斉藤和子衆院議員は18日、衆院TPP特別委員会で質問に立ち、輸入食品の安全性をテーマに安倍総理を追及しました。斉藤氏は基準値の26倍の農薬が検出されたオクラなど、食品衛生法違反の輸入食品が大量に流通している実態を示し、「こんな状況でTPP批准など到底許されない」と批判しました。安倍首相は「(基準値を超えていても)健康に影響はない」と強弁しました。
参院選の選挙公報にTPPは一切ない
斉藤氏はまず、自民党がことし7月の参議院選挙でTPPについてほとんど触れていないことを指摘しました。自民党の参議院選挙比例代表の公報には、TPPについての記述が一切ありません。同党の公認候補の公報でも、TPPの影響がもっとも懸念されている北海道をはじめ、青森、秋田、宮城、福島など、全国のほとんどの選挙区で記述がありませんでした。選挙中に安倍首相が各地で行った演説でも、NHKでの政見放送でもTPPにはほとんど触れませんでした。
にもかかわらず、選挙後の対日投資セミナーでは安倍首相は「できるだけ早く国内承認を得て、TPPを早期発効させる」などと演説し、国会での所信表明でも「TPPの早期発効を大きなチャンスとし、(中略)TPPが拡大していく気運を積極的に作る」としました。
斉藤氏は「選挙が終われば最大の課題だとばかりに早期批准に突き進むのは、国民に対して失礼だ」と追及。安倍首相は「すでに国会に提出している」「それ(TPP)をやらないとは誰も思ってない」と言い訳しました。
現在でも輸入食品のチェックはままならない
次に斉藤氏はTPPと食の安全について質問しました。政府のTPP関連政策大綱では「TPP協定により、我が国への海外からの輸入食品の増加が見込まれる」「輸入食品の適切な監視指導を徹底するための体制強化に努める」とあります。にもかかわらず、動植物検疫を担当する農水省、食品検疫を担当する厚労省は輸入食品がどれだけ増加するかの見通しを持っていません。日本は今でも全世界から3190万㌧、国民1人あたり年間250㌔、カロリーベースで食糧消費の6割を輸入食品に依存している輸入食品大国。TPPで大幅に輸入が増えると、安全性をチェックする体制が追いつかなくなる可能性があります。
斉藤氏は2015年度の輸入食品の検査率(輸入食品の届け出件数に対する検査を実施した割合)が8.7%と2002年以来、最低の検査率となっており、91.3%の食品が無検査で輸入されていると指摘。また民間ではなく行政が直接行っている行政検査は2.5%と戦後最低の割合となっていることを告発しました。
そのうえで斉藤氏は「実際に検査を担っている食品衛生監視員は年間200万件を超える輸入件数に対してわずか408人しかおらず、2016年の増員もたった2人だ」と述べ、「指導監視が十分とは到底いえない。安全性を確保するには、3000人体制が必要との声がある」と批判しました。検疫所はOECDのGLP基準(Good Laboratory Practice)によりパートやアルバイトで補うことはできません。専門的技術を持った正規職員を抜本的に増やすしかないのです。安倍首相は「厚労省から来年度は19人の増員要求が出ている。政府としてよく考える」と答えざるを得ませんでした。
実際に汚染食品が流通している
実際、農薬や微生物に汚染された食品が市場に大量に出回っています。2014年度には、基準値の2倍から4倍の農薬(フルキンコナゾール)が検出された生鮮トマトが8.4㌧、5万6000人分が出回り、検疫所による検査で農薬が検出された時には既に全量消費されてしまっていました。同様にキャベツ、マンゴー、トウガラシなどにも残留農薬が検出。食中毒の原因となる腸炎ビブリオが検出された冷凍むき身赤貝もすべて消費されてしまいました。
この状況は続いています。2015年度は基準値の26倍ものフルアジホップという農薬が検出されたオクラをはじめ、2倍の農薬(テブコナゾールやジフェノコナゾール)が出た生鮮バースニップ(にんじん)のほか、鶏肉、ラズベリー、まつたけなどの残留農薬違反の食品が国民の口に入ってしまいました。中でも、基準値の2倍のチアメトキサムが出たたまねぎは、2万4012㌔、約24万120人分という非常に大きな量が流通、すべて消費されていました。
斉藤氏はこれらの事実を示して「国の検査制度には欠陥がある」とし、「本来出回ってはいけないものが出回り、消費者に食べられてしまっている。このまま放置してよいのか」と迫りました。安倍首相は米国やEUでも同様の制度が採られているとし、基準値は厳しく設定されているから「著しく(基準を)超過したものでない限り、健康被害が発生する可能性は低い」と強弁しました。
こんな状況でTPP批准など許されない
首相は米国やEUなどをあげましたが、そもそも食糧自給率が100%を超える国と、世界有数の食料輸入国とを同列に論じることはできません。それに、健康被害が起きないというのなら、一体何のための基準なのか。守らなくてよい基準なのかが問われてしまいます。
斉藤氏は「こんな実態を改善することなしに、TPPの批准などを言う資格はない。消費者、国民の食の安全は到底守れない。輸入食品の増大につながるTPPの早期批准など、到底ゆるされない」と強く主張しました。
(スタッフK)