「日本一高い」北総線運賃で質問主意書提出 政府はまともに答えず
投稿日:2016年12月22日

 千葉県北部を東西に走る北総鉄道。
 都心と千葉ニュータウンを結ぶ、住民にとってはなくてはならない交通機関となっていますが、その運賃は極めて高く、「日本一高い」と言われています。
 斉藤和子衆院議員は12月9日、この問題で政府の姿勢を質す質問主意書を提出。その回答が20日に開かれた閣議で決定されました。政府は、近隣私鉄の2-3倍にもなる運賃を見て見ぬふりし、運賃や線路使用料を認可した国の責任を認めようとしませんでした。

■国は「高い」と認めず
 北総線は1979年、県や沿線自治体も出資する京成鉄道の子会社(現在50%出資)として開業。その後東西に延伸し、2000年には京成高砂駅(葛飾区)―印旛日本医大駅(印西市)間が開通しました。2010年からは京成電鉄が、北総鉄道などの所有する線路を使って、都心と成田空港を結ぶスカイライナー・アクセス特急を運行しています。
 千葉ニュータウンの住民にとっては唯一の都心への足ですが、運賃は非常に高額です。たとえば京成高砂駅から印旛日本医大駅までは830円ですが、同様の距離(キロ程)で近隣私鉄の運賃を見てみると、
 京成電鉄490円
 小田急電鉄370円
 京王電鉄340円
 西武鉄道310円
 東京地下鉄310円
 横浜市営地下鉄460円
 東京急行電鉄330円
 京浜急行電鉄430円
 と価格差は一目瞭然。JR東日本でも幹線で580円、電車特定区間(山手線)で550円です。
 斉藤氏は主意書で「極めて高いという認識はあるか」と質問しましたが、政府は「各鉄道事業者で運賃は異なっている」と当たり前のことを言うのみで、まともに答えませんでした。

■なぜ北総線が高いのか
 北総線の運賃が高い原因の一つに、北総鉄道(株)が千葉ニュータウン鉄道(株)に支払っている高額な線路使用料があります。千葉ニュータウン鉄道は京成電鉄の100%子会社で、北総線の線路の一部(小室駅―印旛日本医大駅間)を所有しています。この線路上を京成電鉄と北総鉄道が電車を走らせていますが、その両社の割合は電車の走行距離の合計で測ると京成電鉄が46%、北総鉄道が56%です。
 しかし、支払っている線路使用料は京成電鉄が3億5952万円、北総鉄道が25億916万円と著しい差があります。これは、北総鉄道が事実上京成電鉄の一部といえる千葉ニュータウン鉄道に、この区間の運賃を全額納めることになっているからです。
 この点について政府は、斉藤氏の質問に対し「経営判断だ」「適正に認可した」と回答。7倍にも及ぶ不公平を認めようとしませんでした。これでは北総鉄道を利用せざるを得ない住民に高い運賃を負担させ、トンネル会社である千葉ニュータウン鉄道を通じて利益を上げようとする京成電鉄の好き放題になってしまいます。

(図=北総線運賃値下げを実現する会作成)
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■高運賃は国の責任
 千葉ニュータウン鉄道の所有する線路は元々、現在のUR都市機構の前身である住宅・都市整備公団により建設されたものでした。その後、国の特殊法人等整理合理化計画に基づき、国・千葉県と協議しながら京成電鉄の子会社に譲渡したという経緯があります。
 つまり、北総鉄道も千葉ニュータウン鉄道も、千葉ニュータウンの基幹的交通機関として公的助成を受けて整備されたもの。国は住民の利益になるよう指導・監督する義務があります。主意書ではこの点を指摘しましたが、政府は住民の利便性には触れず、鉄道事業の適正な運営に支障はないとするのみでした。

■現状でも運賃値下げの原資はある
 質問主意書では、北総線沿線の人口増による利用者の拡大が進んでいることを取り上げ、現状でも利用者に利益を還元できることも指摘しました。
 千葉ニュータウン地域は、首都圏における大都市問題の解決を図るため、1988年に制定された多極分散型国土形成促進法に基づき、成田市とともに業務核都市に指定されています。北総線はその交通の基軸として位置づけられました。これにより対象となる成田市、印西市、白井市、富里市には業務集積が進み、人口は当初の十九万人弱から事業開始時の予想を上回る三十四万人以上に大幅に増加。北総線は千葉ニュータウンから都心への通勤需要のみならず、都心から千葉ニュータウン各駅への通勤需要も増大し、北総鉄道の経常利益は右肩上がりとなっています。
 質問主意書で利用者数を問うたところ、政府は過去10年で利用者人口が年間471万9000人増加したことを認めました。2001年で5億円以下だった北総鉄道の経常利益は2016年度で41億円にものぼり、利益率は25%にも及びます。これは他の私鉄の追随を許さず、超優良企業のJR東海と伍する数字です。
 北総線は、いますぐにでも値下げできるのです。

■北総線値下げは沿線住民の切なる願い
  東京新聞2016年5月10日付で紹介されたエピソードは、いかに沿線住民にとって北総線の運賃引き下げが切実かを示すものでした。

 ▽引用▽

 「将来、北総鉄道(本社・鎌ケ谷市)の社長になって運賃を下げます」
 今年一月、白井市の白井高校。男子生徒の宣言に、大きな拍手が起こった。今夏に選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられるのを前に、身近な課題を考える授業での一幕だ。
 一年生三十七人が十グループに分かれて発表。六グループが北総線運賃の高さを挙げた。白井高は、千葉ニュータウン(NT)計画に伴い一九八三年に開校。近くを走る鉄道は北総線のみだ。「運賃が高くて通学に電車が使えない」。生徒の切実な声に、授業を開いたインターネット検索大手ヤフーの担当者は「半数以上が同じ課題をあげるなんて、ほかの高校ではない」と驚いた。

 △引用△

 印西市や白井市の住民意識調査(印西市二〇一一年度、白井市二〇一四年度)では、北総線の運賃問題が市民にとって最大の不満点であり関心事だとされました。北総線運賃値下げは、沿線地域住民の40年にわたって続く願いです。
 2018年には、前述の北総鉄道が小室―印旛日本医大間の運賃収入を全額千葉ニュータウン鉄道に差し出す不当な契約の更改期が来ます。これは住民の声を反映する千載一遇のチャンスです。日本共産党と斉藤和子は値下げ実現に向け、引き続き全力を尽くします。
(スタッフK)