうすると、ちょうどこの法案に盛り込まれている附則の、施行後一年以内に調査して二年以内に施策を検討するというところと重なるわけですけれども、農協の改革とこの施策、附則で決められているところはリンクする、そういう仕組みになっているんじゃありませんか。いかがですか。

○山本(有)国務大臣 時期が重なることはそのとおりでございますが、この法案において、国が講ずる施策について、おおむね五年ごとに調査と必要な措置の検討を行うとしていますのは、繰り返しになりますけれども、国が講じている施策に対するPDCAサイクルを回したということでございます。
 国としては、法施行直後の状況を把握しておくべきことである、そういう観点から、最初の調査、必要な措置の検討について特例をわざわざ設けて、調査について法律の施行日からおおむね一年以内、そして必要な措置の検討についてはおおむね二年以内に行うというようにしております。
 二十六年六月を起点とする五年が三十一年五月になり、また、この法案を六月に施行するというように万々が一仮定すれば、三十年五月までに最初の調査を行うということでございますので、三十一年五月までに最初の必要な措置の検討が行われることになります。
 しかし、これは偶然の話でございまして、わざわざここにリンクをさせるつもりでこの法案を国会に提出したというものではないということを申し上げます。

○斉藤(和)委員 先ほどの民進党の議員の方の答弁の中で、全農が、農協の改革集中期間、この中でやらなきゃいけないというような認識を持っているという御発言が、御答弁があったかと思われるんですけれども、そう考えますと、やはり偶然だという話ではなくて、かなりリンクをされて、全農の方や農協の方も含めてやらなきゃいけないと思うような、そういう中身になっているというふうなことではございませんか。

○山本(有)国務大臣 先ほど申し上げましたのは、全農の方の御発言の引用でございまして、御発言によると、一、二年でめどを立てたいという御発言もありましたという御紹介をさせていただいたわけでありますので、誤解をいただかないように、再度、全農の方の御意見だということを申し上げます。

○斉藤(和)委員 あくまでも任意であり、強制ではなく、全農による、協同組合による自己改革なんだ、それに政府が強制的な介入を行うことはないという御確認でいいかというふうに改めて確認させていただきたいと思います。
 次に、昨年の十一月の当委員会でも、農業資材価格の引き下げ問題を取り上げました。そこでも指摘をしたんですけれども、我が党は、長年にわたって、この農業資材の価格引き下げをすべきだということを取り上げてきました。
 資材価格の引き下げ問題の本質というのは、メーカーによる独占価格にメスを入れられるかどうかだというふうに考えているわけですけれども、例えば機械の問題が午前中からもありましたとおり、寡占状態にある。
 例えばクボタの財務データを見ますと、総資産は、二〇一二年三月、一兆五千五百五十一億円が、二〇一五年十二月には二兆五千三百二十九億円と、三年半で一兆円ふやしています。
 日本の農業機械は、クボタやヤンマー、井関農機など大手の寡占で価格が高どまりしているという指摘に対して、昨年の十月十日の日本経済新聞電子版で、クボタの社長はこう言っています。「なぜそういう話になるのか理解に苦しむ。」「今の競争環境は適切だ」「価格が高いかどうかはお客様に判断してもらうことだ。」というふうに言っているわけですね。
 大臣として、もし本当に農業機械の価格が高いというのであれば、こうしたメーカーに対して直接指導をして、価格を引き下げるということをやるということが第一に考えられることではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 私が申し上げて下がるということであれば、幾らでも申し上げたいとは思っております。
 農林水産省として、やはり少しでも安い農業機械を調達できる環境を整えるということが大事だろうというように思います。
 そこで、異分野、異なる分野のメーカーの新規参入を促進したいと思いますし、また部品や仕様の共有化、あるいはメーカー間での互換性、こういったものが図られないかどうか、あるいは最低限必要な機能、装備のみを備えたシンプルな農機あるいは高耐久な農機の製造、販売もあわせていただけないか、あるいは農業機械を初めとする生産資材の見える化の推進もやっていただけないだろうかなと。
 このため、今後、こうした取り組みが実施されますように、農業機械メーカーに対して、関係団体に設置されています部会に農林水産省も参加した上で検討を行うなど、農業機械価格引き下げに向けた環境というものを率先してつくり上げていきたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 その適正な価格に農業機械を下げるために、事業再編、事業参入を推進するんだということがこの法案にもあるわけです。
 その農業機械で、コマツが、先ほどもありましたが、参入しようとしていますが、コマツは、ブルドーザーを活用して農業機械の参入をしようとしているわけですね。別に、コンバインとか田植え機をやろうとしているわけではない。
 こうしたことで農業機械の価格は下げられるんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 一つのヒントにはなるだろうと思います。
 ブルドーザーという建設機械を農業に導入することによって、稼働率は飛躍的に上がるわけでございますので、その他のトラクター等における、いわばふだん遣いというものが広がれば、そのコスト、あるいは効果というものが新しい分野で広がっていくだろうというように期待しているわけでございますので、一助にはなるかというように思っております。

