スギの非赤枯性溝腐病が全国のナシにも拡大 2016年5月10日衆院農水委
投稿日:2016年05月10日

190-衆-農林水産委員会-6号 平成28年05月10日

○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 まず、熊本地震について質問します。
 熊本県、大分県地方を中心に今も余震が続いています。避難生活を余儀なくされるなど、被害に遭われた皆さんの生活再建は待ったなしだと考えております。
 昨日、熊本地震による農林水産関係の被害額が千八十五億円と発表されました。しかし、これには、養殖施設の被害額や、水田の亀裂、排水路の損害などによる米の作付ができないなどの額は含まれていない。用水路の被害が深刻な御船町の七滝土地改良区では今期の田植えを見送る方針であるという新聞報道もありました。田植えができなければ、当たり前のことですが収穫はできず、収入が途絶えることになります。今後、引き続き調査が行われることになりますけれども、この被害額というのはさらに膨らむことが容易に想像できるわけです。
 こうした状況の中で、国としてはどのような支援を考えているのか、端的にお示しいただきたいと思います。

○森山国務大臣 斉藤委員にお答えいたします。
 昨日、農林水産省といたしましては、既存の事業の運用を工夫することなどによって、補正予算を待たずに実行できる対策を取りまとめて公表いたしました。
 例えば、畜産の方々も、畜舎が全部倒れているものですから、こういうことに対してどういう制度があるんだろうかということがわからないと、なかなか再生産をしようという気持ちになっていただけないものですから、できるだけ早くお示しできるものはお示ししようということでございます。
 また、引き続き、補正予算で措置をされます復旧予備費なども活用させていただきまして、被災された農林漁業者の皆さんが速やかに経営再建が図られるように、また、創造的な復興にも資するように、必要な対策について検討し、対応してまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 今の制度でできることを早急にやりながら、さらに創造的にという御答弁がありました。非常に私は大事だと思うんです。
 熊本県が、十一項目に及んだ緊急要望を初めとして、さらに国に対して具体的な要望がこの間出されています。これはどれも私は現場からの切実な声であり、要望だというふうに感じました。
 この要望に対して積極的かつ迅速に対応する必要があると考えますが、国として、この県の要望に対してどのように対応しようと考えているのか、その認識をお伺いいたします。

○森山国務大臣 お答えいたします。
 昨日、熊本県知事からは、被災農林漁業者の経営再建に向けた支援をしっかりやってくれ、また、農地、農業用施設の早期復旧への支援をやってほしい、共同施設及び卸売市場の早期復旧復興への支援をやってほしいということでございまして、ちょっとこの市場が余り全国に例がないものですから、民設民営なものですから、といいながら、かなりの取扱量をやっている市場なものですから、そのことへの御心配も大きいのだろうと思います。あと、森林・林業、木材産業の復旧復興への支援、水産基盤の早期復旧及び水産業に対する支援、県が管理する農地海岸保全施設の直轄権限代行による早期復旧について要望をいただきました。
 きのう公表させていただきました内容でも幾らかお応えができると思いますが、本日の閣議におきまして、非常災害として指定をする政令が決定をいたしましたので、これによりまして、海岸保全施設の災害復旧事業の直轄代行が可能となりましたので、直轄代行させていただく方向で検討を進めておるところでございます。
 引き続き、補正予算で措置されます復旧予備費などを活用して、被災された農林漁業者の皆さんの速やかな経営再建を図るとともに、創造的な復興にも資するように、必要な対策について検討し、実施をしてまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 確認なんですけれども、県から出てきた要望に応える立場で頑張るという認識でよろしいでしょうか。

○森山国務大臣 県からの要望にはできるだけお応えする方向で努力をさせていただきたいと考えております。

○斉藤(和)委員 できるだけを本当に全てにおいて県の要望に応えるという立場でぜひ取り組んでいただきたいというふうに感じております。
 次に、先ほど大臣からありましたとおり、熊本県知事が昨日九日に政府に提出した、復旧・復興に係る特別の措置を求める要望の中で、特別要望事項として、「復旧・復興に係る特別な財政措置等のための特別立法措置」が挙げられています。その中には、「地方自治体が財政面で安心感をもって復旧・復興に取り組んでいくためには、国による財政支援への明確な担保と長期的な支援が必要である。」というふうにした上で、新たな補助制度の創設や補助率のかさ上げなどの財政措置及び地方負担分の全額を特別交付税で賄う特別枠など、特別の立法措置を講じていただきたいというふうに書かれています。
 これは総務省の方にお聞きしますけれども、私は、この要望に思い切って応える、そういう決断をすべきではないかというふうに思うわけです。それからもう一つ、県がもし独自に農林水産業に対する対策を打つような条例を制定した場合、被害を受けた方々に補助金を出すことを県が決めた、それに対する交付税措置をすることは可能なのかどうか。この二点をお聞きします。

