違反の輸入食品が大量に国民の口に TPPは食の安全を脅かす
投稿日:2016年04月22日

 斉藤和子議員は4月22日、衆院TPP特別委でTPPと食の安全について質問。食品衛生法違反の輸入食品が大量に流通、国民が口にしていることを明らかにし、TPPによる輸入の急増で重大な事態となることを追及しました。

■水際で留め置きしない「モニタリング検査」
 輸入食品の検疫は行政による検疫と民間検査機関による検疫があります。行政による検疫は、輸送してくる途中で事故があったものなどの検査を除いて「モニタリング検査」で行われます。これは、輸入食品のサンプルを無作為に抽出し、食品衛生監視員が検疫所で行う検査。しかし、水際で留め置きをしないので、検査結果が出る前に流通してしまいます。しかも、この検査すら食品輸入全体(件数)のわずか2.6%しか行われていません。そのため、食品衛生法違反の輸入食品がどんどん市場に流れ込んでいます。

 2014年度で見ると、残留農薬違反の生鮮トマトは8.4㌧が検疫を素通り。1人分を150gとすると、実に5万6000人分の違反トマトが国民のおなかの中に入ったことになります。残留農薬違反の生鮮キャベツは800人分、残留農薬違反の生鮮マンゴーは5225人分、残留農薬違反の青とうがらしは9100人分、食中毒菌汚染の冷蔵むき身あかがいは3000人分が販売・消費されてしまっています。これ以外にも、一部販売済み・消費済みのものがたくさんあります。

 委員会で厚生労働省の福田祐典生活衛生・食品安全部長に確認したところ、03年度から14年度までに274件の違反輸入食品が全量消費済み・全量販売済み。一部販売・消費済みを含めるともっと大量の食品が流通してしまってます。07年度には安全性未審査遺伝子組み換え米で製造された乾麺ビーフン951㌔が流通。よくある一食65gの焼きビーフンに換算すると1万4630食も消費されたことになります。

 塩崎恭久厚労相に「二度と起こらないと言えるか」と聞くと、「完全に流通を制限するのは難しい。検査の精度を上げられるよう努力する」と答弁。しかし、これは現場の努力でなんとかなるような問題ではなく、制度によって引き起こされるものです。

 1993年、それまで行われていた輸入食品監視業務について米国などから「検査の迅速化、規制の緩和の要請」(総務庁行政監察)があり、この圧力を受けて1995年に食品衛生法を改悪。水際で検査結果が出るまで留め置きをする検疫検査から、単なる監視としてのモニタリング検査に改変してしまいました。留め置きの検疫検査をしないのですから流通してしまうのは当然です。

■遺伝子組み換え食品もおなかの中へ、さらに緩和も
 TPPでは、遺伝子組み換え食品の貿易ルールに関する規定が初めて設けられ、その促進が図られることになっています。前述のビーフンのような安全性が未確認の遺伝子組み換え食品の微量混入による貿易の混乱を防ぐ規定があれこれ盛り込まれました。しかしこれは、遺伝子組み換え作物を生産するモンサント社の強い要望を受けたものではあっても、消費者が望む規定ではありません。

 さらに、TPPでは、これまでの自由貿易協定では導入されたことのない48時間通関制度が導入されようとしています。2009年の財務省の調査では、日本の一般貨物の輸入手続き平均所要時間は62.4時間、動植物検疫や食品検疫対象貨物では92.5時間に及びます。懸念されるのは、48時間検疫をクリアするために無検査輸入が増えるのではないかということです。

 つまり、これまで2件検査していたものを1件の検査にすれば、平均所要時間は半分になります。現在、このような懸念は現実化しています。HACCP導入企業で製造された食品については、無検査輸入を検討していることが報道されました。HACCP導入企業であってもずさんな食品製造がありうることは、マクドナルド関連の中国企業が期限切れの肉でチキンナゲットを製造していた事例が証明しています。

 石原伸晃TPP担当相は、TPPにより輸入が増加することを認めました。遺伝子組み換え食品の輸入が促進され、無検査輸入が堂々と行われるなど、TPPは食の安全に真向から反するものです。こんなTPP協定は、継続審議ではなく、廃案にすべきです。
TPP特
※委員会で使用したパネルは資料室にアップロードしています。

(スタッフK)