零細漁業者に手厚い漁船保険・漁業共済を 農水委で質問
投稿日:2016年05月11日

 衆院農水委員会は11日、漁船保険・漁業共済制度を改善するための漁船損害等補償法・漁業災害補償法改正案を全会一致で可決。これに先立つ審議で斉藤和子議員は、零細な漁業者にもより手厚い制度を要望しました。

■零細な業者に手厚い制度に
 この法案は、全国の漁船保険組合を統合して保険金支払い財源を強化するとともに、填補する損害範囲を拿捕・抑留などによる損害などにも拡大するもの。また、養殖共済の全員加入制度を撤廃して個々の漁業者が加入しやすくし、対象を海面養殖だけでなくウナギなどの内水面養殖にも拡大するほか、ノリやホタテなどの特定養殖共済については漁業を主な生活基盤とする漁業者により有利となるよう改善するものです。

 斉藤議員は質疑で「漁船保険の加入隻数は2005年から2014年までの10年間で3万5000隻も減少している」とし、「減少が続いた場合、保険料の値上げはあるのか」と質問。佐藤一雄水産庁長官は「加入隻数の減が保険料の引き上げには必ずしも結びつかない」としつつ、統合によって「安定した事業基盤により保険の運営ができる」と答えました。
 また、東日本大震災のような自然災害の場合でも、保険金・共済金の支払いを受ければ等級が下がって保険料・掛け金が上がってしまうことに触れ、「漁民の方々の負担増にならないようなやり方を検討していただきたい」と要望。佐藤長官は「被災した漁業者に過度な負担とならないよう、率の据え置きまたは調整を行った」としましたが、一般論として料率を据え置くことには難色を示しました。
 さらに斉藤議員は、全国45の漁船保険組合が統合されても職員の削減は行わないことを確認。①一方で北海道の漁船が長崎で被災した場合、これまでは北海道の職員が出張して審査していたが統合後は長崎の職員が審査できるなど業務が効率化できることから、その分保険料が引き下げられること②支所ごとに運営委員会を設置し、組合員の声をしっかり反映させること③3年間無事故だった場合に保険料の一部を払い戻しする「無事戻し制度」を全国統一で実施すること、なども確認しました。

 漁業共済については、加入の実態について質問しました。
 漁業共済のうち漁獲共済、養殖共済、特定養殖共済の平均は約7割とされていますが、この値は漁獲金額をもとに算出されています。しかし、加入率を漁業者の数では把握してないのです。
 斉藤議員は、茨城県では漁獲金額で見ても漁業者数で見ても加入率は100%なのに対し、鳥取県では漁獲金額で97%なのに漁業者数では45%に過ぎないことを指摘。「漁獲金額のみで加入率を計算すると、水揚げが大きい船がたくさんあるところでは、共済に入ってない零細な漁業者が多くても隠れて見えなくなる」として、実態をしっかり把握する必要があると主張しました。

■うなぎ資源は危機的状況、調査と資源管理を
 このほか、斉藤議員はウナギの資源管理についても質問しました。
 市場に出回るウナギの多くは河口などで採った天然のシラスウナギを養殖池に入れて育てたもの。1960年代後半までは100㌧を超えていたシラスウナギの国内採捕(さいほ)量は、いまや数㌧まで減少しています。
 日本がシラスウナギを世界中から輸入したことで、国際的な商取引を規制しようという動きも起こっています。2008年にはヨーロッパウナギがワシントン条約付属書Ⅱに掲載され、ほとんど輸入禁止状態になりました。2014年にはニホンウナギ・アメリカウナギがIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに掲載されています。
 日本はウナギの大消費国として、一刻も早くウナギ資源の持続的利用に向けた管理が国際的にも求められている状況です。こうした圧力に押され、日本はウナギ養殖業を届け出制から許可制に変更し、2015年からスタートさせました。
 しかし、それでも関係各国や自然保護団体の危機感は高まっています。アメリカやEUは今年9月に開かれる野生生物の国際的な取引を規制するワシントン条約の締約国会議で、ニホンウナギの貿易規制に向けた提案を提出することが検討されていると報道されていました。実際にこの提案はされませんでしたが、シラスウナギの資源量と取引の実態について議論し、調査すべきであるとの提案はなされます。2019年に開かれる次の締約国会議で提案される可能性は低くないとみるべきです。
 斉藤議員はこの点について水産庁にただしましたが、長官は「ウナギ種について情報収集や評価を行うことは、資源管理に資する」と答えました。不透明な取引の実態を徹底的に調査すべきです。

■藻場・干潟の造成をもっと
 資源の問題にかかわっては、藻場・干潟の造成についても、抜本的な予算増額を要望。「藻場・干潟は豊かな生態系をはぐくむ生命のゆりかごなのに、高度成長期の産業開発によってコンクリートで海岸を固め、壊し続けてきた。94年から98年にかけて5万7543㌶も減少している」と指摘し、「(現在の造成は)年間1300-1500㌶程度に過ぎない。もっと増額を」と訴えました。森山裕農水大臣は「目標設定や内容の充実について鋭意検討を進める」と答えました。
 さらに、斉藤議員は、5月26ー27日に開かれる伊勢志摩サミットの警備で、現地で盛んな真珠養殖の作業に支障を来さないよう要望。党三重県委員会が同様の申し入れをしたことを踏まえ、地元の観光産業にも支障を来さないよう念を押しました。

 漁船損害等補償法・漁業災害補償法改正案は日本共産党を含む全会一致で委員会で可決されました。