191-衆-TPP特別委員会-平成28年10月19日
○塩谷委員長 次に、斉藤和子君。
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
安倍総理に初めて質問をさせていただきます。
安倍総理は所信で、TPPの早期発効を大きなチャンスとしてと述べ、代表質問などでも、答弁で、TPPが拡大していく機運を積極的につくっていくことこそ、我が国の役割でありますとし、さらに、国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、TPP協定の早期発効に弾みを与えることができると答え、早期批准することを繰り返し強調されています。
また、参議院選挙後の九月十九日にニューヨークで開かれた対日投資セミナーでも、安倍総理は、日米それぞれができるだけ早く国内承認を得てTPPを早期発効させる、臨時国会でTPPの国会承認と関連法案の成立を図ります、日本は全力で取り組みますとまでおっしゃられています。
総理は繰り返しこうしたTPPの早期批准をおっしゃられているわけですけれども、七月の参議院選挙の公約の中にTPPの早期批准を掲げていたのでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 自民党は、本年七月の参議院選挙で、農業など守るべきものは守りつつ、TPPの活用などにより、近隣アジアの海外市場を我が国の経済市場に取り込むことを公約に掲げ、改選議席の過半数という目標を大きく上回る信任を国民の皆様からいただくことができた、このように思っております。
TPPの活用は、TPP協定の早期承認をその前提としているわけでありまして、承認されなければ活用ができないのは、これは誰が見てもわかるとおりでございまして、その中において活用ということを掲げさせていただいたところでございます。今国会において、御承認について民意の一定の支持を得たものと認識をしているところでございます。
○斉藤(和)委員 活用という言葉をおっしゃられましたけれども、自由民主党の比例代表選挙の公報には、TPPという記述は一切ございません。その事実はお認めになりますか。
○安倍内閣総理大臣 ちょっと私も今、急な質問でございますから、それを詳しく調べているわけではございませんが、しかし、我が党が既にこのTPPの承認については通常国会で示しているわけでありますから、そこでもう承認をしたいという私の意欲は十分に示しておりますので、我々がそれを考えていないとは誰も思わない、みんな知っていて、もう周知の事実であろうと。我々がTPPを、既に国会に出しているんですから、それをやらないとはもう誰も思っていない。TPPに、我々はやれませんと言って選挙で勝ったわけではなくて、既に国会で、これの承認をお願いします、こう申し上げている中においての
選挙であったということは御理解をいただきたい、このように思います。
○斉藤(和)委員 総理、やはり、自分の党の、しかも比例代表の選挙公報を見ていらっしゃらないというのは、私は問題だと思います。私は、参議院選挙の自民党の候補者の選挙公報を見させていただきました。ほとんどの候補者の方はTPPに触れていらっしゃいません。早期発効など触れていないというのが実態です。こういうときに、選挙後になれば、早期発効だということをアメリカにまで行って言うような、そういうことにもかかわらず、これだけ重要な問題を選挙のときにはほとんど触れない。にもかかわらず、選挙が終われば、最大の課題だとTPPの早期批准に突き進むということは、私は、非常に国民に対して失礼だというふうに思います。やはり、国民に正面から信を問えないTPPの早期批准など絶対にあり得ないということを改めて強調させていただいて、次の本題である質問に入らせていただきます。
TPPと食の安全についてお聞きします。
きょうは安倍総理が出席されています。主に総理に質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
まず、昨年十一月の総合的なTPP関連政策大綱には、「TPP協定により、」「我が国への海外からの輸入食品の増加が見込まれることから、」「食の安全・安心を守るため輸入食品の適切な監視指導を徹底するための体制強化に努める。」とあります。この点、安倍総理の見解を明らかにしていただきたいと思います。
○山本(有)国務大臣 御指摘のように、一般論として食品の輸入がふえることは十分あり得ることでございます。