○内藤政府参考人 お答えいたします。
 今回の熊本地震を受けまして、先ほど来お話ございますような要望が提出されているものと承知をいたしております。
 まずは、関係省庁におきまして、こうした要望を十分に踏まえて、国庫補助制度等の充実によりできる限り地方負担の軽減を図る、これが重要かと存じます。
 その上で、総務省といたしましても、地方単独事業として対応せざるを得ないものも含めまして、なお残る地方負担につきましては、特別交付税を含め、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じまして、被災団体の財政運営に支障を生じることがないよう適切に対処してまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 もう既に町の予算の一年分を超えているだとか、一割負担もできないという声が自治体の方から上がっているということもお聞きしています。ぜひ、本当に、できる限りというよりも、地方負担が最大限ないように取り組みを強化していただきたいというふうに求めます。
 次に質問を進めたいと思います。
 全然テーマがかわりまして、杉の非赤枯性溝腐病という問題について質問をいたします。
 この杉の非赤枯性溝腐病というのは、一九六〇年に茨城県で初めて確認をされた後、一九六四年には千葉県でも確認をされます。
 非赤枯性溝腐病というのは、かかってしまうと幹の側面に縦長の溝が形成されて、腐朽が進むと溝の中央部は樹皮が剥げ、腐朽部を露出するような状態になる。植栽後約二十年経過してから特徴的な溝が確認されるといったような病気です。この非赤枯性溝腐病にかかってしまった杉というのは、伐採をして、この病気にかかりにくい苗木に植えかえる事業が今行われています。
 千葉県は、昭和初期に全国的に蔓延した赤枯病に強いということで「サンブスギ」を奨励し、一九九六年に、千葉県の調査によると、杉林全体の一七・八%を占める七千七百三十四ヘクタールにこのサンブスギが植えられているんです。しかし、この赤枯病には強かったサンブスギが、非赤枯性溝腐病にはかかりやすいという弱点がありました。
 九六年の時点で半分以上のサンブスギが感染されるという調査が出ているんですが、調査から二十年たった今では、この病気にかかってしまった被害林というのはさらにふえて、被害が全くない林というのは五%ぐらいしかないのではないかという話になっています。しかも、伐採、植えかえには当たり前のようにお金も人手も必要です。しかし、伐採した杉は、本来一万円ぐらいで値がついて取引されるものが、二、三千円の木質バイオマスの原料にしか今現在なりません。
 こうした状況の中で、千葉県は、平成九年から本格的に対策を始めるんですが、二十年で、七千ヘクタールあると言われている被害林のうち、やっと千ヘクタールまで伐採対策ができた段階、今年度の伐採対策は十六ヘクタールなんです。
 自治体任せにしないで、この被害林を早急に解決していく必要があるというふうに私は考えるわけですが、国として思い切った支援をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○森山国務大臣 お答え申し上げます。
 杉の非赤枯性溝腐病につきましては、昭和三十年代から被害が確認をされており、現在、千葉県において集中的な被害が発生をしており、その被害面積は四千ヘクタールに及んでいるのではないかと承知をしております。
 この病気につきましては、これまでも国の試験機関の課題として取り組んでまいりました。昭和三十九年に、当時の農林省林業試験場において原因となる病原菌を突きとめたほか、サンブスギが他の杉の品種に比べて被害が発生しやすいこと等を明らかにしてきたところでございます。
 その後、林業試験場が国立研究開発法人等へ移行した後も、国立の試験研究機関が中心となりまして、原因となる病原菌に対処する技術開発、苗木段階での抵抗性の評価等について試験研究を行っているところでございます。
 農林水産省としましては、今後とも、国立研究開発法人森林総合研究所の運営費交付金の確保等を通じまして、杉の非赤枯性溝腐病対策については積極的に支援をしていく考えでございます。

