暴言大臣 農家の怒りの声が聞こえないのか 農水相不信任賛成討論
投稿日:2016年11月11日

 斉藤和子議員は10日、衆議院本会議で野党4党が共同提出した山本有二農林水産大臣の不信任決議案に対し、賛成討論を行いました。以下全文を掲載します。

 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました、山本有二農林水産大臣に対する不信任決議案に賛成の討論を行います。
 山本大臣が大臣の職に値しないと考える第一の理由は、国会審議を愚弄する2回の暴言にあります。山本大臣は10月18日に開かれた、佐藤勉議員運営委員長のパーティーで、「私は内心思っております。強行採決するかどうかは、この佐藤勉さんが決めるんであろう。ですから、私ははせ参じたわけでございます」と発言しました。この発言の何が言語道断なのか。強行採決をけしかける発言であり、国会審議を軽視し、行政が立法に介入する発言だからであります。
 その後大臣は「不適切な発言でご迷惑をおかけし申し訳ない」と陳謝しました。しかし、その直後の11月1日、田所よしのり議員のパーティーで、「こないだ冗談言ったら首になりそうになりまして」などと発言しました。「強行採決」発言は「冗談」だったというのです。冗談に対して陳謝したとでもいうのでしょうか。山本大臣は、発言の重大性を認識しておらず、反省もしていないと言わざるをえません。

第二の理由は、山本大臣は農林水産大臣でありながら、農家の気持ちに背を向け続けている点にあります。
 山本大臣は先に述べた11月1日の田所議員のパーティーで、「JAの方々が大勢いらっしゃるみたいでございますので、明日でも田所先生のご紹介で農林省に来ていただければ、何かいいことがあるかもしれません」と発言しました。まさに利益誘導と言わざるを得ません。
その一方で、農家の本当の願いには不誠実極まる態度を取っています。その姿勢は9月に発覚した輸入米価格偽装問題での対応に端的に表れています。山本大臣はTPP特別委員会で「輸入米は国産米価を押し下げていない」と答弁してきました。しかし、報道によると実際には、輸入米は国産米より二割も安く取引されていたというではありませんか。「輸入米と国産米は同じような価格だから影響はない」としてきた政府の主張を揺るがす大問題です。何をおいても真実を究明するのが大臣の責任ではないでしょうか。
にもかかわらず、山本大臣はまともな調査を行おうとはせず、審議を強行しました。減反や飼料用米への転換を余儀なくされてきた多くのコメ農家が、「だまされた」と怒りの声を上げるのも当然です。一体どこを向いて仕事をしているのか。目を向けている方向が全く間違っていると言わざるを得ません。農家に対してこれほど不誠実な大臣が、農林水産大臣の職にあっていいと言えるでしょうか。

 第三には、そもそも農林水産業に甚大な打撃を与えるTPP協定を推進するなど、農林水産大臣のすることではないという点です。
 政府がTPP協定交渉参加を決めた2013年に、衆参両院は日本にとって重要な米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5つの農産物について「除外」または「再協議」すべきとした国会決議を行いました。にもかかわらず、重要農産物を材料とする品目の3割で関税が撤廃されることになっています。米、麦、乳製品、砂糖については輸入枠が新設され、牛・豚肉では大幅に関税が引き下げられます。日本だけに課せられた7年後の再協議規定で、さらに厳しい譲歩も強いられます。国会決議に違反しているのは明白ではありませんか。
まさにTPPは、農業を続けるかどうか悩む農家を蹴落とす協定であり、食料主権より多国籍企業の利益を優先し、全国の農林水産業を破壊して、美しい自然と地域社会を荒廃させる協定です。こんな協定をおしすすめる農林水産大臣に、大臣たる資格があると言えるでしょうか。
 大臣は2015年の11月、すなわちTPP大筋合意の後に、大臣の選挙区である高知県須崎市で開かれたJA土佐くろしお主催のJAまつりで、「TPPの詳細を速やかに開示し、国会・国民の議論を保障すること」「合意は撤回し、協定への調印・批准は行わないこと」を求める署名に署名したのではなかったですか?そもそも、2012年の総選挙では「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない」と約束して当選なさったのではなかったですか?もはや、どこからどう見ても農林水産大臣の資格はないと言わざるをえないのではないでしょうか。

 最後に、このような大臣を任命した安倍総理の責任も重大であることを指摘しなければなりません。
 総理は、「無為に時を過ごせば再交渉を迫られる事態を引き寄せる」などと発言していました。国会での徹底審議を「無為に時を過ごす」などと中傷し、議会制民主主義を踏みにじるこの姿勢は、山本大臣と全く同じであります。
そして、11月4日、議院運営委員会で本会議の日程を協議している最中に、委員長の職権でTPP特別委員会が開会され、TPP協定及び関連法案は強行採決されました。佐藤勉議院運営委員長は「20年間の経験で初めてのこと。こんなことがまかり通れば議運はいらない」と厳しく指摘しました。まさにその通りです。政府・与党は野党の質疑権を一方的に奪い、山本大臣の暴言通りを実行したのであります。山本大臣とともに、安倍総理の責任も糾弾されなければなりません!
 いまやTPP参加のどの国でも、TPPに反対する市民の声が渦巻いています。それは、TPPが投資家や多国籍企業の利益を優先して、国民の権利と国の主権を危うくし、食の安全を脅かし、雇用を奪うからであります。アメリカでは、TPPに断固反対だという大統領が誕生しました。これはTPPに対する市民の審判であります。
 今からでも遅くありません。この国の津々浦々に渦巻いている国民の声に耳を傾け、本日予定されているTPP協定及び関連法案の採決はやめるべきであると最後に訴えまして、山本農林水産大臣に対する不信任決議案への賛成討論といたします。