訪日外国人の増加等に伴う海外からの家畜伝染病や植物の病害虫の侵入を防がなければなりません。そのために、これまでも、家畜防疫官あるいは植物防疫官の増員とか、あるいは検疫探知犬の増頭など、こうした輸入検疫体制の強化に農林省としましても努めてきたところでございますが、先生の御指摘のように、なお一層この体制を整備してまいりたいというように思っております。
○安倍内閣総理大臣 販売または営業上使用することを目的として輸入される食品等は、輸入の都度、届け出が義務づけられています。近年の輸入届け出件数は年々増加しています。
我が国の安全基準に適合しない食品が輸入されないよう、全国の港や空港の検疫所で、食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え商品などを検査するためにサンプルをとって行うモニタリング検査などの結果、食品衛生法の違反の可能性が高いと判断された食品を対象に、輸入者の経費負担で全量を検査する命令検査など、違反のリスクに応じた検
査を実施しています。このため、全国の検疫所に四百八名の食品衛生監視員を配置しているわけであります。食品の輸入動向等を踏まえ、輸入食品の検査が着実に実施できるような体制を確保してまいります。
○斉藤(和)委員 輸入食品の増加に見合って着実に検査体制を強めるというお話がありました。前回、四月のこの委員会で、私、この問題を取り上げさせていただいて、石原大臣から、GDPの〇・六一%、すなわち、二〇一四年度のGDPで換算すると三・二兆円程度の輸入が増加する、この中に食品等々が含まれているというふうに考えていただきたいと答弁がありました。
TPPで食品の輸入が増加するということは明らかだと思いますが、農林水産大臣と厚労大臣は、それぞれ、TPPによる輸入食品の増加の見通しをどのように想定されているんでしょうか。
○山本(有)国務大臣 これにつきましては、先ほど先生御指摘のように、TPP政府対策本部において行った経済効果分析において、TPP協定による品目別等の影響分析は行っておりません。実質GDPの増加等により輸入全体がふえると分析している中で、石原大臣が、御指摘されましたように、マクロ的にGDPの〇・六一%、これが二〇一四年のGDP換算で三・二兆円ふえるというように解説しておりまして、一般論として、先ほど申し上げましたように、食品の輸入がしたがって増加するというような理解をしているところでございます。
○塩崎国務大臣 基本的には、先ほど総理から御答弁申し上げたとおり、ふえた場合の体制については申し上げたとおりでありますが、今農水大臣の方から輸入の量についてのお話はあったとおりでありまして、我々、食品安全に責任を負っている立場として、食品への、まず輸入業者には輸入の都度に届け出が義務づけられているということを先ほど総理からも答弁申し上げ、そして検疫所でこれはしっかりと審査、検査を行って、先ほど申し上げたようなモニタリングの検査あるいは命令検査ということでやっておるわけです。厚生労働省としては、今後の輸入食品の増加の可能性を踏まえて、検疫所の職員の資質の向上、必要な職員そしてまた検査機器の確保による検査の実効性の向上といったところなど、適切な監視指導を徹底するための体制の整備を図っていくということが大事だと思っておりますので、引き続き、輸入食品の安全確保に万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 一般論として増加するだとか、増加の可能性があるという、その見通し自体がいかがなものかなというふうに思うわけです。やはり、もう政府の関連政策大綱でも増加が見込まれるというふうに言っているわけで、つまりこれは、どういう見通しを持って、国の、要は、輸入された食品の安全を確保していくかという立場で、しっかりと品目も含めて明らかにしていく、どれだけ輸入がふえる見通しを持っているのかということを明らかにしていくということはこれからの体制をつくっていく上でも必要だというふうに私は思うわけです。
問題は、その輸入食品が、要は、誰もふえるということは認めているわけで、減るとは言っていらっしゃらないわけです。そのもとで、食の安全は本当に大丈夫なのかということが問われてくるわけです。日本の食料自給率は現在三九%、カロリーベースで実に約六割を輸入食品に依存しているという、輸入食品の大国になっているわけです。全世界か
