斉藤和子衆院議員は2月15日、衆院農林水産委員会で日米首脳会談について質問しました。TPPが発効しないことがはっきりしたにも関わらず、TPPに付随する日米間の取り決めを「自主的に推進する」という政府の姿勢が明らかになりました。
米離脱後もTPPに固執する政府の姿勢
トランプ大統領は、「TPPから永久に離脱する」とする大統領令に署名し、その意向を30日、参加各国に通知しました。TPPは発効前の離脱手続きを定めていませんが、この通知をもって離脱は完了し、TPPは発効しないことが事実上確定しています。
ところが政府は、斉藤氏が「日米首脳会談の共同声明で『米国がTPPから離脱したことに留意し』としたのだから、TPPが発効しないことを政府として認めたと理解してよいか」と質問したのに対し、「米国の脱退宣言は法的に有効ではない」と詭弁を弄し、「決してTPPがすべて終わったという認識ではない」とする姿勢に固執しました。
また、山本有二農水大臣は農産物の関税引き下げが行われないことへの感想を問われ、「TPPが持つ戦略的、経済的意義を、腰を据えて理解を求める」と答えて多くの農業者の気持ちを逆なでしました。
日米FTAは際限ない関税引き下げを招く
日米首脳会談の共同声明では、「日米二国間の枠組みについて議論する」とあります。これは米国内のロビー団体による強い要望によるものです。
例えば、牛肉、豚肉の農業団体は米国政府に対し、TPPに代わり日本との関税引き下げ交渉(自由貿易協定、FTA)を優先的に開始せよと強く要望しています。トランプ大統領はこうした国内の声に応え、日米首脳会談でFTAを共同声明に盛り込むよう安倍首相に要求したとの報道もなされています。
そもそも、日本はTPPに参加する際、米国議会に参加を承認してもらうため、日豪の経済連携協定(EPA)をあわてて結んだという経緯があります。当時、甘利担当大臣は「(日豪EPAは)加速材料だ。アメリカの牛肉はオーストラリアの牛肉と競合する。(アメリカは)何とかしなきゃ、という気持ちになるだろう」と答弁しました。長年難航していた日豪EPAが急きょ妥結したのは米国に日本のTPP入りを懇願するためだったのです。
ところが当のTPPがなくなったため、無理に妥協して牛肉関税を大きく引き下げた日豪EPAだけが残っている状態になってしまいました。斉藤氏は「逆に、日豪EPAがあるがゆえにアメリカからよりレベルの高い要求が持ち込まれることになる」と指摘。「日豪EPAとTPPは連動規定があり、TPPによって日豪EPAより関税が下がった場合は、それに準じてオーストラリアの関税も引き下げることなっていた。もし今後、日米の自由貿易交渉(FTA)でオーストラリアより関税を下げることになった場合、当然のようにオーストラリアも引き下げを要求してくることになる」と述べ、「アメリカとオーストラリアという巨大農業国に挟まれ、関税引き下げ競争の交渉に巻き込まれる。これは外交政策の失敗、最悪の事態だ」と強調しました。
TPPは発効せずとも、日米の取り決めは自主的に実行
さらに斉藤氏は、TPPと並行して日本が米国と取り交わした21の交換文書(サイドレター)の効力について質問。政府は「法的拘束力はないが、非関税障壁に対する措置については、今後自主的に行う」と答弁しました。
斉藤氏は「交換文書には、収穫前や収穫後に使われる防カビ剤をもっと認めろというものや、日本未指定の国際汎用添加物を1年以内に日本の添加物として認めろというものもある。自主的にやってはいけない」と述べ、「アメリカが撤退すると明確に言っている中で、しがみつくようにすり寄るということは、日米二国間交渉になったときにはもっとすり寄るということになりかねない」と批判しました。
(スタッフK)