○斉藤(和)委員 一助にはなるかというお話なんですけれども、先ほどもあった週刊ダイヤモンドで、コマツの会長さんはこういうふうに言っているんですね。「日本の農家はすでに農業トラクターを持っており、ブルドーザーの農業利用は急には増えないでしょう。農機メーカーも国内で大儲けしているようには見えません。」と。ただ、何でそこに行くかといったら、「海外では将来有望なビジネスになる。」というふうに、海外を視野に入れていて、日本の国内の、要は農機具のコストを下げるというようなことを前提に参入してくるわけではないわけですね。
 こうした状況の中で、やはり農業機械を下げるというのは、参入によって下がるというふうには思えないわけです。
 さらに気になるのが、日本のような多様な農業が展開されている中で、さらに、機械だけじゃない、肥料や農薬も少量多品種生産がされている。銘柄が著しく多数であるために、その生産の規模が小さいから生産性が低い、これを、銘柄の集約に取り組むことを推進するということが第八条に書かれています。
 地域の農業に、ある意味、依存して、共存共栄のような形で肥料や農薬メーカーがあるわけですけれども、これが淘汰されかねないのではないか。そうなった場合に、地域営農や雇用に影響を与えないと言い切れるんでしょうか。

○山本(有)国務大臣 肥料メーカーからは、多くの銘柄を製造することは、製造や在庫管理、包装資材等にかかるコストを増大させるというように、逆に農林省に伝えていただいております。銘柄の集約というのは、メーカー自身の経営改善にも寄与する面もございます。
 そんな意味で進めさせていただきますと、メーカー及びその肥料を使う、利用する農家も両方がいい結果になるだろうというように思います。
 また、メーカーが、持ちつ持たれつ、いわゆる地域雇用に非常に貢献しているという面でございますが、これにつきましては、事業再編計画の認定に当たりまして、当該事業者が労働者側と十分に話し合いを行っていること、雇用の安定に十分な配慮を行っていることについて確認しながらやっていきたいと思っておりまして、認定事業者に雇用されている労働者の皆さんに対しましては、失業の予防や就職のあっせんや職業訓練の実施等の必要な措置を講じながらこの促進を図ってまいるところでございまして、全ては、非常になだらかに、無理のない形での集約を図りたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 雇用に影響を与えるから、条文が入っているわけですよね。
 私、改めて思うんですけれども、本法案の目的というのが、農業及び農業生産関連事業の健全な発展に寄与することを目的としている。その前提となっている農業競争力強化プログラムにおいても、本法案の目的においても、食料自給率の向上とか、例えば、農業者の所得の増大によることも、それによって農業への参入希望をふやすことや、農業生産規模を拡大し食料自給率を向上に結びつけるというような方向性というのは全く入っていないわけです。
 逆に、TPPのような広範な農産物の関税撤廃を前提として、低廉な輸入農産物が流入しても、農産物の価格が下落しても経営も維持できる農業経営体だけが残ればいいんだというような目的に見られかねない法案になっているんじゃないかと思うわけですけれども、大臣、最後、いかがでしょうか。

○山本(有)国務大臣 二つの御指摘だと思います。大規模経営のみを支援するのではないかということと、食料自給率の問題等でございます。
 まず、大規模経営でございますが、これはあくまで、本法案というのは、持続的な農業発展ができる農家の力を強くするという意味でございます。競争力につきましては、価格競争のみを目指しておりません。品質の高さ、安全といった点も重要な競争力の要素だと思っております。
 このため、本法案は、農業者の努力では解決できない生産資材の価格引き下げや農産物の流通、加工構造の改革という構造的課題の解決を図って、農業者による農業競争力の強化の取り組みを支援することを目的にしております。その農業者は、大規模経営ではなくて、耕地面積が小さくても、農産物の高付加価値化や六次産業化に取り組む経営など、多様な担い手を対象としているということにひとつ御注目をいただきたいと思います。
 そして、食料自給率でございますが、カロリーベースで四五、生産額ベースで七三%に引き上げる目標を設定しております。これに向けまして、国内外での国産農産物の消費拡大や食育の推進、飼料用米の推進や消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大、優良農地の確保や担い手の育成の推進等の各種の施策を総合的かつ計画的に進めさせていただいております。
 この法案で、先ほど申し上げましたとおり、農業者の努力では解決できない構造的課題の解決を図っていくことによって、農業者による農業の競争力の強化の取り組みが支援できていくとするならば、本法案の施策にありますように、基本計画に定める食料自給率目標の達成に貢献がむしろできてくるというように考えておりまして、自給率の向上は常に図ってまいりたいというように思っております。

○斉藤(和)委員 やはり全ての農家を支えるというものにはなっていないということを改めて指摘し、それでは食料自給率は改善されないし、発展しない。やはり全ての農家に視点を当てた農業政策こそが必要だということを最後に指摘して、質問を終わります。
 ありがとうございました。