ら三千百九十万トン、国民一人当たり年間二百五十キログラムの食品を輸入しています。一人当たりの年間の米の消費量は約六十キログラムですから、その四倍に当たる食品を世界から輸入しているということになります。
こちらのパネルをごらんいただきたいんですけれども、しかも、現在でも、このTPPに加盟している十一カ国から輸入されている量というのは全体の六一・八八%。六割を超えている、占めているわけです。これが、TPPによってほとんど関税がなくなったり全くなくなるような状況の中で、さらに輸入がふえる。こういう状況の中で、安倍総理は、この輸入の増加にどう対応しようというふうにお考えでしょうか。
○山本(有)国務大臣 輸入の増加に対しましては、まず水際作戦が大事でございます。水際で伝染病や植物の病害虫の侵入を防ぐということを徹底的にやっていかなきゃなりません。平成二十八年の家畜防疫官あるいは植物防疫官の定員をふやすという意味からお願いしておったわけでございますが、確実に、植物防疫官が九百一名、家畜防疫官が四百十六名、これに達することができました。というようなことからしましても、水際で徹底的に輸入食品に対する防備を完全にしていくということをまず始めていきたいというように思っております。
○塩崎国務大臣 どういう備えでいくのかという御質問でございますので、今は農産物の輸入の立場からお話がございましたけれども、私の方は安全を守るということで、先ほど申し上げたとおり、輸入業者にまず輸入の都度に届け出を義務づけ、そして我が国の食品の安全に関する基準に適合しない食品が輸入されないように、今水際の話がありましたけれども、全国の港、空港、この検疫所で、一つは、食品添加物それから残留農薬、遺伝子組み換え食品等を検査するためにサンプルをとって行うモニタリング検査というのがまず第一にあって、そして、モニタリング検査などの結果、食品衛生法の違反の可能性が高いと判断される食品を対象に輸入者の経費負担で全量をとどめ置いて検査をする命令検査などの、違反リスクに応じた検査というものをやって備えるということが基本だと思っております。そのために、今後の体制を整備するということについては先ほども申し上げたとおりでありまして、いずれにしても、輸入食品の安全確保、これには万全を期していかなければいけないというふうに思っております。
○斉藤(和)委員 ぜひ総理にお答えいただきたかったんですけれども、ちょっと次に進みます。要は、水際作戦だとか、水際対策でしっかりチェックするというふうなお話がありました。現在、輸入食品の監視指導がどうなっているのか。こちらの表をごらんいただきたいと思います。最新のデータに基づいて、二〇一五年度の輸入食品の検査率です。一昨年の二〇一四年度よりもさらに下がって八・七%。二〇〇二年以来最低の検査率になっています。つまり、九一・三%の輸入食品が無検査の状態で輸入されている。この検査率の低下というのは、輸入食品の届け出件数が増加している一方で、実際に検査をする食品衛生監視員の増員がままならない状態にある。そこで、お聞きします。厚生労働大臣にお聞きしますが、二〇一六年度、この食品衛生監視員は何人増員されたんでしょうか。
○塩崎国務大臣 近年の輸入の食品の届け出件数の増加を踏まえまして、食品衛生監視員の増員を図ってきております。二〇一五年度は七名増、そして今お尋ねの二〇一六年度、これにつきましては二名増を行って、現在の食品衛生監視員は、先ほど総理からも御答弁申し上げましたけれども、四百八名でございます。引き続き、適切な監視指導を徹底するための体制整備を図って、我が国に輸入される食品の安全性の確保に努めてまいらなければならないというふうに考えております。
○斉藤(和)委員 体制を強化するといいながら、わずか二名なわけです。
安倍総理、このTPPで輸入食品がふえると言われている中で、現場からはもう悲鳴にも近いような声が出ているわけです。食品衛生監視員をふやしたといっても二名。この今の輸入食品の検査体制、監視指導のままでいいとお考えでしょうか。総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 先ほど厚生労働大臣から二十八年度は二名という御説明をいたしましたが、二十七年度は七名増員をしております。なお、来年度は厚生労働省では十九名の増員要求が出ている。まだこれは要求が出ているということでございまして、政府としてよく考えていきたいと思います。