○斉藤(和)委員 この非赤枯性溝腐病はサンブスギがかかりやすい。それは千葉県に多いので、これまで千葉県の問題だというふうにされてきました。しかし、このサンブスギの苗木というのは、昭和三十年から四十年代にかけて広く流通をし、最盛期では年間四百万本生産されていた。福島や関東一円、愛知や愛媛にも植栽されていたというふうにもされています。
 さらに、二〇一四年に千葉県の森林総研が、非赤枯性溝腐病と病原菌、今発見されたというお話がありましたけれども、この病原菌がチャアナタケモドキというキノコの一種なんですが、に関する最近の知見という報告を発表しています。そこには、関西でもこの罹病が報告されたと。「千葉県以外の地域では、初めて「サンブスギ」とは異なるクローンのスギで罹病が確認された。以上から、本病の発生は「サンブスギ」や千葉県に限定されるものではなく、他のクローン及び地域においても問題となる可能性が示された。」とこの報告書には書かれています。
 これ以上の病気の拡大を防ぐために、研究機関として研究を進めることと同時に、私は、森林の再生事業において補助金を増額するだとか、やはりその担い手を一方で育成する必要がありますので継続的な支援を国としてしっかり行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○今井政府参考人 お答えいたします。
 林野庁では、毎年、各都道府県に対しまして、森林病害虫等に係る森林被害について、県からの報告を求めるという形の調査を行っております。
 杉の非赤枯性溝腐病につきましては、これまで千葉県からのみ被害報告がなされておりましたけれども、先生御指摘のとおり平成二十四年に京都でも発生が確認をされたところでございます。
 林野庁といたしましては、京都のように新たに病害虫の発生が確認されたところには、森林総合研究所による現地調査も行いましたけれども、今後とも各都道府県に対する森林病害虫等調査を引き続き毎年継続して実施するほか、こうした報告結果や現地の調査結果につきましては各都道府県及び試験研究機関と情報を共有していく、そういった取り組みを徹底していく考えでございます。

○伊東副大臣 私からは、補助金の増額、あるいは事業を継続的に取り組む点についての国の支援策についてお話をさせていただきます。
 この非赤枯性溝腐病による被害を抑え、森林の多面的機能の発揮を図るためには、この病気の早期解消に向けまして、委員御指摘のとおり被害木の伐採、除去と植えかえを促進することが何よりも重要であります。
 このため、環境林整備事業におきまして、植栽や保育に加え、被害木の伐採についても支援の対象としているほか、公的森林整備事業によりまして、市町村等が実施主体となる場合には通常六八%の補助率を九〇%にかさ上げして支援することといたしております。
 今後とも、千葉県ほか関係県と緊密に連携しつつ、これらの対策を継続的に進め、この溝腐病による被害の早期解消に努めてまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 本当に対策が待たれているんです。
 ただ、千葉県の要は森林の一筆の面積が平均〇・三ヘクタールと非常に小規模で、所有者や境界が不明な山林も非常に多い。これは森林法の改正にもかかわるんですけれども、今後、市町村が林地台帳を整備する、自治体の作業負担の軽減だとか、そもそも、やはり境界が確定されていないために、伐採をしようと思ってもなかなかそれが進まないという現状がある。そうした不在村地主の明確化だとか、そもそも境界をはっきりさせるための地籍調査を、こういう被害林を優先してやるということが必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○伊東副大臣 御指摘のとおりでございます。伐採するためにはその林地の所有者の了解が必要なところであります。小規模な森林所有者が多いこと、あるいはまた森林の境界がわからないということがあって、この伐採、改植が進まないわけでございます。
 こうした中で、農水省といたしましては、今国会に森林法改正法案を提出し、先般、衆議院におきまして可決いただきましたが、この法案におきましては、市町村が森林所有者や林地の境界に係る情報等を一元的に取りまとめて林地台帳として整備する制度を創設することといたしております。
 市町村が林地台帳を整備するに当たりましては、既に都道府県側が整備している森林簿の情報や、約半数の市町村で既に整備しております森林GISの活用ができること、また、法施行から二年間の準備期間を設けること、さらに、平成二十八年度の地方財政計画におきまして、林地台帳の整備を含む森林・林業対策に新たに五百億円が計上されたことなどによりまして、市町村に対する過度の負担とならないようにしながら整備を急ぎたい、このように考えているところでございます。

