【赤旗・日曜版】輸入食品9割無検査 安全脅かすTPP 衆院特別委 斉藤、畠山議員が批判  2016年10月23日
投稿日:2016年10月21日

2016年10月23日(日) 日曜版
輸入食品9割無検査 安全脅かすTPP  衆院特別委  斉藤、畠山議員が批判

 安倍政権が今国会の最大焦点として位置付けるのが環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案です。国会内外で「断固反対」の声が渦巻くなか、衆院TPP特別委員会で本格審議が始まりました。18日、日本共産党の斉藤和子、畠山和也両議員が質疑にのぞみました。論戦のポイントは―。

<早期批准は自民の選挙公約にもない>
 協定資料の誤訳、SBS(売買同時入札)米の価格偽装疑惑…。TPPは次から次へと問題が噴出しています。
 そもそも先の参院選で、自民党は公約で「TPP早期批准」を掲げませんでした。自民党候補のほとんどの選挙公報にTPPの記述はなく、比例の選挙公報でも一切ふれていません。選挙ではダンマリだったのに、安倍晋三首相は選挙後にわかに、“早期批准”を言い出したのです。
 斉藤氏は、「国民に正面から信を問えないTPPの早期批准など絶対にありえない」と厳しく指摘しました。
 共産党はTPPからの撤退とともに、貿易には平等・互恵の原則が必要だと一貫して主張してきました。畠山氏は「進むべきはTPPではなく、食料自給率向上の道だ。経済主権・食料主権を奪うTPPには反対だ」と強調しました。
<検査現場は人手不足“輸入拡大が怖い”>
 日本は、カロリーベースで約6割を輸入品に依存する「輸入食品大国」です。TPPで関税が撤廃・削減されれば、輸入増加は必至。急増する輸入食品の安全性をしっかりチェックできるのか。
 現在、輸入食品の91.3%が無検査の状態です。検査を担う食品衛生監視員はわずか408人。2016年度で「2名」(塩崎恭久厚労相)しか増えていません。検査にあたっては冷凍肉の破砕をはじめ手作業が欠かせません。輸入増が見込まれるなか、検査現場からは負担増で「TPPが怖い」という声があがっています。
 検査にも欠陥があります。結果がでる前に輸入食料品を国内流通させること認めているため、「違反」の結果が出たときは、全量が消費されたり、販売されているケースがいくつもあるからです。(表・省略)。なかには生鮮オクラで、基準の26倍の残留農薬が検出された例もあります。
 斉藤氏の一連の指摘に、安倍首相は「ただちに健康被害が発生する可能性は低い」などと答弁するだけ。斉藤氏は「消費者・国民の食の安全は到底守られない。輸入食品の増大につながるTPPの批准は許されない」と厳しく指摘しました。

<“セーフガード”は発動しても手遅れ>
 13年の国会決議は、TPP交渉参加にあたって、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物など重要5項目は「除外又は再協議」の対象にすることを求めています。実際は「除外」どころか、コメ一つみても新たに7.84万トンの輸入枠を設けてしまいました。
 “除外するように相手国に言ったのか”―。畠山氏が何度聞いても安倍首相は「いちいちのやりとりについては発言を控えたい」と明らかにしません。
 安倍首相は、“セーフガード措置も獲得した”と誇っています。セーフガードとは、輸入量が急増した場合、関税を元に戻し輸入を抑える措置です。しかし、それが発動されるころには農業が崩壊している可能性が大です。
 畠山氏は例示したのは牛肉です。現在38.5%の関税は、16年かけて9%まで削減します。その時のセーフガードの発動条件は、輸入量73.8万トン。国内消費量の90%にあたる量です。これではセーフガードが発動されても、多くの畜産農家が淘汰(とうた)された後です。(図・省略)。
 セーフガードは牛肉だけでなく豚肉やオレンジなども対象ですが8~21年で終了。「すべてが期限付き」(畠山氏)です。それさえ、「7年目の再協議」で見直しを迫られ得ることを山本有二農水相も認めました。
 重要品目に除外も例外もない―。畠山氏は「国会決議違反は明らかだ」と批判しました。