○斉藤(和)委員 十九名の要求が出ている、これは非常に私は重要ですし、これをしっかりふやしていくということが大事だと思うんです。
同時に、輸入の監視体制を強化していくということには皆さん変わりはないと思うんですけれども、現在でも輸入の届け出は二百二十五万件、それを、先ほど来あるように、四百八人の食品衛生監視員で処理しています。しかも、ほぼ毎年、輸入届け出件数はずっと増加傾向にあるわけです。必然的に検査率は下がっていくというのは当然のことです。国がやっているモニタリング検査、これは、先ほどのパネルでいいますと、八・八ではなくて、二・五%です。輸入食品の監視統計が一九六五年に公表されて以降、国が行っている行政検査、これは過去最低の検査率となっていると思いますが、厚生労働大臣、間違いありませんか。
○塩崎国務大臣 数字のお尋ねでございますけれども、検査率につきましては、二〇一五年度の輸入食品の検査率は八・七ということでございますので、そのとおりでございます。また、モニタリング検査の二・五、これもそのとおりでございます。しかし、そうはいいながら、数字だけで判断をするというのはいかがなものかということを私たちは考えているところでありまして、違反リスクに応じた検査を実施するということが極めて大事だというふうに思っております。検査において、モニタリングがあり、そしてまた命令検査、これは違反の可能性が高い食品と違反の可能性が低い食品について使い分けていくわけでございますので、科学的根拠に基づいて違反リスクに応じた検査を実施するということが大事であります。こうした検査において、仮に違反食品が減少して、リスクの高い食品の全届け出を検査する命令検査が減少していくということになれば、結果として輸入食品全体に対する検査の実施率が減少するということもあり得るわけでありますので、したがって、検査の実施率の値だけを捉えて安全確保の取り組みが十分かどうかを評価するということは、必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えております。引き続いて、違反リスクに応じた適切な検査の実施に努めてまいりたいと思いますし、先ほど申し上げたように、検査機器の確保なども、スピードアップをする、そしてまた、より多くサンプリングをするということにもつながるわけでありますので、また職員の資質の向上も極めて大事でありますので、人員がふえていけばもちろん、よりやりやすくはなりますけれども、今申し上げたように、機器の改善なども含めて総合的に食品安全の確保に努めてまいりたいというふうに思います。
○斉藤(和)委員 いろいろ言われましたけれども、実際に検査率は下がっているわけです。
安倍首相、輸入食品の安全性の検査を実際に行っている検疫所の現場というのは、ごらんになったことがございますでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 ございません。
○斉藤(和)委員 輸入食品の検査というのは、先ほど検査機器の能力を上げるとかありましたけれども、検査機器に入れる前の前処理過程というのが全て人の手で行われているわけです。つまり、人をふやさなければ検査率を上げることはできません。全国に二カ所、神戸と横浜にありますが、輸入食品・検疫検査センター、私も行ってまいりました。食品衛生監視員の皆さんが、例えば、衣つきの魚のフライ、冷凍食品、これを一つ一つ手作業
で衣を剥がす作業をやっていたり、冷凍のブロック肉をトンカチとのみを使って細かく砕いているだとか、そういう幾つもの人の手による過程を経てようやく検査機器にかけることができるわけです。
しかも、食品衛生監視員の六五%が若い女性によって担われています。業務は、検査によっては休日出勤だとか深夜になることもあり、大変な職場になっています。だからこそ、現場の食品衛生監視員からは、率直に言って、TPPによって輸入食品がふえたら怖い、こういう声が出されているわけですけれども、総理は、この現場のTPPが怖いという声をどう受けとめていらっしゃいますか。
○安倍内閣総理大臣 TPPが怖いという発言について、これは今委員から御紹介をいただいておりますから、私も何ともコメントのしようがないわけでございますが、いずれにせよ、しっかりと現場においてさまざまな状況に対応できるように、我々もしっかりと考えていきたい、こう思っているところでございます。