○斉藤(和)委員 ぜひ、被害林を優先するという形で推進していただきたいというふうに思います。
 実は、この非赤枯性溝腐病の病原菌チャアナタケモドキ、これは杉だけの問題ではありません。コウヤマキの枝枯れだとか、サワラやヒノキの材質腐朽の原因菌もチャアナタケモドキだと言われています。
 さらに深刻なのは、森林だけではなくて果樹にも影響し、梨の萎縮病の原因菌もこのチャアナタケモドキであることが近年発表されました。梨の萎縮病にかかると、春先に出る芽の葉っぱの発育がおくれて、葉が波打ったり、葉の縁が黒くなる、最終的には木全体が枯れてしまう。もちろん実がつかない、実がついたとしてもピンポン球程度。生産農家にとっては、この萎縮病にかかってしまうということは大きな損害になる病気なわけです。
 ここでお聞きしますが、この梨の萎縮病は全国でどのような発生状況になっているか、お答えいただけますか。

○小風政府参考人 お答えいたします。
 梨の萎縮病は、糸状菌によって引き起こされまして、感染すると葉に萎縮症状があらわれ、ひどくなると枝や木全体が枯れる病気でございます。樹勢が弱い老木で発生が顕著でございます。
 日本各地で古くから発生が報告されておりましたけれども、長い間その病原菌は明らかになっておらず、平成二十三年になって初めて病原菌チャアナタケモドキが特定されまして、診断が可能となりました。
 これまで本病の発生状況につきましては全国規模での調査を行っておりませんでしたけれども、平成二十四年に独法の農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所が実施しました梨の萎縮病のワークショップにおきまして、少なくとも二十四県で広く本病が発生している、あるいは幸水という品種で発生している、そういうことが報告されております。

○斉藤(和)委員 つまり、調査されていないんです。
 私は、先ほども紹介しましたけれども、この梨の萎縮病というのは、秋田、福島以南、本州各県、四国、九州に至るまで、日本各地で発生していると。梨というのはそもそも沖縄県以外全ての都道府県で栽培されていますので、早急にこの梨の萎縮病について全国調査を行うということが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○森山国務大臣 お答えをいたします。
 梨の萎縮病につきましては、平成二十三年に農業・食品産業技術研究機構の果樹研究所におきまして診断方法が確立をされました。これを受けまして、平成二十四年の五月から六月にかけまして全国四カ所で梨の萎縮病の診断ワークショップを開催させていただきまして、情報の徹底を図りました。
 その結果、大体わかってまいりましたのは、太平洋側での発生が非常に多い傾向にあるなということもわかりましたし、また、梨では幸水という品種が極めて発生が多いということもわかりました。
 今後も、梨産地を有する各県の病害虫防除所や農協等においてこの診断方法を活用していただきまして、発生状況の適時適切な把握に努めていくことが必要であるというふうに考えておりまして、国としては、梨の主産県の意向も踏まえながら被害状況の調査等に取り組んでまいりたいと考えております。

○斉藤(和)委員 ぜひ、被害状況をつかむという立場で取り組んでいただきたいと思います。
 それと同時に、やはり農業者の皆さんは、防除方法、どうやったらこの梨の萎縮病を防げるのかということも非常に求めていますので、プロジェクトチームをつくるなどして、林業だけではなくて果樹にも広がっていますので、分野を超えて、このチャアナタケモドキによる病気がどんなものなのか、どうやったら防げるのか、これをぜひ原因究明していただきたいということをお願いします。

○森山国務大臣 この病害につきましては、同じ病原菌の感染により発症するなど、共通のところがあります。
 今後は、林業と農業の分野を超えて、関係する機関が研究成果に関する情報の交換を行うなど連携した取り組みが必要であると考えておりますので、そのことをしっかりやらせていただきたいと考えております。

○小里委員長 終了してください。

○斉藤(和)委員 はい。
 ぜひ連携して原因究明を進めていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
 ありがとうございました。