○斉藤(和)委員 しっかり輸入食品の安全確保をするということですけれども、やはり、そのためにも体制を強化していく、食品衛生監視員を抜本的にふやしていく必要がある。来年度の要求で十九人というお話がありましたけれども、現場からは、以前から、三千人体制ぐらいないと輸入食品の安全性を確保できない、そういう声を聞いております。この声に、やはりまず真剣に受けとめて、応えるべきではないでしょうか。総理、いかがですか。
○塩崎国務大臣 ちなみに、先ほど二〇一六年度の数字についてお尋ねがございましたが、これは、新規増員数は二十七年度が十八人、そして二十八年度は十二人ということでありましたけれども、 定員合理化の減というのが必ずついてまいって、それで七名と二名ということになったわけでありまして、私どもとしては、おっしゃるように、来年度に向けては十九人の増員について、総理からお答えを申し上げた食品衛生監視員でありますけれども、検疫所全体では、検疫官二十一名と合わせて四十名の増員を要求しているわけであります。
ですから、食品はもとより、検疫所の体制を整備するということは私どもにとっても大変大事な問題だというふうに捉えておりますので、できる限りの定員確保は図っていくつもりでございますが、それとあわせて、さっきも申し上げたとおり、人材のやはり資質を上げていくことによる効率性、そしてまた検査機器の開発などもやっているわけでございますので、そういうことをあわせて、総合的に食品安全の確保を図るための体制整備をしっかりとやっていかなきゃいけない、大事な問題だというふうに思っております。
○斉藤(和)委員 人手が足らないからといって、パートやアルバイトで食品衛生監視業務というのは補うことはできません。検査施設の国際標準規格からも、正規職員でなければならないというふうになっているわけです。食品衛生監視員を抜本的にふやす、こういう政府の姿勢が求められていると思いますが、総理、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 おっしゃるように、人員が必要であるということはもう間違いないことで、先ほども答弁申し上げたとおりでありまして、方向としては同じ方向を向いていると思いますが、やはり全体の政府としての人員の定員の問題等々を含めて、その中で私たちがどれだけ食の安全のための人員を確保できるかということで、最大限の努力をして確保を図っていくというのが私たちの基本的な考え方でございますので、先生がおっしゃるように、確かに手作業でやらなきゃいけないことがたくさんあることはよくわかっているところ でございますので、その辺はよく考えた上で対処してまいりたいというふうに思います。
○斉藤(和)委員 人員にかかわる問題ですので、ぜひ総理にお答えいただきたいんですけれども、食品衛生監視員を抜本的にふやす、そういう必要性があると思いますが、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 実際にどれぐらい輸入食品がふえていくか、これは来年からということではなくて、発効してから、まだこれは先の話でございますが、それに備えていくということは当然必要でございます。しかし、現在、それで大きな問題が出ているということではないわけでございますが、だんだんふえていく食品の輸入に対応しながら、人員は、先ほど私からもまた厚労大臣からも御説明させていただいているように、増員はしているところでございます。また、さらに、検査機器等の開発等ということについても大臣からも御答弁をさせていただいたわけでございますが、不断の強化の努力は重ねながら、しっかりと万全を期していきたい、こう考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 大きな問題がないということを言われましたけれども、私は、今でも問題があるというふうに思っているわけです。
国が行っているモニタリング検査には欠陥があります。こちらのパネルをごらんください。
これは、二〇一四年、国が行っているモニタリング検査で食品衛生法違反とされた輸入食品のうち、全量消費、つまり食べられてしまったものの一覧です。
まず初めに安倍総理に認識をお聞きしたいと思いますけれども、残留農薬違反の生鮮トマト八・ 四トン余り、一人当たり百五十グラムと仮定しますと、実に約五万六千人分の口に入っている。それ以外にも、残留農薬違反の生鮮キャベツ、八百人分。残留農薬違反の生鮮マンゴーが三千四百五十人と千八百二十五人で五千人分を超えます。残留農薬違反の生鮮青トウガラシが九千人分と百人分。食中毒菌の汚染がある冷蔵むき身アカガイが三百人分。これが全量消費ないし全量販売されてしまっているわけです。これ以外にも、一部消費 済みのものがあるわけですけれども。
安倍総理、これらの残留農薬基準違反のものが、流通されるだけではなくて食べられているという実態がある、こういうことは御存じでしょうか。
○塩崎国務大臣 きょう資料をお配りいただいておりまして、これは私どもの方からお出しをした資料でございますので、このこと自体はそのとおりでございますが、モニタリング検査のことについての御懸念をいただいたわけでございます。
過去の検査結果などから違反の可能性が低い食品について、検査終了を待たずに流通をさせながら、国際的にも認められた統計学的な手法に基づいて、違反食品が含まれていた場合、効率的にその違反を発見することができる、いわゆるサンプリング件数を設定して実施をしているというのがサンプリング検査でございます。
違反の可能性の低い輸入食品等について、検査終了を待たずに国内流通を認める手法は、米国あるいはEUなどの諸外国においても広く行われているものであります。これは、科学的な根拠に基づいて、必要な限度においてのみ食品安全に関する措置を適用するということ、そして、同種の国内産の食品との不当な差別的な取り扱いをしないという、これは、従来からの国際的な共通ルールでありますWTOの食品の安全に関する協定、いわゆるSPS協定に基づく対応だというふうに私たちは理解をしております。
したがって、モニタリング検査の対象となる違反可能性の低い食品についてまで全量をとどめ置いて検査を実施するということは、むしろ、SPS協定に照らしても必ずしも適当ではないというふうに考えております。
また、TPP協定は、SPS協定に基づく我が国の権利義務を確認しているのみでございまして、TPP協定の締結によっても対応方針に変更が加えられるわけではない。
そして、今、全量消費をされた、あるいは一部消費をされているじゃないか、こういうことを御指摘いただきました。違反食品を消費したことによる影響はどうなのかということを御指摘になっておられたというふうに思っておりますが、農薬などの食品中の残留基準は、人がある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量、それから、基準値を著しく超過したものでない限り、当該食品を摂取しても直ちに健康被害が発生する可能性は低いと考えられるということであります。
なお、平成二十七年度以降に消費をされた違反食品によって摂取をされたと推定される残留農薬の量は、健康への影響がないと推定される一日当たりの摂取量の数%以下、試算値の最大値は一・六%でございまして……
○塩谷委員長 答弁は簡潔にお願いします。
○塩崎国務大臣 健康影響は必ずしもないというふうに考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 健康の影響はないと言いましたけれども、国が定めている残留農薬基準を違反しているんです。本来出回ってはいけないという要は決まりのもとでやられている、それが出回って消費者に食べられているというこの実態を真摯に受けとめないということに、私は非常に怒りを 覚えるわけです。
この二〇一四年度だけではありません。昨年度、二〇一五年度も出ています。残留農薬違反の生鮮のパースニップというニンジンですとか、例えば生鮮オクラ、これは一人百グラムとして二万三千百人分ですけれども、これは二十六倍の残留農薬の基準以上が出ているわけですよね。例えばタマネギなんかも、何と二十四万百二十人分も食べられてしまっている。こういうものが出ているわけです。
しかも、こういう、あってはならない、要は基準違反のものが流通するだけではなくて食べられてしまっている、こういうことを、総理、このまま放置していいんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 ただいま厚労大臣から答弁させていただいたわけでありますが、違反の可能性の低い輸入食品等について最終検査終了を待たずに国内流通を認める手法は、米国、EUなどの諸外国においても広くとられておりますが、これは、先ほど大臣からも答弁させていただきましたが、科学的な根拠に基づいて、必要な限度においてのみ食品安全に関する措置を適用すること、そして、同種の国内産の食品との不当な差別的取り扱いをしないことを求めている、従来からの国際的な共通ルールであるWTOの食品の安全に関する協定に基づく対応であります。
したがって、モニタリング検査の対象となる違反の可能性の低い食品についてまで全量をとどめ置いて検査を実施することは、SPS協定に照らしても、これは適当でないわけであります。
しかし、そこで、そのSPS協定に従ってやっている検査において、出て、国民の、消費者の皆さんが食べてしまっているではないかという御指摘でございますが、それに対しましても先ほど大臣から答弁をさせていただきましたが、確かにそれは流通をしてしまっているわけでございます。
しかし、これは、先ほど申し上げましたように、米国においてもEUにおいても同じことが起こっているわけでございますが、では、なぜそれを認めているかといえば、御指摘の違反食品を消費したことによる健康影響についてでありますが、これは科学的な分析をしておりましての結果でございまして、農薬等の食品中の残留基準は、人がある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量でありまして、いわばその摂取量を超えているということでありまして、基準値を著しく超過 したものでない限り、当該食品を摂取しても直ちに健康被害が発生する可能性は低いと考えられるわけであります。
なお、平成二十七年度以降に消費された違反食品により摂取されたと推定される残留農薬の量は、健康への影響がないと推定される一日当たりの摂取量の数%以下であります。健康影響はないと考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 いろいろ言われましたけれども、私、大事なのは、食料自給率三九%、各国と比べても六割を輸入に依存しているという現実があるわけですね。そのもとで、健康に影響がないから、そういう考え方でいいのかということを問うているわけです。基準を守らなくていいのかということです。
先ほども、TPPの協定により、我が国への海外からの輸入食品の増加が見込まれることから、食の安全、安心を守るため、輸入食品の監視指導を徹底するための体制強化に努めるという政府の立場を確認いたしました。私は、そうであるならば、以前やっていたように、検査結果が出るまでは輸入を認めないという本来の検疫検査に戻すべきではないか、そう思うわけですけれども、総理、いかがでしょうか。
○塩崎国務大臣 先生御指摘のように、違反している食品を口にしないということは大事なことであります。
したがって、モニタリング検査によって違反食品が発見された場合には、既に流通してしまっている違反食品をいかに速やかに回収するかということが大事であります。そしてもう一つは、検疫所において全量をとどめ置いて検査をする命令検査に切りかえるということも大事でありますので、そういった措置で食品の安全性の確保を図ってまいりたいと思っておりますし、消費される前に速やかに回収ができるように事前に販売計画などを提出させておく、それから、従来よりも検査結果が判明する期間を短縮できるような新たなDNAの試験法とか、そういうものを導入することによって、これは十月七日付で全国の検疫所に既に新しい試験法についても指示をしております。
したがって、御指摘のとおり、違反した食品については速やかに回収して、できる限りこれは食にしないということが大事でありまして、しかし、今申し上げた体制自体は国際的に認められている、大体やられているやり方であるということでございますので、なお改善方を図っていきたいというふうに思います。
○斉藤(和)委員 輸入している量が違うというところに立ってしっかり検査率を上げていかないと、現に二・五%なわけです。こういう検査結果が、先ほども言いましたけれども、違反率の低いものを検査した結果、二十六倍の残留農薬が出ているものまで検出されて、しかも食べられているというのが実態なわけです。
こういう現実にある実態を改善することなしに、TPPの批准などを言う資格は私はないと思います。消費者、国民の食の安全は到底守れない。輸入食品の増大につながるTPPの早期批准など到底許されないということを強く指摘して、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。